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浄土真宗の「報恩講(ほうおんこう)」とは?

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浄土真宗の「報恩講(ほうおんこう)」とは?

仏教では、「報恩講(ほうおんこう)」という行事を行っている宗派があります。いくつかの宗派で行われている行事ですが、中でも浄土真宗の報恩講は毎年盛大に執り行われ、全国的にも広く知られています。
お祭りのように賑わうこともあるという報恩講とは、どのような行事なのでしょう。その由来にも触れながら解説します。

報恩講とは

報恩講とは、仏教各宗派における、御本尊、ひいてはその教えを広め導いてくれた開祖の恩に報いるため、その命日(忌日)に合わせて執り行われる仏教行事のことです。新義真言宗、天台宗などいくつかの宗派でも、開祖の命日に合わせて報恩講を営む寺院がありますが、特に浄土真宗の報恩講は規模が大きく、各地の寺院で行われたり、地域によっては自宅に身内が集って行われたりと、全国的に開催されていることで知られています。

浄土真宗の報恩講

浄土真宗の報恩講は、ご本尊である阿弥陀如来に感謝し、宗祖である親鸞聖人(しんらんしょうにん)への恩に報いるため、毎年その命日に合わせて行われています。浄土真宗の僧侶・門徒(信者)にとっては、年間行事の中でも一番と言われるほど重要視されている行事で、多くの僧侶・門徒が一堂に会し、仏堂の装飾も厳かにするなど、毎年盛大に執り行われています。

浄土真宗とは

浄土真宗は、鎌倉時代に親鸞が開いた仏教宗派の1つです。信者のことを「門徒」と呼び、門徒数は約1200万人以上、寺院数も22,000寺以上と、日本の仏教諸宗の中では最多となっています。
阿弥陀仏の力で万人が救済されるという「絶対他力」、故人は臨終後すぐに極楽浄土へ行き仏になるという「往生即成仏」の考え方があり、作法や仏事も、この考え方に沿ったものになっているのが特徴です。

報恩講の由来

報恩講は、永仁二年(1294年)、親鸞聖人のひ孫である本願寺第三代宗主(しゅうしゅ)の覚如上人(かくにょしょうにん)が、親鸞聖人の三十三回忌を本願寺にて勤めたことが由来とされています。
これに合わせて、覚如上人が親鸞聖人のご遺徳を『報恩講私記』(ほうおんこうしき)という書物がにまとめ、親鸞聖人の御真影(ごしんねい/影像のこと)の前で拝読したとされ、以来、報恩講が営まれるようになったと伝えられています。「報恩講」という名前も、『報恩講私記』の名から来ているようです。

報恩講の日程

本山に当たる大きな寺院

親鸞聖人は(弘長2)1262年11月28日に90歳で生涯を終えたとされています。
各宗派の本山で執り行われる報恩講は「御正忌(ごしょうき)報恩講」ともいい、親鸞の命日を最終日とした7日間と、その前日に行う逮夜(たいや)法要の日を合わせ、8日7夜にわたって営まれるのが基本となっています。お七夜(おしちや)、お七昼夜(おしちちゅうや)、御霜月(おしもつき)などとも呼ばれ、全国から多くの人がお参りに訪れます。
東本願寺などほとんどの宗派では11月21~28日に、西本願寺・高田派専修寺などでは旧暦の11月28日の時期に合わせて1月9~16日に執り行われます。

一般の寺院の場合

本山に当たらない一般的な寺院では、上記の本来の報恩講の期間中ではなく、時期を前倒しして行うところがほとんどです。これは、本来の期間には本山に出向く慣わしがあり、時期が重ならないようにするためです。当日より前に取り越して勤める、日程を引き上げて勤めるという意味から、「お取越(おとりこし)」、「お引上(おひきあげ)」「引上会(いんじょうえ)」などと呼ばれます。地域によっては「ほんこさま」と呼ばれて親しまれているところもあります。

各家庭の場合

報恩講の時期は、各家でも仏壇を飾り、手を合わせます。寺院や地域にもよりますが、僧侶が各家を回って念仏を唱えるところや、一つの家に集まってそこへ僧侶に来てもらう形を取るところもあります。このようなお参りも、一般の寺院と同じように、本山の報恩講の期間と重ならないよう前倒しで行われます。

報恩講の様子

報恩講は、初日の午後に執り行う逮夜(たいや)法要に始まります。これは仏教において、1日を6つに分け、日没である逮夜を法要の始まりとする考え方があるためです。そして翌日からは日中法要も営まれ、期間中は、毎日の法要に合わせて法話や集会があるのが一般的です。

本山などの大きな寺院では、全国から僧侶や門徒・信徒が集まって特別講演会が開かれることもあります。また、チャリティーイベントや作品展・物産展が開かれるなど大いに賑わい、地域全体のお祭りとして親しまれているところもあるようです。

寺院によっては、「お斎(おとき)」という、精進料理をいただく会食の席を儲けているところもあります。
「斎(とき)」とは、仏事の際にいただく食事のことです。昔は仏事の際に人々が米や野菜などを持ち寄り、調理して頂いていたことから、生きることにつながる食事の大切さに気づかせていただくという意味も込め、精進料理などの食事が振る舞われます。

まとめ

今回は、浄土真宗の寺院で全国的に執り行われる「報恩講」について解説しました。僧侶だけでなく門徒・信徒が全国から集まり毎年行われている行事であり、信じる者全てを救うという阿弥陀如来や、その教えを伝えた親鸞聖人への感謝の形が、現在まで大切に受け継がれてきたことが伺えます。

家族や先祖、その他たくさんの人や命に感謝し、恩に報いる気持ちは、自分自身を含めたあらゆる命を大切にする心を育て、私たちの日常をより豊かにしてくれます。日頃から、そのような気持ちを忘れないためにも、節目の時期には、お墓参りなどご先祖さまに手を合わせる機会を作り、日頃の感謝を伝えてみてはいかがでしょうか。

宗派による葬儀やお墓の違いについてまとめた記事もありますので、合わせてお読みください。
宗派によるお墓の違い一覧
宗教による葬儀とお墓の違い・浄土真宗編

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