お役立ちコラム お墓の色々

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- 供養をきわめる -

お墓における上座・下座

墓地・墓石コラム

お墓における上座・下座

日本には上座・下座という席次における一般的なマナーがあります。自分が座る場所によって目上の人やお客様に敬意やおもてなしの気持ちを表す日本独特の文化です。
実はお墓にも上座・下座が存在します。今回は、上座・下座についての基本を振り返りつつ、お墓における上座・下座の考え方を見ていきます。

上座・下座のルール

基本的には入り口から遠い奥の席が上座となります。入り口側に近づくにつれて下座になります。ただし、部屋のレイアウトなどによって変わってくる場合もあります。ちなみに、床の間がある和室では、床の間を真後ろにした席が上座、出入口に近い席が下座になります。

日本の伝統「左上右下」

上座・下座の他に、日本では伝統的に「左上右下(さじょううげ)」という礼儀作法があります。

「左上右下」の考え方は飛鳥時代に遣唐使などを通じて中国から伝えられたと言われています。唐の時代、中国では「天帝は北辰(ほくしん)に座して南面す」との思想があり、左が上位として尊ばれました。皇帝は不動の北極星を背に南に向かって座るのが善しとされ、皇帝から見ると、日は左側の東から昇り、右側の西に沈みます。日の昇る東は沈む西よりも尊いとされ、そのために右よりも左が上位とされました。

この「左上位」は、正面から見ると、右が上位となって左右の序列が逆になりますが、あくまでも並ぶ当事者から見て左側を上位(高位)とします。演劇などの舞台で、左側(客席から見ると右側)を「上手(かみて)」、右側を「下手(しもて)」と呼ぶのも、左上位に基づいたものです。

こんなところでも「左上位」

左上位は日常生活のしきたりにも浸透しており、代表例は和服の着方である「右前」です。自分から見て左襟を右襟の上にして着る作法で、左襟が右襟よりも前に(正面から見ると、右側の襟が前になる)なります。なお、死に装束はその逆の「左前(右襟が左襟より前)」です。

ふすまや障子のはめ方も、ふすまや障子から見て左側を前にするのが鉄則です。
雛人形も、伝統的な“京雛”では、お内裏様(天子)を正面に向かって右側(人形から見て左側)に置きます。

欧米の場合

英語で右を「right=正しい」と言うように、欧米では日本の礼法とは逆の「右を上位、左を下位」とする「右上位」が基本です。これが近現代史の流れの中でそのまま国際間の付き合いのルール(国際儀礼=プロトコル)となっています。日本でも皇室をはじめ一部行事において国際儀礼を取り入れており、外交などの国際舞台でも右上位をマナーとしています。

お墓における上座・下座

お墓の場所、墓誌の位置

お墓も通常は区画内の入口から一番遠いところにお墓を置きます。

一つの墓地に複数のお墓を建てる場合は、正面から見て、ご先祖様のお墓を右側(お墓から見て左側)、新しく建てるお墓が左側(お墓から見て右側)となります。五輪塔を一緒に建てる場合は、五輪塔が上座、つまり向かって右(お墓から見て左)に建てます。

例えば、同一区画内に「先祖供養塔」「祖父母の墓」「父母の墓」を建てる場合は、最上座となる右奥に「先祖供養等」を建て、向かって左隣から順に「祖父母の墓」「父母の墓」と続きます。

水子地蔵尊を建てる場合は、不幸な出来事が二度と起こらないようにと願い、逆死留めの意味を込めて水子地蔵尊は最下座になります。

また墓誌(法名碑)と脇台(物置台)の位置ですが、戒名などを記す墓誌を上位とし、正面から見て右側に墓誌を置き、脇台を左側に置きます。

お墓の向きは?

上座・下座の話からは少し外れますが、仏教の「西方浄土」という言葉から、「お墓は西向きが良い」「いや、西に向かって手を合わせられるように東向きが良い」という話を聞いたことがあるかと思います。
仏教には六向拝(ろくこうはい)という考え方があります。「六向」とは東西南北上下を指すのですが、そのいずれも尊崇されるべきであるとする考えです。つまり、方角に尊卑や優劣、吉凶を付けて序列化するようなことは仏教にはありません。
仏教的な原則に立てば、お墓をどちら向きに建てるか?ということは、特別に気にする必要はないのでしょう。

文字を彫る場所

墓石には文字を彫りますが、その場所にも上座・下座が存在します。竿石の正面が上座となり、次いで竿石側から見て左側面、そして竿石側から見て右側面へと続きます。そのため、「南無阿弥陀佛」や「南無釈迦牟尼仏」などのお題目や、「○○家之墓」は正面に刻まれることが多くなります。

続いて「先祖代々之墓」「初代(家を興された方)」もしくは「目上の方」のお名前を竿石側から見て左側面に、「お墓を建てた方」または「お墓を継ぐ方」のお名前を竿石側から見て右側面に刻むことが多いです。ただし、あくまでも世間一般で多くみられるケースですので立地条件や諸事情によって、右もしくは左側面に何も刻まず、背面に刻む場合もあります。

洋型墓石の場合も正面が上座であることは変わりませんが、左右の側面が狭いため、背面に名前を刻むことが多くなっています。

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まとめ

普段何気なく見ているお墓も、意識をして見つめてみると、ご先祖様や、仏様に対する敬意や感謝の気持ちが、お墓でも上座・下座という形で表れていることがわかります。ただ、方角のように解釈や考え方の違いがある場合も当然あります。迷われることがあった時は、ご自身・ご家庭の事情や周りのお墓の状況を踏まえ、墓地管理者や墓石店に相談してみると良いでしょう。