お役立ちコラム お墓の色々
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- 供養をきわめる -
日本の銘石をめぐる~福島県郡山市・浮金石
家族の心の拠りどころであるお墓は、日本の季節、土地や人に馴染んだ日本の石を選んでいただくのが一番です。ここでは、日本各地で産出される銘石をご紹介し、その魅力と背景にせまります。今回は福島県郡山市の「浮金石(うきがねいし)」です。
浮金石の産地
桜の名所・上石(あげいし)の不動桜で有名な福島県郡山市中田町。
滝桜の子孫と考えられている樹齢約350年のエドヒガンは郡山市の天然記念物に指定されています。
浮金石の産地はこの郡山市中田町と田村市船引町にまたがる黒石山(くろいしやま)です。
気軽に登山ができる山として登山客が多く訪れる鞍掛山(くらかけやま)とは峰続きになっていて、どちらも郡山市中田町のシンボル的な名峰です。
黒石山という名のとおり、この山では国内随一といわれる良質の黒御影石が採石され、浮金石と呼ばれています。
黒石山の標高は896m。冬場は水が凍るため採石することができず、春から秋にかけての約7カ月間に採石が行われます。
浮金石の特徴
浮金石は、日本で産出される希少な高級黒御影石です。
国内で産出される黒御影は非常に少なく、さらに墓石材として用いられる高品質の石材となると、より希少性は増します。
浮金石の特徴は、黒い石肌の中に金箔や白の斑が浮くように散りばめられた優美さです。
さらに見た目の美しさだけでなく、その堅牢さにおいても最高級の墓石材と評価されます。
現在でも、首都圏をはじめとする関東地方では、最高級黒御影の代名詞的存在として浮金石は高い評価を得ており、多くの方に選ばれています。
<浮金石の石材物性データ>
■見掛け比重:2.997 t/㎥ ■吸水率:0.011% ■圧縮強度:120.82 N/㎟
浮金石の採石
日本の代表的な黒御影石・浮金石。地質学上の分類は花崗岩ではなく斑レイ岩(はんれいがん)となります。
山並みしか目に入らない、聖地の雰囲気に包まれた黒石山にある浮金石の丁場。
美しい空と緑が広がり、素晴らしい眺望を持つこの地で、日本を代表する銘石が職人の手によって採石されています。
その採石は岩盤を切り出すのではなく、山腹に露出している玉石をワイヤーソーと呼ばれる工具を用いて行われます。ワイヤーソーでカットされた石の表面は、やや白く映りますが、浮金石ならではの黒味をその岩肌に見ることができます。
岩盤に入る亀裂のうち、南北に走る亀裂を「かさね」、東西に走る亀裂を「二番」と呼びます。
丁場での採石は、この「かさね」や「二番」と呼ばれるキズや石目を見極めて行いますが、黒石山の場合、岩盤に入ったキズは縦横無尽に走っていて、見極めることが難しくなっています。
そのため、ワイヤーソーの導入で歩留まりは向上したものの、墓石として使えるものは採石した石の約5%前後といわれています。
さらに、高い品質のものを作り出すためには何重ものチェックが必要で、当然相応の時間を要します。
厳しい自然環境の中、石職人の熟練の目と技術によって丁寧に採石された浮金石は、多くの手間と労力をかけて素晴らしい墓石となっていくのです。
浮金石の魅力
古来、墓石や慰霊碑といった故人を偲び供養する対象には、それにふさわしい威厳を持った石が用いられてきました。
浮金石は、沖縄県戦没者慰霊碑にも使用されており、今もなお沖縄戦等で亡くなった全ての戦没者を追悼し、恒久平和の希求と悲惨な戦争の教訓を継承するシンボルとして存在しています。
優美さと凛とした存在感を持ち、祈りのシンボルにも採用されている浮金石。
まさに墓石にふさわしい石と言えます。
墓石や慰霊碑の他に、皇居外苑にある和田倉噴水公園の噴水にも浮金石は使われています。
もともとこの大噴水は、昭和36年に上皇陛下の御結婚を記念して創建されたものですが、平成5年6月の今上天皇の御結婚を機に、「継続と新たな発展」をテーマに再整備。
平成7年6月に完成したものです。
整備にあたり、「和田倉地区が水と緑で構成された表情豊かで風格のある空間として、末永く国民の皆さんに親しんでいただけるように」との願いが込められ、直線と円を用いたシンプルな造形は日本的な美を感じさせるものです。
水が噴射される濃いグレーの石が浮金石です。
噴水の水は斜め上に噴出し、菊の花とつぼみを表現しています。
日本を代表する高級石材・浮金石。
由緒ある場所でも、輝くような存在感を放っています。
<代表的な建築物>
沖縄県戦没者慰霊碑(沖縄県)
和田倉噴水公園の噴水(東京都千代田区)
上野駅(東京都台東区)
東京駅(東京都千代田区)
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