お役立ちコラム お墓の色々

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- 供養をきわめる -

梵字を刻みたい。竿石・仏石、五輪塔、卒塔婆? 宗派別にお教えします。

墓地・墓石コラム

梵字を刻みたい。竿石・仏石、五輪塔、卒塔婆? 宗派別にお教えします。

墓石や卒塔婆などで見られる「梵字(ぼんじ)」は、それ自体に神聖な力が宿るとされ、ご供養の気持ちを表すために刻まれるものです。

また、梵字は神仏とも密接な関係があり、ご利益をもたらすと考えられていますが、その刻む場所は宗派ごとに異なり、梵字を用いない宗派も存在します。

今回は、宗派ごとに竿石・仏石、五輪塔、卒塔婆、それぞれにどう梵字が刻まれるのか紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

梵字を刻む宗派

天台宗

天台宗は中国を発祥とする大乗仏教の宗派のひとつです。
釈尊の「全ての人に悟りの世界を」という教えに着目した中国の僧侶・智顗(ちぎ)が教義を体系づけました。智顗はその晩年を杭州の南の天台山で過ごし、弟子の養成に努めたことから「天台大師」と諡(おくりな)され、またその教学は天台教学と称されました。これが天台宗の起源となっています。

天台大師の教えを最澄(さいちょう)が日本に伝え、天台宗の開祖となりました。

竿石・仏石

天台宗では「さまざまな仏さまは釈迦牟尼仏が、縁によって私たちを救うために姿を変えて現れたものである」と考えるため、多くの仏さまを等しく祀ります。この特徴はお墓にもあらわれていて、具体的には墓石に刻む文字にも、お墓の形にも特に決まりはありません。

そのため、梵字を用いる場合は、大日如来をあらわす梵字「ア」や、釈迦如来をあらわす「バク」、阿弥陀如来をあらわす「キリーク」が多く使われています。梵字は文字の頭に入れ、「梵字+〇〇家先祖代々之墓」と入れるのが一般的です。

なお、その他では法華経に由来する「南無阿弥陀仏」や「南無釈迦牟尼佛」、そして、〇〇家之墓とすることが多くなっています

五輪塔

五輪塔の上から「空・風・火・水・地」に対応する5つの梵字「キャ・カ・ラ・バ・ア」を刻みます。それぞれの梵字は宇宙の5大要素を表しており、故人が成仏し、極楽浄土へ往生するように願うために刻まれるものです。

梵字以外ですと、「妙・法・蓮・華・経」を刻むことが多いです。

卒塔婆

板塔婆の表面の上部にも「空・風・火・水・地」に対応する「キャ・カ・ラ・バ・ア」の5つの梵字を刻みます。

真言宗

真言宗は、“お大師さま”として親しまれている弘法大師/空海が、平安時代初期に体系化した「真言密教」を教義とする宗派です。

真言密教の「真言」とは、仏の真実の「ことば」を意味します。
そして「密教」は、お釈迦さまの教えを広く民衆に分かりやすく説いて明らかにする「顕教(けんぎょう)」とは対となる、閉ざされた師弟関係によって口伝された「秘密の教え」のことです。

真言宗の密教は東密(とうみつ)と呼ばれ、同じ密教である天台宗は台密(たいみつ)と呼ばれます。天台宗では密教と顕教を同格に扱う点(顕密一致)が真言宗との大きな違いです。

竿石・仏石

真言宗では墓石に刻む文字に決まりはありません。梵字を刻む場合、故人が成人ですと大日如来をあらわす梵字「(ア)」を、15歳以下の子どもですと、地蔵菩薩を示す「カ」を文字の頭に刻むことがあります。例えば「梵字+〇〇家之墓」というような形です。

なお、一般的には、「〇〇家之墓」や、宗派で使われるお経、念仏の言葉などが刻まれます。

五輪塔

梵字を刻む際は、天台宗と同じように「空・風・火・水・地」に対応する「キャ・カ・ラ・バ・ア」の5つの梵字を、上から順に用います。

卒塔婆

板塔婆の表面の上部にも「空・風・火・水・地」に対応する「キャ・カ・ラ・バ・ア」の5つの梵字を刻みます。

臨済宗

臨済宗(りんざいしゅう)は、禅宗の1つに数えられ、宗祖は中国の禅僧である臨済義玄(りんざい ぎげん)禅師です。日本には、宋時代の中国に渡り学んだ明庵栄西(みょうあん えいさい)らによって鎌倉時代以降に伝えられ、様々な流派が成立し、現在では主に14の諸派、約7000もの末寺があります。

臨済宗では、特定のご本尊は定められていませんが、一般的には「釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)」を本尊としてお祀りし、縁によっては、薬師如来や観世音菩薩、文殊菩薩などをお祀りする寺院もあります。

竿石・仏石

臨済宗では、竿石・仏石に梵字を刻むことはなく、円相と呼ばれる円形の印を刻むことがあります。円相は悟りや真理などを表現したもので、刻む位置は「○○家之墓」の上部です。またご本尊である「南無釈迦牟尼仏」と刻むお墓もあります。

五輪塔

天台宗・真言宗と同じように、宇宙の5大要素を表す「空・風・火・水・地」に対応する「キャ・カ・ラ・バ・ア」の梵字を、上から順に刻みます。

卒塔婆

板塔婆の表面の上部にも「空・風・火・水・地」に対応する「キャ・カ・ラ・バ・ア」の5つの梵字を刻みます。梵字の他に「大円鏡智(だいえんきょうち)」や「平等性智(びょうどうしょうち)」などの、お経に出てくる文字を書く場合もあり、梵字や経文の下には、故人の戒名や何回忌などの、供養の趣旨を書きます。

曹洞宗

曹洞宗(そうとうしゅう)は、臨済宗とならび禅宗の1つに数えられます。今から800年ほど前の鎌倉時代に、「道元禅師(どうげんぜんじ)」が、正伝の仏法を中国から日本に伝え、それを「瑩山禅師(けいざんぜんじ)」が全国に広め、その礎を築きました。

曹洞宗には大本山が2つあり、ひとつは福井県にある大本山永平寺(えいへいじ)、もうひとつは横浜市にある大本山總持寺(そうじじ)です。両大本山と呼ばれ、曹洞宗寺院の根本、信仰の源となっています。なお大本山の住職は、貫首「かんしゅ」と呼ばれます。

竿石・仏石

曹洞宗でも、竿石・仏石に梵字を刻むことはありません。同じ禅宗である臨済宗と同じように、円相を刻みます。一円相(いちえんそう)とも呼ばれ、仏・心の本来の姿・悟り・完全といった意味を表し、故人が悟りを開いて「完全な仏性となって成仏した人」であることを表すものです。

五輪塔

曹洞宗でも五輪塔を建てることがあります。刻む文字は梵字で「空・風・火・水・地」というのが一般的です。

卒塔婆

板塔婆の表面の上部にも「空・風・火・水・地」に対応する「キャ・カ・ラ・バ・ア」の5つの梵字を刻みます。

黄檗宗

黄檗宗(おうばくしゅう)は、臨済宗・曹洞宗と共に日本の三禅宗の1つに数えられる宗派です。元は中国の臨済宗の一派で、当初は「臨済宗黄檗派」などと称していましたが、明治9年に一宗として独立し「黄檗宗」を公称するようになりました。

今日の臨済宗の教えと共通する部分が多く、師から示された公案を解いて悟りに到る「看話禅(かんわぜん、かんなぜん)や、坐禅といった「行」を大切にしています。その一方で、坐禅にプラスして念仏をとなえる「念仏禅」を行うことが特徴です。

また、他の2つの禅宗と黄檗宗との大きな違いは、中国的な特徴を色濃く残していることです。

竿石・仏石

黄檗宗でも、竿石・仏石に梵字を刻むことはありません。同じ禅宗である臨済宗・曹洞宗と同じように、円相を刻みます。

五輪塔

黄檗宗でも五輪塔を建てることがあり、梵字で「空・風・火・水・地」というのが一般的 なものとなります。

卒塔婆

板塔婆の表面の上部にも「空・風・火・水・地」に対応する「キャ・カ・ラ・バ・ア」の5つの梵字を刻みます。

浄土宗

浄土宗は鎌倉時代に成立した仏教の1つです。開宗以降、浄土宗は長い歴史の中で分派統合を繰り返しており、現在では鎮西派(ちんぜいは)と西山派(せいざんは)の2派に大きく分かれ、いくつにも分かれた宗派から鎮西派を中心にまとめたものが現在の「宗教法人浄土宗」です。

両者の大きな違いの一つが教義です。鎮西派は「二類各生(二類往生)説」を、西山派は「一類往生説」を説いています。二類各生説は「念仏を唱えましょう。念仏は皆が極楽往生できる方法です。ただ善行を働くことも極楽往生するための方法になりますよ」という思想である一方で、一類往生説とは「念仏を唱えましょう。念仏こそが皆が極楽往生できる唯一の方法です」という思想です。

竿石・仏石

浄土宗の墓石に梵字を刻む場合は、阿弥陀如来を表す梵字(キリーク)を家名の彫刻の上に刻みます。

なお、その他には竿石正面に「南無阿弥陀仏」、「俱会一処(くえいっしょ=同じ阿弥陀仏の浄土でまた共に会わせていただくという意味)」と刻むのが一般的です。

五輪塔

五輪塔には一般的に他と同じように梵字を刻みますが、上から「南無・阿・弥・陀・仏」と刻む場合もあります。

卒塔婆

板塔婆の表面の上部にも「空・風・火・水・地」に対応する「キャ・カ・ラ・バ・ア」の5つの梵字を刻みます。「南無阿弥陀仏」と記す場合もあります。

梵字を刻まない宗派

実は仏教全ての宗派で梵字を刻むわけではありません。仏教の中には梵字を刻まない宗派も存在します。

浄土真宗

浄土真宗は鎌倉時代に成立した仏教の1つです。浄土宗の開祖である法然の弟子・親鸞(しんらん)聖人が開いた宗派が浄土真宗です。浄土真宗の宗派は現在、真宗十派と呼ばれる真宗教団連合加盟の10の宗派と諸派に分流しています。

浄土真宗では信者の事を「門徒」と呼び、本願寺派の約700万人、真宗大谷派の約550万人を含め、浄土真宗全体の門徒数は約1200万人以上に上ります。
寺院数も22,000寺以上を数え、日本の仏教諸宗の中では最多となっています。

竿石・仏石

浄土真宗では「お墓=ご先祖様の魂が宿る場所」とは考えず、故人をしのびつつ、人間の命のはかなさや人々を救う阿弥陀仏の慈悲の力に気づかせていただける場所がお墓であると考えられています。

そのため、浄土真宗の門徒のお墓には「〇〇家之墓」や「先祖代々」ではなく、「南無阿弥陀仏」や「倶会一処(くえいっしょ)」と記され、梵字は用いません。

五輪塔・卒塔婆

浄土真宗には「往生即成仏」の考え方があるため、故人の冥福を祈り、現世にいる人間が善行を積み供養をする「追善供養」は必要でないと考えます。卒塔婆を用いることもありません。同様の理由で、ご先祖様の霊魂が宿る位牌もお祀りしません。

ただ、浄土真宗の開祖・親鸞聖人のお墓は五輪塔というのは有名な話です。浄土真宗であっても、古くから五輪塔が建てられていることもあるようですので、開祖にならい五輪塔を建てることは可能です。

日蓮宗

日蓮宗(にちれんしゅう)は、鎌倉時代中期に日蓮聖人(にちれんしょうにん)によって開かれた宗旨です。
鎌倉仏教の一つに数えられ、お釈迦様の説かれた法華経(妙法蓮華経)(ほけきょう・みょうほうれんげきょう)をよりどころとします。法華経の功徳が込められているとされる「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」の7文字のお題目を心から信じて唱えることが仏となる唯一の道であるとしています。

竿石・仏石

日蓮宗の本尊は曼荼羅です。そのため梵字は用いることはありません。法華経の正式名称である「妙法蓮華経」からとった2字「妙法」を入れます。

「妙法○○家先祖代々之墓」または「南無妙法蓮華経」とし、「南無妙法蓮華経」の「法」以外の6字の端の部分を、長くひげのように伸ばして書いた「髭題目(ひげだいもく)」と呼ばれる文字を記します。これは「法」の光に照らされ、万物がことごとく真理を体得して活動することを表しています。

五輪塔

日蓮宗でも他の宗派と同様に五輪塔を建てることがありますが、彫られる文字は梵字ではなく天台宗でも見ることのできる「妙・法・蓮・華・経」です。

卒塔婆

日蓮宗では、塔婆の一番上に「南無妙法蓮華経」とお題目を書きます。梵字は用いません。

まとめ

梵字は、それ自体に神聖な力が宿るとされています。また、梵字は神仏とも密接な関係があり、ご利益をもたらすものとも考えられているため、「好きな梵字をいろいろなところで使いたい」と思われることがあるかもしれません。

ただ、梵字の使用には一定のルールがあることが今回の記事でお分かりいただけたことと思います。

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