お役立ちコラム お墓の色々
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- 供養をきわめる -
お坊さんは結婚できる?理由や歴史について解説

法事やお墓参りなどでお寺を訪れると、住職の奥さんや子供と会うこともあるかと思います。
しかし「お坊さん(僧侶)って結婚してもいいのかな?」と不思議に感じる人もいるかもしれません。
実は、日本ではお坊さんも結婚が可能です。
この記事ではその理由や、結婚できるようになった経緯などを解説します。
なぜお坊さんは結婚していいの?
江戸時代以前、浄土真宗以外の僧侶には結婚が許されていませんでした。
浄土真宗は他宗派と異なり結婚が許されていましたが、これは後ほど解説する開祖・親鸞の考え方によるものです。
明治5年(1872年)になると太政官布告133号「今より僧侶の肉食(にくじき)・妻帯(さいたい)・蓄髪(ちくはつ)は勝手たるべき事」という法律が作られ、法の上では、どの宗派の僧侶も結婚をしてもよいと認められました。
もちろん僧侶としての戒律を捨てていいという意味ではなく、国として僧侶の結婚を制限することをやめたという意味です。
法律上は許されていても、仏教の教えを守るという観点で考えて、本当に僧侶の結婚が許されていいかについては、宗派によって考え方がわかれていました。
しかし現実的な問題としてお寺の住職に後継者がいない場合、いつか住職が不在となり、法事や法要が営まれない、お寺の管理が行き届かないといった事態が起こりかねません。
檀家になっている家にとって、これは深刻な問題です。できれば住職に、跡を継いでくれる人がいてほしいと思うはずです。
そこで住職が結婚して子供を作り、その子供がお寺を継ぐという風習が生まれます。これなら檀家も将来の心配をしないで済むため、僧侶、特に住職やその家族は結婚して子供を作ることが一般的になっていきました。
また日本では、僧侶ではない一般の人も仏の教えによって救われる(大乗(だいじょう)仏教)という考え方がさまざまな宗派にあり、「煩悩を断って厳しい修行をすることだけが僧侶としての正しい生き方とは限らないのでは」という考え方が許容されたという見方もできます。
タイやミャンマーなどの外国では、現在も上座部(じょうざぶ)仏教(小乗仏教)と呼ばれる、出家して修行をした人だけが救われるという考え方が定着しており、仏教の僧侶の結婚は認められていないことが多いため、日本は特殊な例と言えるでしょう。
お坊さんと結婚した女性の生活はどうなる?
住職や、住職の跡取りと結婚した女性は、厳しい戒律を守り、厳格な生活を送らなければならないのではと想像する人もいるかもしれません。
しかし一口にお寺といっても、宗派や規模などにより生活スタイルはさまざまです。僧侶と結婚した女性の生活も、必ずしも厳しい制限を受けるとは限りません。
仕事に関しても、結婚後も自分の仕事を続け、お盆などの忙しい時期にはお寺を手伝うというライフスタイルの人もいます。
もちろん自分の仕事を辞めてお寺を支えることに専念するケースもあり、この場合、お寺の事務作業、行事の準備や檀家との付き合い、境内の掃除や墓地の除草作業など多様な仕事を担当することになります。しかし檀家との交流が楽しいなど、この仕事だからこそ経験できることに魅力を感じている人もいるようです。
なお住職の妻には、「お庫裏(くり)さん」「大黒さん」「寺庭(じてい)さん」などの呼び名があります。
庫裏は台所や僧侶が普段暮らす場所を指しており、大黒さんは台所に祀っている大黒天に由来する呼び名です。寺庭という言葉は「家庭」の家の部分を寺に変えて作られました。
浄土真宗では、「坊守(ぼうもり)さん」がよく使われます。
ただしお寺によってはまったく違う呼び方をすることもあります。
基本的に特殊な呼び方を意識する必要はなく、「住職の奥さん」で問題ありません。
初めて結婚したお坊さんはどんな人?
日本で初めて、結婚したことを明らかにした僧侶は親鸞(しんらん)だと言われています。
親鸞は鎌倉時代に生きた僧侶で、浄土真宗の開祖です。
当時、僧侶の結婚は許されていませんでした。
実際には密かに結婚していた人もいたのではないかと言われていますが、少なくとも公には僧侶の結婚はあってはならないとされていました。
しかし親鸞は人々から激しく非難されるとわかっていても、あえて結婚する道を選びます。
今も昔も、僧侶ではない一般の人は、結婚が可能です。
しかし結婚せず、すべての煩悩を断ち切った僧侶しか仏教では救われないとしたら、一般の人たちは仏教において救われない存在ということになってしまいます。
親鸞はその考え方は違うと信じていました。結婚した人、煩悩を持ったまま社会で暮らす一般の人も、仏教では皆救われるのだと考え、それを示すために、結婚したのです。
親鸞のこの姿勢から、浄土真宗では、明治時代に法律が作られる前から結婚が許されるようになりました。
お坊さんの婚活を支援するサービスもある
現代の僧侶は、結婚したくても結婚相手が見つからないという悩みを持つようになりました。
一般家庭に比べて行動の制限が多そうというイメージなどが原因となり、結婚相談所などを利用してもなかなか結婚相手が見つからないようです。
そこで時代のニーズに合わせ、僧侶やお寺の家族の婚活に特化した支援サービスが登場し、さまざまな宗派の僧侶に利用されています。
日本のお坊さんは家族でお寺を支えている
世俗から離れて1人で修行の道を突き詰めるのではなく、一般の人々の生活とともにあるのが日本の仏教の特徴です。
今の日本ではお坊さんが結婚して家庭を持ち、家族でお寺を支えていく光景は自然なこととして社会に受け入れられています。
法事やお墓参りでお寺に行った際、住職の家族に出会ったら思い返してみてください。住職だけではなく、その家族もきっとお寺を支えるために日々頑張っているはずです。あなたの家のお墓の維持・管理も手伝っているでしょう。
「いつもありがとうございます」と感謝の気持ちを込めて話してかけてみてはいかがでしょうか。