お役立ちコラム お墓の色々

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- 供養をきわめる -

宗教による葬儀とお墓の違い・浄土真宗編

葬祭基礎知識

宗教による葬儀とお墓の違い・浄土真宗編

宗教はもとより、宗旨によっても葬儀やお墓に違いがあります。これは、同じ宗教であっても、宗旨によって教理や信仰対象、よりどころとするお経や作法に違いがあるからです。

今回は浄土真宗の特徴と、それに由来する葬儀やお墓の特徴をご紹介いたします。

浄土真宗とは

浄土真宗は鎌倉時代に成立した仏教の1つです。浄土宗の開祖である法然の弟子・親鸞(しんらん)聖人が開いた宗派が浄土真宗です。

浄土真宗の宗派は現在、真宗十派と呼ばれる真宗教団連合加盟の10の宗派と諸派に分流しています。

<真宗十派(新宗教団連合加盟宗派)>
・浄土真宗本願寺派(本山:本願寺、通称:西本願寺・お西)
・真宗大谷派(本山:真宗本廟、通称:東本願寺・お東)
・真宗高田派
・真宗佛光寺派
・真宗興正派
・真宗木辺派
・真宗出雲路派
・真宗誠照寺派
・真宗三門徒派
・真宗山元派

浄土真宗では信者の事を「門徒」と呼び、本願寺派の約700万人、真宗大谷派の約550万人を含め、浄土真宗全体の門徒数は約1200万人以上に上ります。
寺院数も22,000寺以上を数え、日本の仏教諸宗の中では最多となっています。

浄土真宗の教え

浄土真宗は阿弥陀仏による万人救済が唱えられた「他力本願」の教えであり、信心をもって往生すればすぐに成仏出来る「往生即成仏」という考え方が特徴となっています。

浄土真宗では南無阿弥陀仏と唱えます。お西とお東とで唱える節が若干異なり、お西は「なんまんだーぶ(高音域の上り調子)」、お東は「なんまんだんぶ(低音域の下げ調子)」です。

南無阿弥陀仏と唱えることが救われる道ではなく、絶対他力を説き、全てを阿弥陀仏に任せれば、その力で苦しみの元となる無明の闇が破られ幸せになれると説いています。

浄土真宗の葬儀

浄土真宗には「往生即成仏」の考え方があり、極楽往生のための「供養」や、成仏のための「修行」を必要としません。そのため、葬儀でも他の宗旨で見られるような「引導」や「授戒」がありません。

香典袋の表書きにも「御霊前」ではなく「御仏前」と書きます。

故人の往生を祈る「供養」という意味合いではなく、阿弥陀如来に故人の往生を託す、そして、故人が阿弥陀如来との接点を与えてくださったこと、阿弥陀如来の教えを受ける機会を与えてくださったことに感謝する意味合いで、浄土真宗の葬儀は行われます。

そのため、礼拝の対象も、故人ではなく阿弥陀如来に対してとなります。

葬儀での焼香の作法ですが、ご本尊の前で一礼し、お香を3本の指で摘むところまでは一般的なものと同じです。その後、本願寺派の場合はお香を額に押しいただかずそのまま1回だけ香炉にくべます。真宗大谷派は同様にして2回香炉にくべます。

浄土真宗独特の慣習

浄土真宗では収骨の際に大小の骨壷を用意し、小さい骨壷には喉仏を納め、大きい骨壷にはその他のお骨を納める場合があります。そして喉仏を納めた小さな骨壷を、浄土真宗の各本山に納骨します。本願寺派の場合は大谷本廟(ほんびょう)、大谷派では大谷祖廟(そびょう)となります。

浄土真宗のお墓

浄土真宗では「お墓=ご先祖様の魂が宿る場所」とは考えず、故人をしのびつつ、人間の命のはかなさや人々を救う阿弥陀仏の慈悲の力に気づかせていただける場所がお墓であると考えられています。

そのため、浄土真宗の門徒のお墓には「〇〇家之墓」や「先祖代々」ではなく、「南無阿弥陀仏」や「倶会一処(くえいっしょ)」と記されます。

倶会一処とは、『仏説阿弥陀経(ぶっせつあみだきょう)』に出てくる「倶(とも)に一つの処(ところ)で会(あ)う」というご文(もん)で、同じ阿弥陀仏の浄土でまた共に会わせていただくという意味です。

なお、「○○家之墓」という文字はお墓の台座に記される場合もあります。

「往生即成仏」の考えがあるため、「供養のための五輪塔」は不要という見解が一般的にあるようですが、浄土真宗の開祖・親鸞聖人のお墓は五輪塔というのは有名な話です。浄土真宗であっても、古くから五輪塔が建てられていることもあるようですので、開祖にならい五輪塔を建てることは可能です。

浄土真宗の法名

仏門に入り仏弟子になると、その証として名前が与えられます。その名前のことを多くの仏教宗派では「戒名」、日蓮宗では「法号」と呼びますが、浄土真宗では「法名」と呼びます。

また、お墓の横にある、故人や先祖の名や戒名を刻む石碑のことを浄土真宗以外の宗派では「霊標」「戒名板」といいますが、浄土真宗では「法名碑」といいます。

阿弥陀仏の力のことを浄土真宗では「法」と呼び、阿弥陀仏からいただく名前のことを「法名」と呼びます。ほかの宗派で使われている「戒」という言葉は、修行などによる自己研鑽を表しているため浄土真宗では使いません。

法名の上には、「釋(しゃく)」という「釈」の旧字が使われます。「釋」にはお釈迦様の弟子という意味があり、男性は「釋○○」、女性は「釋尼○○」と使います。近年は、男女で区別せず、女性でも「釋○○」を使うことも増えています。〇〇に入る文字は生前の名前などから文字を取って2文字にするのが一般的です。

社会に貢献した人や、お寺に寄与された方は院号付の法名を頂き、〇〇院釋〇〇と6文字で表します。

浄土真宗の塔婆供養

浄土真宗には「往生即成仏」の考え方があるため、故人の冥福を祈り、現世にいる人間が善行を積み供養をする「追善供養」は必要でないと考えます。卒塔婆を用いることもありません。同様の理由で、ご先祖様の霊魂が宿る位牌もお祀りしません。

また、お墓を建てたときや仏壇を建てたときなどに、故人の魂を墓石や仏様に宿すための法要を「開眼供養」と他の宗派では呼びますが、「往生即成仏」の浄土真宗では魂などの概念がないため「建碑法要(けんぴほうよう)と呼びます。

浄土真宗にとっての法要(初七日や一周忌など)は、葬儀などと同様に、追善供養の目的ではなく、阿弥陀仏の教えに触れるご縁の場となっています。

まとめ

今回は浄土真宗の特徴と、それに由来する葬儀やお墓の特徴をご紹介いたしました。同じ仏教でも他の宗旨との教えの違い、そしてそれに伴う葬儀や作法、お墓の違いを見ることができたと思います。

今回ご紹介したこと以外にも浄土真宗ならではの「呼び方」や「作法」「儀式」があり、また、門徒数が多いので地域ごとの風習による違いが色濃くなっています。不明なことがあれば、お近くの石材店や寺院など詳しい方にお尋ねすることをおすすめいたします。