お役立ちコラム お墓の色々
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- 供養をきわめる -
日本の銘石をめぐる〜岡山県岡山市・万成石
家族の心の拠りどころであるお墓は、日本の季節、土地や人に馴染んだ日本の石を選んでいただくのが一番です。ここでは、日本各地で産出される銘石をご紹介し、その魅力と背景にせまります。今回は岡山県岡山市の「万成石(まんなりいし)」です。
<<岡山県岡山市の地図画像>>
万成石の産地
万成石の産地は岡山県岡山市です。岡山市はマスカットや白桃など高級フルーツの産地として全国的に知られています。中心部には岡山城や日本三名園の一つである岡山後楽園があり、多くの観光客が多く訪れる、豊かな自然と文化が調和した都市です。
北区吉備津にある「吉備津神社」は、日本昔話「桃太郎」発祥の地としても有名な場所で、ここに祀られる吉備津彦命(きびつひこのみこと)が温羅(うら/おんら)を退治したという伝説に由来しています。
また、西大寺観音院を舞台とする裸祭り「西大寺会陽(えよう)」は、500年の歴史があり日本三大奇祭の一つとされ、毎年全国から参加者が集います。
万成石の特徴
万成石は、角閃石黒雲母花崗岩(かくせんせきこくうんもかこうがん)です。火成岩の中の深成岩類に属し、中生代白亜紀末に冷却固結してできました。
通称「桜御影」と呼ばれるその美しい淡紅色の色合いは、柔らかい雰囲気を持つことで女性に人気です。また優しい見た目の一方で、国産材の中でもとても硬い石です。吸水率が低いことも特徴で、墓石として最良の材料といえます。
西大寺観音五福招来社では桜の花を表現した土台や外構に使われ、「万年成就の功徳がある石」として縁起の良い万成石。「岡山県の石」にも認定された岡山が誇るブランド銘石のひとつとなっています。
用途は墓石だけに留まらず、石彫、石碑や灯籠、建築材、公園の造形など幅広く使われて、和風・洋風どちらでも好まれる石材です。
<万成石の石材物性データ>
■見掛け比重 2.62 t/㎥ ■吸水率 0.17% ■圧縮強度 133.72 N/㎟
万成石の採石
万成石が採掘されているのは、岡山駅より西へ約5kmの地にある矢坂山です。玉石の積み重なった山で、標高120mある山の、80m位の所を現在採掘しています。
丁場は岡山市の市街地に近く、JR岡山駅や岡山空港からのアクセスも非常に便利です。街中にある丁場は世界的にも珍しく、交通アクセスの良さもあって、年間300人程が丁場見学に訪れます。その内訳は、石材業者のみならず、芸術家やお墓の建立をお考えの方なども含まれ、多くのにぎわいを見せる場所です。
桜色の巨石で形成されている万成石の丁場。一歩足を踏み入れたその先には、非日常的な空間が広がっています。そこで感じる、優美な雰囲気と見る者を圧倒する雄大さ。神聖さすら感じさせる万成石の採掘現場には「大いなるもの」に魅せられた石工たちの原点があります。
お墓の建立をお考えの方は、ぜひ一度万成石の丁場を見学してみてはいかがでしょうか。随時受付をしておりますので、その迫力を肌で感じてみてください。
◆万成石の採掘やお墓づくりの工程を見ることができるツアーもあります。
「国産墓石の製造工程見学ツアー実施中!」
万成石の歴史
万成石の歴史は、江戸時代の天保年間(1830〜1843年)から始まったといわれています。
この頃、万成地区に石工が住みつき、自家用の石材を採掘していました。しかしながら、郡方普請の規制もあり、切石の販売はできませんでした。
採石が自由にできるようになったのは明治維新後です。郡林であった万成の山林(石山)が民間のものになったことがきっかけです。ただ、はじめの頃は地元の墓碑用石材としての需要に応じる程度でした。その後、明治21年(1888年)頃から産出量が増大していきます。
山陽鉄道が敷設される頃には、万成山から多量の石材が採掘されるようになります。「万成石」と称されるようになったのは、明治25年(1892年)頃です。また、岡山に大日本帝国陸軍・第十七師団が設置されると、膨大なる石材が万成・矢坂から供給されるようになります。
明治時代には岡山県内のみであった供給先は、大正時代に入ると県外にも増えていきます。
大正7年(1918年)には明治神宮の造営に石材を供給することになります。その後13年間、神宮宝物殿、絵画館、絵画館前の泉水、葬場殿址等、明治神宮の工事はすべて万成石で行われ、その声価を全国的に高めることとなりました。
県外需要の増加に比例して、万成石の優秀性が広まっていき、昭和には県内需要よりも県外需要が激増します。
昭和の終わり頃から平成の初め頃には、採石業者9社11丁場でしたが、現在は2社2丁場のみです。しかし、採掘量は以前と変わらず、年間2,000t以上も容易に採掘・出荷されており安定した供給量が見込まれています。
優美な石目の万成石は、全国各地の有名建築物や記念碑、銅像の台座、モニュメントなどに使用されている他、石原裕次郎といった著名人のお墓にも数多く利用されています。その美しさから、万成石は、イサム・ノグチによって設計されたユネスコ本部の日本庭園にも使われているほどです。
その特徴的な色合い、質の良さから地元はもちろん、関東、北陸、九州地区を中心に今でも根強い人気に支えられています。
<代表的な建築物>
明治神宮外苑の絵画館
伊勢丹ビル(東京・新宿)
三越本店(東京・日本橋)
東京放送会館
銀座和光
岡山県立美術館
瀬戸大橋記念館
◆万成石の採石場の様子などがわかる動画もぜひご覧ください。
日本のお墓「いい石この石」