お役立ちコラム お墓の色々

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石工の仕事とは?お墓づくりに携わる職人の仕事を紹介します

墓地・墓石コラム

石工の仕事とは?お墓づくりに携わる職人の仕事を紹介します

採石場から石材を切り出す仕事や、石材を彫刻して墓石や工芸品などを作る仕事に従事する職人を「石工(いしく、せっこう)」と呼びます。石工の仕事を知ると、お墓が私たちのもとに届くまでの工程と、職人たちがどんな思いで大切なお墓を作り上げているのかがわかります。お墓への愛着も一層湧いてくることでしょう。本記事では、石工の仕事の中から、お墓に関係する部分にスポットを当ててご紹介します。

石工の仕事内容

石工には、2種類の職人がいます。採石場で石を切り出す「丁場の石工」と、石材への彫刻とお墓の施工を担当する「石材店の石工」です。まずは、それぞれの仕事をご紹介いたします。

採石場で石を切り出す「丁場の石工」

別名で「丁場」とも呼ばれる採石場では、石工によって岩盤から石の切り出し作業が行われています。丁場ごとに多少違いはありますが、採石には主に以下のような方法が用いられます。

・黒色火薬で発破して岩盤を割る
・固まると体積の増える「膨張剤」を流し込んで岩盤を割る
・ジェットバーナーで焼き切る
・ダイヤモンドを含んだワイヤーを高速回転させて切断する

破砕力や切断力の高い道具を扱うので、細心の注意が要求される現場です。
切り出された石は、削岩機や槌などの道具によって、徐々に小さく整形されていきます。その後、各石材店に運ばれて、石材店の石工の手によってさらに加工されます。

実際の作業の様子は、ぜひ動画コンテンツでご確認ください。
「最高級墓石ができるまでの9工程」

石材への彫刻とお墓の施工を担当する「石材店の石工」

石材店の石工は、石材にお墓として必要な加工を施し、墓地で組み上げて完成させるのが仕事です。主に、以下のような作業を担当しています。

・お墓の大きさや形に合わせて石材を切断
・色ツヤや石肌を整えるための研磨
・名前や模様の彫刻
・墓地での施工
・アフターフォローや修理

また、墓石の他にも、外柵や石仏、記念碑なども制作しています。石の加工は今やほとんど機械で行いますが、あえて手で削ることにこだわる石工もいます。
修理の仕事では、お墓だけでなく、ときには古くなったお地蔵様を直すような仕事もあります。

2つの石工の違いは、農家(丁場の石工)と料理人(石材店の石工)をイメージすると、わかりやすいかもしれません。丁場で採取され、石材店で加工された石が、私たちのもとに届けられ、お墓となるのです。

石工の仕事のやりがいとは?

何百年も前のお墓が現存しているように、石材は非常に耐久性が高い物です。一方で、その取り扱いには、石ごとの性質を理解して、加工しなければいけない繊細さが要求されます。また、お墓は故人を偲ぶよりどころです。自分たちが携わった石が、世代を越えて受け継がれていくことは、石工にとって責任感とやりがいにつながっているようです。

石工と石材の歴史

石工は古墳時代から存在したと言われる、伝統的な仕事です。地震が多い日本では、石材は建築資材としてはあまり使われず、石塔などの仏教由来の文化財や、お城の石垣などの土木分野で発展してきました。安土・桃山時代には、「穴太衆(あのうしゅう)」と呼ばれる石工集団が、織田信長の居城・安土城の石垣を作ったと史料に残っています。
石材を用いたお墓が世間に広まっていったのは、江戸時代以降のことです。それ以前は、豪族や貴族だけが建てるものでしたが、徳川幕府による寺請制度の開始以降、庶民の間でも石造りのお墓が増えていきます。
明治以降には、諸外国を真似して建築物にも石材が使われた時代がありましたが、やはり地震が懸念となり、結局衰退してしまいました。こうして歴史を振り返ってみると、お墓は、今や貴重な石材文化であることがわかります。
ちなみに、現在は日本各地の銘石を使ってお墓を建てられますが、昔はお墓に使う石といえば、近場で採取できる石が中心でした。関東の墓地に黒い石のお墓が多く、関西の墓地に白い石のお墓が多いのは、その色の石が各地で採りやすかったのが一因です。

石工に関する国家資格があります

石工の仕事には、関連する国家資格が存在します。ただし、所持していなければ、石工として働けないわけではありませんので、技術力の裏付けとして紹介いたします。

石材施工技能士

石材施工技能士とは、各都道府県知事が認定する石材施工に関する国家資格です。1級と2級に分かれています。試験内容は、実際に石材を加工して制作物が評価される、実技形式です。一回の試験時間は、短いもので約3時間、長いものではなんと約6時間になります。合格するためには、体力が必要な作業を、試験場で何時間も続けなければいけないので、信頼性の高い資格です。

採石業務管理者

採石作業は、大岩を割るための道具や火薬を用いるため、細心の注意が必要になります。また、自然災害や事故の危険も高い場所です。危険防止に努めながら採石作業を監督していくのが「採石業務管理者」です。

また、国家資格ではありませんが、墓石に携わる石工は「お墓ディレクター」という資格を所持していることもあります。お墓ディレクターとは、「日本石材産業協会」が認定している資格で、墓石のことだけでなく、歴史や文化、供養に関する知識を習得している方に与えられる資格です。

お墓は石工たちの仕事の集合体です

本記事をまとめると、以下のようになります。

・石工には、採石場で働く「丁場の石工」と彫刻・施工を行う「石材店の石工」がいる
・石工の仕事には、責任感と繊細さが要求される
・石工の仕事は、手作業から機械に移りつつあるが、いずれにしろ高い技術力が必要
・石工に関連する国家資格もある。合格者の技術は信頼性がある

お墓に使われる石は、大地の一部だった岩から切り出され、多くの職人の努力と時間をかけてあなたのもとに届きます。今度お墓参りに訪れた際には、墓石をじっくり眺めたり、石肌を撫でたりして、石工たちの仕事の集大成をぜひあらためてご覧ください。