お役立ちコラム お墓の色々
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- 供養をきわめる -
日本の銘石をめぐる~愛媛県今治市・大島石
家族の心の拠りどころであるお墓は、日本の季節、土地や人に馴染んだ日本の石を選んでいただくのが一番です。ここでは、日本各地で産出される銘石をご紹介し、その魅力と背景にせまります。今回は愛媛県今治市の「大島石(おおしまいし)」です。
<<大島の地図画像>>
大島石の産地
本州と四国をつなぐ3本の連絡道路の最も西にあり、広島県尾道市と愛媛県今治市の間にある美しい島々を結んでいるのが西瀬戸自動車道・通称「しまなみ海道」です。全長約60kmある「しまなみ海道」では、瀬戸内海に浮かぶ島々の風景を心ゆくまで楽しむことができます。「サイクリングロード」も整備され、日本で初めて海峡を横断できる自転車道としても有名です。
大島石の産地である「大島」は「しまなみ海道」の最も南にあります。南北朝時代から戦国時代にかけて活躍した「村上水軍」ゆかりの島として知られ、周辺の島々は柑橘類の生産が盛んです。大島のとなりには「伯方の塩」で有名な「伯方島」があります。
大島石が採掘されているのは、大島の最高峰・標高381.9mある念仏山からカレイ山にかけての2~3kmの範囲内です。
大島石の特徴
大島石の最大の特徴は、花崗岩特有の雲母・石英・長石の配合が美しく、偏りの無い調和のとれた存在感と言われています。色は白すぎず黒すぎず、石目は細かすぎず粗すぎず、色褪せしにくい石肌です。むしろ時が経つにつれその青味が強くなり一層の深みが出てきます。色・艶・石目のすべてにおいて優れたバランスをもつ石材、それが100年品質と評される大島石です。
<大島石の石材物性データ>
■見掛け比重 2.649 t/㎥ ■吸水率 0.111% ■圧縮強度 117.99 N/m㎡
石の堅さ、吸水率の低さは、国産の花崗岩の中でもトップクラスで、長期にわたる品質の安定、研磨による光沢が優れていることを表しています。
お墓を建てた時に見ることができる、周囲を圧倒する気品と風格も大きな特徴です。お墓の経年劣化による退色が比較的少なく、長く品質を保つことができる墓石材といえます。
親から子へ、子から孫へ。次の世代にとって永く“心のよりどころ”となるお墓を作りたい方に、大島石はおすすめです。
大島石の採石
大島石は、日本でも有数の花崗岩山地である念仏山の周辺で採石されます。岩盤を下へ下へと掘り進む方式で、進められるのが特徴で、大変な危険と困難を伴うものです。轟音が鳴り響くジェットバーナーで炙られた石は真っ赤になり、石粉となって飛んでいき少しずつ石が切れていきます。
職人のひたむきさと石への想いが込められ採石された大島石は、強度だけでなく、時とともに深まる青い色や艶持ちの良さ、変色しにくさなどすべてにおいて優れた石質を持ちます。
大島石の歴史
大島石の歴史は古く、その始まりは江戸時代にまでさかのぼります。
慶長7年(1602年)に、藤堂高虎は徳川家康の命令を受け、伊予国今治に城を築きはじめ、慶長9年(1604年)に今治城は完成しました。築城にあたり、高虎が石積棟梁の1人に任命したのが、石積名人の治衛門です。豊臣秀吉の大阪城築城で腕を磨いた職人である治衛門たちは、石垣だけでなく秘密の抜け穴も造りましたが、その抜け穴の情報が漏れることを防ぐため、藩主より治衛門たちに処刑命令が出されてしまいます。
治衛門はなんとか難を逃れることができましたが、その末にたどりついたのが大島です。そこで埋もれていた良質の花崗岩の存在を知り、自らの技術を生かして切り出したことが、大島石のルーツであると言われています。
昔は機械や車がなく、大きな石を運ぶために多数の人手を必要とし、費用と日数がかかっていました。そこで活躍したのが船です。今では造船業が盛んな瀬戸内海ですが、昔は瀬戸内海の各丁場で切りだした石を船で運び、各地の城の普請に使っていたそうです。
明治の初期ごろになると、土木材料や築港の為の石材として、大島の石が産業として成り立ち始めます。
日清戦争に備えて整備された広島県呉市の軍港や、その他、大阪心斎橋や東京の赤坂離宮等でも大島石が使われました。今もその歴史の重みを感じる事が出来ます。
採石技術が進歩して採石量が増えたのは、昭和に入ってからです。大島石は一躍脚光を浴びるようになり、現在では関西、中国、四国地方で「お墓といえば大島石」と言われるほど絶大な信用と支持を得ています。
大島石はその調和のとれた存在感と、落ち着きと侘び寂びを感じさせる石目から、日本の精神文化の中心地である京都でも大変好まれました。各宗派の総本山や由緒ある寺院の墓地などでも、圧倒的な建立実績を誇っています。
著名人のお墓にも大島石は使われていて、作家の司馬遼太郎や歌人の正岡子規のお墓も大島石です。
◆著名人・偉人のお墓について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
「今こそお参りしたい偉人のお墓・東京編」
◆大島石の採石場の様子などがわかる動画もぜひご覧ください。
「日本のお墓「いい石この石」」