お役立ちコラム お墓の色々

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日本の銘石をめぐる~香川県高松市・庵治石

墓地・墓石コラム

日本の銘石をめぐる~香川県高松市・庵治石

家族の心の拠りどころであるお墓は、日本の季節、土地や人に馴染んだ日本の石を選んでいただくのが一番です。ここでは、日本各地で産出される銘石をご紹介し、その魅力と背景にせまります。今回は香川県高松市の「庵治石(あじいし)」です。

庵治石の産地

庵治石の産地は香川県高松市です。
高松市は、多島美を誇る波静かな瀬戸内海に面している都市で、香川県の県都として、また、四国の中枢管理都市として発展を続けてきました。
年間を通して寒暖の差が小さく、降水量の少ない土地です。
「高松」という地名は天正16年(1588年)に豊臣秀吉の家臣・生駒親正が玉藻浦に居城を築き高松城と名付けたことに由来します。生駒4代54年、松平11代220年を通じて高松は城下町として栄えました。
庵治石の大丁場は、もともとこの讃岐藩松平家(旧高松藩)の所有する御用丁場でした。
ここから切り出された「御用石」は、高松城の工事のほか、藩主が建立した墓石や灯籠など各地に残る石造物にも数多く使われました。

庵治石の特徴

庵治石の最大の特徴は「斑(ふ)が浮く」という現象です。
具体的には、表面が二重のかすり模様のように見えることを指し、これは一部の庵治石だけに見られる希少な現象とされています。この特質性と希少性から、庵治石は世界で最も高価な石という評価を受けているのです。

磨くほどに濃淡が浮き出る石肌。平坦なはずの石の表面に奥行きを感じさせる二重のかすり模様が、「高い山々にかすみたなびく雲」「屋島から舞い落ちる桜の花びら」などにたとえられ、庵治石は縁起物としても珍重されてきました。

庵治石は、鉱物の結晶が極めて緻密で、ガラスや鋼鉄なども傷つけられる水晶(石英)に匹敵する硬さを持ちます。そのため、百年の単位で記憶を伝える墓石や石碑の素材として用いられてきました。

「職人泣かせの石」と言われるほどの加工の難しさはありますが、細かな彫刻を施すことができ、吸水性が低く風化・変質に強いため、庵治石でつくられたものの中には、五百年前の文字が残る例もあるほどです。


<庵治石の石材物性データ>
■見掛け比重 2.65 t/㎥ ■吸水率 0.15% ■圧縮強度 155.00 N/㎟

庵治石の採石

香川県高松市の北東部、源平合戦の舞台で有名な屋島の対岸。山頂に5つの大きな峰がある霊峰・五剣山(ごけんざん)、四国八十八箇所霊場第85番札所・八栗寺があり、八栗(やくり)さんとも呼ばれ親しまれているその山麓の庵治町・牟礼町で庵治石は採掘されています。

もともと瀬戸内海や中国地方は花崗岩の産出地として有名ですが、その中でも特にきめ細かい石が庵治石です。その基盤となる岩盤はおよそ1億年前から6500万年前の白亜紀後期に形成されたものと言われていますが、庵治石はその後の地殻変動によっておよそ2000万年前に現在のこの地に現れました。

庵治産地には現在、大丁場・中丁場・庵治・野山の4地区に採掘場があり、全部で33軒の採掘業者が存在します。およそ450年続くとされる一番古い採掘場が大丁場地区で、細目(こまめ)の7~8割がここで採られています。石の埋蔵量もさることながら、特級品の産出量や石質の安定性という点でも大丁場は群を抜いています。

丁場は、切り立った岸壁がそびえ立ち、瀬戸内海を一望できる場所にあります。丁場では、発破による採石作業や、石に穴を開けて割る「大割り」「小割り」といった作業が行われ、職人は、断層や傷、石目を見極めながら石を割り続けています。

庵治石の歴史

平安時代末期から南北朝時代、そして室町時代にかけて、庵治地区近郊は京都にある石清水八幡宮の荘園であったとされ、暦応2年(1339年)の八幡宮再建の際には、ここから石材が運ばれました。

「庵治石」と呼ばれるようになったのは、秀吉の時代に大阪城築城のため石垣の調達が讃岐に下された頃といわれています。

江戸時代初期には高松城築城や大阪城大改修に、江戸中期から明治期にかけては塩田の石垣や石釜などに大量に使われ、その後の経済発展と好景気を背景に、庵治石の需要はさらに増加。昭和30年以降の機械化により、採石や加工が容易になって供給も増えていき、今や庵治石は、世界でも稀な美しい石質と加工技術によって「天下の銘石」の名を不動のものにしたのです。

庵治石が選ばれる理由

庵治石は現代でも、首相官邸石庭や六本木ヒルズなど、時代を代表するような著名な場所、権威のある建物に使用され、その存在感を放ち続けています。

そして、庵治石でできたお墓は、いつの時代も独特の風格と存在感ある佇まいを見せ続けてくれます。

庵治石が選ばれる理由。それは庵治石が持つ「美しさ」「硬さ」「希少性の高さ」はもちろんですが、大切な記憶や記録を未来へ紡ぐことができる素材力と長い伝統によって受け継がれてきた庵治産地の繊細な職人技が融合したブランド力にあると言えます。

数百年の時を経ても変わらない石質と、熟練の名工が引き出す深みある光沢は、時を超えて家族の想いを刻んでいく墓石にふさわしいものです。

ここまで庵治石の魅力について語ってきましたが、その本当の価値を知りたい方は、ぜひ産地やショールームに足を運んでいただき、庵治石をさわってみてその感覚の違いを体感してみてください。


<代表的な建築物>
屋島東照宮(香川県高松市)
弘憲寺五重塔(香川県高松市)
和霊神社の大鳥居(愛媛県宇和島市)
平和記念公園慰霊碑(広島県広島市)
首相官邸石庭
六本木ヒルズ・レストラン街


庵治石の採掘やお墓づくりの工程を見ることができるツアーの詳細や、360度VRで庵治石産地をバーチャル体験できる動画は、こちらからご覧いただけます。

国産墓石の製造工程見学ツアー/庵治石産地体験ツアーon 360度 VR