お役立ちコラム お墓の色々
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- 供養をきわめる -
結婚していても実家のお墓に入ることができるの?
昔は、嫁入りしたら婚家のお墓に入るという認識が一般的でした。しかし最近では、「結婚しても、仲の良かった実の両親と同じ墓に入りたい」「夫の実家の先祖代々の墓に入ることに違和感がある」などの理由で、結婚していても実家のお墓に入りたいと考える女性も少なくないようです。
今回は、結婚した女性が実家のお墓に入りたいと考えた時の、法的な決まりや注意点、選択肢として考えられる方法などについて紹介していきます。
お墓に入れる人についての決まり
昭和初期までは、明治時代に制定された「家制度」によって、お墓は長男の家系が継承するのが基本で、お墓に入れるのは継承者とその配偶者のみと定められていました。
現在では制度も変わり、考え方も多様化してきてはいますが、当時の名残で「結婚したら嫁ぎ先のお墓に入るのが当たり前」と考える人も少なくありません。
法律上は「こうすべき」との決まりはない
現在、お墓に関わる法律として「墓地、埋葬等に関する法律」があります。しかし、この中にお墓に納骨する人を制限する記載はありません。つまり、誰がどのお墓に入らなければならない、入ってはいけないという決まりはなく、結婚していても実家のお墓に入ることについて、法的には問題ないということになります。
しかし、お墓には所有者や管理者がいますので、無条件に誰でも入れるということではありません。
お墓の継承者と墓地管理者の許可は必要
前述のように、誰がどこのお墓に入っても、法的には問題ありません。しかし、実際に納骨する際には、お墓や墓地・霊園を管理している、お墓の継承者と墓地管理者の許可が必要となります。
① お墓の持ち主(墓地を継承した人・永代使用権のある人)
まず許可を得る必要があるのは、お墓の持ち主、つまりお墓を継承し、永代使用権(お墓の区画を使用できる権利)を持っている人です。
法律上、墓地や墓石は、仏壇などと共に祭祀財産と呼ばれ、一般的な相続財産とは違って分割せず、「祖先の祭祀を主宰する者」という立場とともに1人の「祭祀承継者」に引き継がれることになっています。ご実家の家や土地の相続をされた方や、お墓の主な管理を任されている方が、祭祀承継者としてお墓や墓地の永代使用権を引き継いでおられる場合も多いでしょう。
誰がお墓に入るかという問題は、その後のお墓の管理にも関わってきます。お墓の持ち主や関わりのある親族、当然ながら自分の家族にも意向を伝え、遺恨を残すということがないよう、しっかりと話し合う必要があります。
② 寺院や霊園などの墓地の管理者
次に、寺院や霊園、管理組合といった、墓地の管理規則の確認をすることも必要です。
特に制限していない場合もありますが、多くの墓地では規則を設けて、「お墓の使用者から何親等まで」といった関係性や、宗派や戒名などについて、お墓に入れる範囲を制限しています。親族の了解が得られても、規則で納骨が許可されていない場合は、実家のお墓に入れないというケースもあるのです。
規則は墓地や寺院によって違うため、まずはご自身で管理規則を確認しましょう。そして、制限にかかってしまうようであれば、事情によっては対処する方法が見つかることもあるかもしれませんので、一度、墓地管理者に相談してみられると良いでしょう。
ちなみに、墓地埋葬法第13条には、「墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは、正当の理由がなければこれを拒んではならない。」とあり、上記のような規則があるのはおかしいと思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、お墓に入れる人の範囲を制限することは、お墓にまつわる権利関係の複雑化や、墓地の継承者不在といった問題が生じるリスクを回避し、墓地を適切に管理運営するという「合理的な理由」によって、必要と考えられています。
妻が実家のお墓に入りたいと思った時の選択肢
結婚後、実家のお墓に入ろうと考えた時、その方法はいくつかあります。納骨方法やお墓の建て方も多様化しており、「婚家のお墓か、実家のお墓か」以外にも、選択できる方法がありますので、家族や親族との関係や望まれる状態に合わせて、検討すると良いでしょう。
夫やその家族と同じお墓に入りたくない
夫や義理の家族と同じお墓には入りたくないという場合、最初に考えるのは実家のお墓に入るということでしょう。この場合、実家のお墓の継承者・管理者の了承を得ることはもちろんですが、夫や家族、夫側の親族としっかり話し合うことが大切になってくるでしょう。昔からの慣習と異なるために、抵抗を感じる親族もいらっしゃるかもしれません。残される家族や、後にお墓を管理してくれる人に負担をかけないよう、ただ希望を伝えるだけではなく、きちんと話し合い、遺恨が残らない形にしておくことが重要です。
嫁ぎ先のお墓に入りたくないと考える方の中には、お墓に入るときには1人になりたいと考える方もいらっしゃるようです。その場合は、「個人墓」「永代供養墓」という選択肢もあります。継承の負担がなくなるというメリットもありますが、この場合も、夫や、残される家族、親族とよく話し合って決める必要があるでしょう。
永代供養について詳しくは、こちらの記事で解説しています。
◆永代の意味から「永代供養」のことを知りましょう
婚家のお墓に入ることに抵抗はないが、実家のお墓にも入りたい
夫や義理の家族と同じお墓に入ることに抵抗はないけれど、実家のお墓にも入りたい、実の親と同じお墓に入りたいという場合、「分骨」という形で遺骨を分けて、夫の家と実家の両方に入れてもらうという方法もあります。
分骨については、納骨前に行う場合と、納骨後に分ける場合とで手続きが異なりますので、事前にその方法などは確認しておくと良いでしょう。
分骨の手続きについては、こちらの記事で紹介しています。
◆手続きが必要?分骨の手順や手続きとは
実家のお墓の継承者がおらず、実家のお墓に入る必要がある
実家のお墓の継承者がいないために、実家のお墓に入る必要があるという場合には、両家のお墓を1つにまとめた両家墓(りょうけぼ・りょうけばか)とする方法もあります。お墓が1箇所にまとまることで、守っていく際にも管理がしやすく、費用負担が軽減されるというメリットもあります。
この場合、継承者や親族の同意を得ることはもちろん、墓地や霊園の規約とも照らし合わせ、宗教や宗派についても確認しておく必要があるでしょう。
両家墓については、こちらで詳しく解説しています。
◆2つの家をまとめる2世帯のお墓「両家墓」
夫とは一緒が良いけれど、婚家のお墓に入るのは抵抗がある
実家のお墓に入るというテーマからは外れますが、もし、嫁ぎ先の先祖代々のお墓に入ることに抵抗があるということであれば、夫婦2人だけが納骨される、「夫婦墓」(めおとばか、ふうふばか)を検討しても良いかもしれません。継承を前提としないお墓のため、残される人の負担を軽くできるというメリットもあります。ただ、親のお墓を残したいと考える家族もいます。残されるご家族や親族とすれ違いが起こらないよう、よく話し合うと良いでしょう。
夫婦墓については、こちらで詳しく解説しています。
◆近年増えている夫婦墓とは?
実家のお墓に入る際の注意点
納骨の希望は事前にしっかりと伝える
一般的には、既婚の女性が亡くなった際には、嫁ぎ先のお墓に入ると考える人が多いです。ですので、実家のお墓に入ることを希望している場合には、納骨をしてくれる家族だけでなく、近い親族にも事前にしっかり伝えておく必要があります。
遺言書に書けばいいのでは?と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、これでは、希望が叶えられないことがあります。
遺言書は、法的な効力を及ぼせる内容が決められており、お骨の取り扱いについては含まれていないため、もし遺言書に納骨について書いたとしても、単に希望を伝えるだけにとどまってしまいます。更に、ご家族が遺言書を見るのは、納骨が済んだ後になる場合も多いため、納骨についての希望か叶えられない可能性が少なくないのです。
ですから、納骨について希望がある際は、一方的に遺言書などに書くのではなく、事前に家族や近い親族に伝えてしっかりと話し合っておくことが大切です。その上で、本人の意思と分かるよう、遺言書やエンディングノートに書いておくと良いでしょう。
後にお墓を継承し管理していく人のことも考える
お墓は、自分が入ったら終わりではなく、お子様など次のお墓の継承者がお墓を守っていくことになります。その場合、妻である自分が実家のお墓に入ることで、お子様が将来複数のお墓を守っていくことになる可能性もあります。
そのことも踏まえて、家族や親族と話し合い、お墓の残し方や納骨の仕方を検討されると良いでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?嫁いでいても、お墓の持ち主や墓地の管理者の承認が得られれば、実家のお墓に入ることは可能です。
時代と共に、家族や結婚、お墓に対する考え方も多様化し、埋葬の形態や方法についても様々な希望を叶えやすくなっています。
お気持ちや事情に合わせて様々な方法を検討してみても良いかもしれません。
ただ、お墓については、自分が入って終わりではなく、次の世代に継承され守ってもらうことになります。価値観が多様化している現代だからこそ、自分だけではなくお互いの気持ちを尊重しつつ歩み寄り、みんなが納得できる最高の結末を迎えられるよう、家族や親族とよく話し合って進めていきましょう。
お墓の継承に関わる記事を紹介しますので、気になる方は参考にされてください。
◆お墓は誰が継承するもの?継承者の決め方を解説
◆相続放棄したらお墓はどうなる? 墓じまいや送骨で無縁仏を回避
◆独身・単身者など、お墓を引き継ぐ人がいない場合に取れる4つの選択肢