お役立ちコラム お墓の色々

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宗教による葬儀とお墓の違い・黄檗宗編

葬祭基礎知識

宗教による葬儀とお墓の違い・黄檗宗編

宗教はもとより、宗旨によっても葬儀やお墓に違いがあります。これは、同じ宗教であっても、宗旨によって教理や信仰対象、よりどころとするお経や作法に違いがあるからです。

今回は黄檗宗(おうばくしゅう)の特徴と、それに由来する葬儀やお墓の特徴をご紹介いたします。

黄檗宗とは

黄檗宗は、臨済宗・曹洞宗と共に日本の三禅宗の1つに数えられる宗派です。江戸時代初期に来日した中国僧「隠元隆琦(いんげんりゅうき)禅師」を開祖とします。元は中国の臨済宗の一派で、当初は「臨済宗黄檗派」などと称していましたが、明治9年に一宗として独立し「黄檗宗」を公称するようになりました。

今日の臨済宗の教えと共通する部分が多く、師から示された公案を解いて悟りに到る「看話禅(かんわぜん、かんなぜん)や、坐禅といった「行」を大切にしています。

その一方で、坐禅にプラスして念仏をとなえる「念仏禅」を行うことが特徴です。

また、他の2つの禅宗と黄檗宗との大きな違いは、中国的な特徴を色濃く残していることです。

江戸初期から中頃にかけて、黄檗宗の総本山・黄檗山萬福寺(京都府宇治市)の住職は、ほとんどが中国から渡来した僧侶が務めていました。朝夕のおつとめをはじめとする儀式作法や法式梵唄(ほうしきぼんばい:太鼓や銅鑼など様々な鳴り物を使い読まれる、黄檗宗独特の節のあるお経)にはその伝統が受け継がれ、今日の中国・台湾・東南アジアにある中国寺院で執り行われている仏教儀礼と共通する部分が数多く見られます。

黄檗宗の教え

禅宗では、自分の心の中に存在している阿弥陀仏に気づくことを根本的な目的とし、そのために必要なのが「坐禅」とされています。

黄檗宗には、人は生まれつき悟りを持っているとされる「正法眼蔵(しょうほうげんぞう)」という考えがあります。曹洞宗の開祖・道元禅師の大著の名前にもなっているこの言葉には「真理にたどり着くために必要なのは、自分自身の心に向き合うこと」という教えが表れています。

また黄檗宗には「この世の中に存在するのは心だけで、目で見えるすべての物事や起こる現象は、心の働きがもたらしたもの」という「唯心(ゆいしん)」の教えがあります。私たちの心の中にこそ阿弥陀様がおられ、極楽浄土を見出せるとされています。

黄檗宗の葬儀の特徴

法式梵唄(ほうしきぼんばい)

黄檗宗では「法式梵唄(ほうしきぼんばい)」と呼ばれる、独特のお経の読み方があります。法式梵唄は、法要の最初に読まれる香讃(こうさん)や、黄檗宗で日常的に読まれている禅林課誦(ぜんりんかじ)といった経典を、4拍子を基本としたリズムで、節をつけてテンポよく読みます。
それに合わせて、木魚(もくぎょ)や太鼓、ドラといった、楽器のような法具をたくさん用いて経典を読むため、音楽のような読経となっています。
法式梵唄は全て立って行われますが、これは中国には床に座る習慣がないためです。

唐音(とうおん)

中国の様式を随所に残している黄檗宗では、お経の読み方も日本風ではなく、唐音(とうおん)で読まれます。唐音は、禅宗の僧侶によって鎌倉時代に伝えられた中国南方の読み方です。同じ禅宗の曹洞宗や臨済宗では「漢音(かんいん)」という読み方をしますが、黄檗宗はこの唐音で読むため「南無阿弥陀仏」は「ナムオミトフ」、「魔訶般若波羅蜜多心経」は「ポゼポロミトシンキン」と読まれます。その為、同じお経でも臨済宗と黄檗宗では全く違うお経に聞こえます。

木魚

黄檗宗の特徴ではありませんが、現在ではほとんどの宗派で使用されている木魚は、実は黄檗宗が開かれる前までは、日本では使われていませんでした。
当初は、黄檗宗だけがお経を読む時に木魚を用いていましたが、複数人でお経を唱える時にお経がよくそろうといった理由などから、後に臨済宗をはじめ、多くの宗派で使われるようになりました。

黄檗宗の作法

焼香

基本的な流れは他の宗派と大きな違いはありません。
まずは祭壇の前で遺影と遺族に向かい礼をします。焼香台に進み、人さし指と中指、親指の3つで抹香をつまみます。そのまま額に押しいただいたら香炉にくべます。これを3回繰り返し、終わったら手を合わせ、遺影と遺族に礼をし、席へ戻ります。

精進料理

精進落としの際にふるまわれることの多い精進料理も中国式となっており、普茶(ふちゃ)料理と呼ばれています。
普茶は「普く(あまねく)大衆に茶を供する」がその名の由来で、茶で接待するという意味があります。普茶料理は、黄檗宗の開祖である隠元禅師によって江戸時代初期に伝えられました。
普茶料理は栄養価も高く彩りがきれいであるのが特徴です。さらに一つの座卓を皆で囲み、大皿料理を分けながら食べるという中国式の作法でいただきます。普茶料理では炒めたり揚げたりという中国式の調理技術が使われており、伝来当初の日本では馴染みの無かった油の利用を広めたともいわれています。

数珠

禅宗の宗派では、108個の玉と親玉を繋いだシンプルな看経(かんきん)念珠が正式念珠となります。黄檗宗で用いられる看経念珠は、108個の玉と2個の親玉で作られ、10個ごとの記子(きし)がつけられているのが特徴です。

黄檗宗のお墓

黄檗宗では、お墓の形に決まりはなく、墓石の正面に刻む文字にも決まりはありません。
和型墓石の場合、一般的に「△△家先祖代々之墓」や「△△家累代(るいだい)」というように、家名が刻まれます。
また黄檗宗では「南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)」という言葉を刻む場合もあります。「南無釈迦牟尼仏」とは、「お釈迦様を信心します」という意味の言葉です。

他にも、禅宗でよく見られる成仏することをあらわした「円相(えんそう)」という〇印を文字の頭に刻むこともあります。「〇 △△家先祖代々之墓」といった要領で刻みます。

五輪塔の場合は、「空」「風」「火」「水」「地」のそれぞれをあらわす梵字(ぼんじ)を、上に積まれた石から順番に刻みます。

まとめ

今回は黄檗宗の特徴と、それに由来する葬儀やお墓の特徴をご紹介いたしました。同じ仏教でも他の宗旨との教えの違い、そしてそれに伴う葬儀や作法、お墓の違いを見ることができたと思います。

黄檗宗は禅宗の中でも比較的新しい宗派で、中国様式がふんだんに取り入れられていため、他の禅宗とは違った作法も多くあります。不明な点があれば寺院や石材店などの専門家に相談してみましょう。