お役立ちコラム お墓の色々

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ファンでなくとも一度はお参りしたい人間国宝のお墓~野澤松之輔編

墓地・墓石コラム

ファンでなくとも一度はお参りしたい人間国宝のお墓~野澤松之輔編

お墓参りの際、今後の抱負や約束事を墓前に誓う方は多いと思われます。お墓の厳かな雰囲気はこうした気持ちを引き締めるのにピッタリですし、故人に見守ってもらっているかのような感覚にもなります。
私たち日本人は、自然と身についた習慣として神社やお寺にお参りするかのように、お墓参りをしている面もあるのではないでしょうか。

また、家のお墓の前で誓いを立てるのも良いですが、時には尊敬する偉人や生きざまに憧れる偉人のお墓に誓いを立てるのも、より一層気が引き締まって良いでしょう。なお、有名人のお墓巡りを趣味にしている方々は「墓マイラー」と呼ばれ、実は秘かなブームにもなっています。

人間国宝とは

日本では、重要無形文化財に指定された無形の「わざ」を高度に体得している個人を、通称「人間国宝」(厳密には「重要無形文化財の保持者」)として認定しています。

具体的には、雅楽・能楽・文楽・歌舞伎などの芸能関係者や、織物・染色・陶芸・蒔絵・金工などの工芸技術関係者に与えられるもので、その人数はのべ383人(令和6年1月20日時点)です。

人間国宝の認定は「生涯認定」であり、1人あたり年間200万円の「重要無形文化財保存特別助成金」が支給され、人間国宝が自らの芸を磨き伝承者を養成する活動を助成しています。

亡くなった場合はこの助成金の都合から人間国宝の指定を「解除」されますが、その功績や評価が失われるわけではありません。

今回は、人間国宝として認められた偉大な人物の足跡とお墓を紹介いたします。

人間国宝・野澤松之輔

1972(昭和47)年に「文楽」の「三味線弾き」で人間国宝となった野澤松之輔(本名:西内重男)。
文楽とは、「人形浄瑠璃」とも呼ばれ、語り手の太夫(たゆう)と三味線弾き、人形遣いの三者が一体となって表現する舞台芸術で、江戸時代から続く日本を代表する伝統芸能の1つです。
野澤松之輔は1902(明治35)年、和歌山県和歌山市に生まれます。1917(大正6)年に、15歳で世界文化遺産にも登録されている人形浄瑠璃音楽の一種「義太夫節」三味線方の名跡(後継)である6代野澤吉兵衛に入門、「野澤吉左」を名乗ります。
その後1942(昭和17)年に吉左から松之輔へ改名し、語り手である3代目竹本春子大夫らの相三味線をつとめます。
1954(昭和29)年には義太夫小唄の豊本節を創始し、自ら宗家となり「豊本豊輔」と名乗ります。
江戸時代に失われた人情浄瑠璃「曽根崎心中」の復活や、数多くの新作作曲など、日本の伝統音楽の発展に貢献した功績が認められ、1968(昭和43)年に紫綬褒章、1974(昭和49)年に勲四等旭日小綬章を受賞します。
翌年の昭和50年(1975)1月13日、大阪梅田のお初天神近くの病院で、惜しまれつつ73年の生涯を閉じました。

近松を蘇らせた男

江戸時代の歌舞伎・人形浄瑠璃の作曲家、近松門左衛門の代表作の一つ「曽根崎心中」。初演は1703(元禄16) 年だったのですが、20年も経たない内に「享保の改革」で心中物の上演が禁止されてしまいます。長く再演されないまま明治維新や戦争が勃発。原曲が失われてしまいました。
それから1955(昭和30)年に文楽で復活上演されるまで「曽根崎心中」は演じられませんでした(歌舞伎での復活上演は1953年)。
その失われた義太夫節を作曲したのが、野澤松之輔です。
それ以外にも生涯に600曲以上の新作を作曲。人形浄瑠璃の作曲はもちろんのこと、歌舞伎、また映画音楽 『楢山節考』などの作曲まで手がけるなど、幅広く活躍しました。

野澤松之輔のお墓

生まれ故郷の和歌山県和歌山市鷹匠町にある日蓮宗感應寺塔頭の一つ本行院。その境内墓所にお墓があります。
墓石の形状は一般的な和型で、墓石には「西内家先祖代々之霊」の文字が、右側には「文学人間国宝 野澤松之輔墓所」の文字が刻まれています。
また墓石の左右に「昭和九年八月」「西内重男建之」の記載があります。
野澤松之輔自身が32才のときに建立したことがわかります。

戒名は『文楽院三弦日松居士』です。

◆日蓮宗寺院・本行院

まとめ

今回は文楽の人間国宝・野澤松之輔のお墓を紹介いたしました。功績などを記載することもなく非常にシンプルな墓石となっていますが、そのシンプルさゆえに凛とした、洗練された歴史の重みを感じられるのではないでしょうか。
また同じ和歌山市内には、加藤清正の娘で家康の息子の頼宣と結婚した「瑤林院」が眠る「報恩寺」や、徳川八代将軍吉宗公の祖母が眠る「大立寺」もあります。和歌山城からも近いので、観光がてら足を運んでみてはいかがでしょう。

なお、本サイトでは人間国宝・六代目中村歌右衛門の墓所も紹介しております。こちらの記事も併せてご覧ください。
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