お役立ちコラム お墓の色々
お役立ちコラム お墓の色々
- 供養をきわめる -
在来仏教とはどの宗派のこと?
霊園などの案内に「在来仏教であれば宗旨・宗派は問いません」「在来仏教に限る」と書かれてある場合があります。
これは、お墓を建てる条件として「在来仏教」であることを示しているわけですが、「在来仏教」とは一体何を指すのでしょうか。
在来仏教とは
在来仏教とは一般的に以下にあげた13の宗派を指します。
(※五十音順)
(1)黄檗宗(おうばくしゅう)
黄檗宗は、臨済宗・曹洞宗と共に日本の三禅宗の1つに数えられる宗派です。江戸時代初期に来日した中国僧「隠元隆琦(いんげんりゅうき)禅師」を開祖とします。元は中国の臨済宗の一派で、当初は「臨済宗黄檗派」などと称していましたが、明治9年に一宗として独立し「黄檗宗」を公称するようになりました。
※黄檗宗の葬儀とお墓の詳細は、下記の記事をご覧ください。
◆宗教による葬儀とお墓の違い・黄檗宗編
(2)華厳宗(けごんしゅう)
華厳宗は、中国大乗仏教の宗派のひとつであり、開祖は杜順(と じゅん)です。『大方広仏華厳経』を所依の経典として、独自の教学体系を立てた宗派です。韓国、日本、ベトナムにも広まり、日本には736年に伝えられました。
(3)時宗(じしゅう)
時宗は、一遍上人(いっぺんしょうにん)を宗祖、真教上人(しんきょうしょうにん)を二祖とし、両祖の教えを基に、名号「南無阿弥陀仏」を拠りどころにする浄土教の一流です。
鎌倉仏教の1つに数えられ、神奈川県藤沢市の清浄光寺が総本山となっています。
(4)浄土宗(じょうどしゅう)
浄土宗は鎌倉時代に成立した仏教の1つで、法然(ほうねん)を開祖とします。阿弥陀如来を本尊とし、総本山は京都府京都市にある知恩院です。知恩院は法然が半生を過ごし、最後を迎えた場所でもあります。
※浄土宗の葬儀とお墓の詳細は、下記の記事をご覧ください。
◆宗教による葬儀とお墓の違い・浄土宗編
(5)浄土真宗(じょうどしんしゅう)
浄土真宗は鎌倉時代に成立した仏教の1つです。浄土宗の開祖である法然の弟子・親鸞(しんらん)聖人が開きました。
浄土真宗では信者の事を「門徒」と呼び、本願寺派の約700万人、真宗大谷派の約550万人を含め、浄土真宗全体の門徒数は約1200万人以上に上ります。
寺院数も22,000寺以上を数え、日本の仏教諸宗の中では最多です。
※浄土真宗の葬儀とお墓の詳細は、下記の記事をご覧ください。
◆宗教による葬儀とお墓の違い・浄土真宗編
(6)真言宗(しんごんしゅう)
真言宗は、“お大師さま”として親しまれている弘法大師/空海が、平安時代初期に体系化した「真言密教」を教義とする宗派です。
真言宗の密教は東密(とうみつ)と呼ばれ、同じ密教である天台宗は台密(たいみつ)と呼ばれます。天台宗では密教と顕教を同格に扱う点(顕密一致)が真言宗との大きな違いです。
※真言宗の葬儀とお墓の詳細は、下記の記事をご覧ください。
◆宗教による葬儀とお墓の違い・真言宗編
(7)曹洞宗(そうとうしゅう)
曹洞宗は禅宗の1つに数えられます。今から800年ほど前の鎌倉時代に、「道元禅師(どうげんぜんじ)」が、正伝の仏法を中国から日本に伝え、それを「瑩山禅師(けいざんぜんじ)」が全国に広め、その礎を築きました。
曹洞宗には大本山が2つあり、ひとつは福井県にある大本山永平寺(えいへいじ)、もうひとつは横浜市にある大本山總持寺(そうじじ)です。両大本山と呼ばれ、曹洞宗寺院の根本、信仰の源となっています。なお大本山の住職は、貫首「かんしゅ」と呼ばれます。
※曹洞宗の葬儀とお墓の詳細は、下記の記事をご覧ください。
◆宗教による葬儀とお墓の違い・曹洞宗編
(8)法相宗(ほっそうしゅう、ほうそうしゅう)
法相宗は、インド唯識派の思想を継承する、中国の唐時代創始の大乗仏教宗派の一つで、日本には、玄奘(げんじょう)に師事した道昭(どうしょう)が法興寺で広め、南都六宗の一つとして8〜9世紀に隆盛を極めました。法相宗の有名な寺院には、薬師寺・興福寺などがあります。
(9)天台宗(てんだいしゅう)
天台宗では「誰もが平等に成仏できる」という仏教思想の原点が説かれ、お釈迦さま一代の教えの中で最もすぐれたものとされる妙法蓮華経(法華経)を拠りどころとしています。
天台宗は、後に日本の仏教を代表する十三宗派を輩出したことでも知られ、信仰者の多い浄土真宗やその派生元である浄土宗、日蓮宗が教えを受け継いで誕生しました。また、禅宗の曹洞宗・臨済宗にも天台宗の教えが基盤にあります。
※天台宗の葬儀とお墓の詳細は、下記の記事をご覧ください。
◆宗教による葬儀とお墓の違い・天台宗編
(10)日蓮宗(にちれんしゅう)
日蓮宗は、鎌倉時代中期に日蓮聖人(にちれんしょうにん)によって開かれた宗旨です。
鎌倉仏教の一つに数えられ、お釈迦様の説かれた法華経(妙法蓮華経)(ほけきょう・みょうほうれんげきょう)をよりどころとします。法華経の功徳が込められているとされる「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」の7文字のお題目を心から信じて唱えることが仏となる唯一の道であるとしています。
※日蓮宗の葬儀とお墓の詳細は、下記の記事をご覧ください。
◆宗教による葬儀とお墓の違い・日蓮宗編
(11)融通念仏宗(ゆうずうねんぶつしゅう)
平安末期に大阪市の大念佛寺を総本山し、天台宗の影響を受けた宗派です。 念仏を善行の根源と捉え、口に出して唱えることで仏の功徳を得られるという教えがあります。
開祖は天台宗の僧侶である聖応大師良忍(せいおうだいし りょうじん)です。
(12)律宗(りっしゅう)
律宗は、戒律の研究と実践を行う宗派で、中国で道宣(どうせん)が成立させました。日本には鑑真(がんじん)が伝来させ、南都六宗の日本仏教の一つとなっています。
律宗の大本山は、京都にある壬生寺です。
(13)臨済宗(りんざいしゅう)
臨済宗は、禅宗の1つに数えられ、宗祖は中国の禅僧である臨済義玄(りんざい ぎげん)禅師です。日本には、宋時代の中国に渡り学んだ明庵栄西(みょうあん えいさい)らによって鎌倉時代以降に伝えられ、様々な流派が成立し、現在では主に14の諸派、約7000もの末寺があります。
※臨済宗の葬儀とお墓の詳細は、下記の記事をご覧ください。
◆宗教による葬儀とお墓の違い・臨済宗編
いずれも、明治の初めごろまでに日本に根付き今もなお活動を行なっている宗派です。
またこれらの宗派はさらに56の分派に分かれますが、それらもすべて在来仏教に含まれます。
つまり「在来仏教であれば宗旨・宗派は問いません」は、「在来仏教13宗56派のお墓であれば建てられます」との意味になるのです。
在来仏教に対して明治初期以降に現れた宗派については、一般的に「新興宗教」と呼ばれています。代表的なものは、創価学会や幸福の科学、弁天宗、阿含宗などです。
このように霊園や墓地によって、お墓を建てるにあたり宗旨や宗派に制限がある場合がありますので、事前に確認が必要となります。
「お墓を建てる条件」その他の表記
「在来仏教であれば宗旨・宗派は問いません」以外にも霊園や墓地が掲げる条件にはさまざまな表記があります。意味や解釈を間違えないように気をつけましょう。
「宗教不問」または「宗教自由」
「宗教不問」「宗教自由」と書かれてある場合は、お墓を建てるにあたり宗教についての制限がまったくない、との意味となります。仏教・神道・キリスト教はもちろん、その他の宗教や無宗教の人でも使用することができます。
なお、公営霊園は信教の自由という原則があるため「宗教自由」となっています。また、民営霊園の場合も「宗教自由」が多数派です。
「宗旨・宗派不問」
「宗旨・宗派不問」と書かれてある場合は、「仏教であればどの宗派でもよい」というのが本来の意味です。
ただ、実際には霊園・墓地によっては違う意味や解釈のもと、この表記が使われている場合があります。考えられるケースは次の3つです。
①「宗教不問・宗教自由」の意味で「宗旨・宗派不問」と表記しているケース
②在来仏教に限定されているケース
③過去の宗教(宗旨・宗派)は問わないケース
3つ目は「過去の宗旨・宗派(あるいは宗教)は問いませんが、お墓を建てた後はその寺院の宗旨に従って法要や供養を行うことが条件です」との意味です。
寺院墓地で「宗旨・宗派不問」を掲げている場合はこのケースが多く、特に「過去の宗旨・宗派を…」という表記がない場合が多くなっています。
「宗旨・宗派不問かつ改宗不要」
改宗不要とは「宗旨・宗教を変える必要はありません」という意味です。
しかし、寺院の境内にある墓地の一画を民営霊園としている場合は注意が必要となります。
なぜなら、たとえ他の寺院の檀家であったとしても、墓地内の法要などに関しては管理している寺院が行うケースが多いためです。
以上のように、表記だけでは実態がわからない、または解釈を誤るケースが少なくありません。表記を自分の解釈で鵜呑みにすることなく、事前に詳細を確認してから判断するようにしましょう。