お役立ちコラム お墓の色々

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宗派によるお墓の違い一覧

葬祭基礎知識

宗派によるお墓の違い一覧

同じ仏教の中でも、その宗派によってお墓や作法に違いがあります。なぜなら、宗旨やそのよりどころとする経(お経・経典)に違いがあるためです。

ここでは、各宗派のお墓の違いをピックアップしています。それぞれの特徴をぜひ見比べてみてください。より詳しく知りたい方のために詳細記事へのリンクもあります。

臨済宗

臨済宗(りんざいしゅう)は、鎌倉時代以降に伝えられた禅宗の1つです。

臨済宗のお墓は、禅宗の特徴である「円相」を墓石の竿石部分に刻むことがあります。円相は悟りや心理などを円形によって表現したもので、「○○家之墓」の上部に彫刻されることが多いです。他にも、ご本尊である「南無釈迦牟尼仏」と刻むお墓もあります。

五輪塔は梵字で上から「空・風・火・水・地」と刻みます。

ただ、お墓の形態について厳格な決まりはなく、和型以外の洋型やデザイン墓石でも問題ありません。

◆宗教による葬儀とお墓の違い・臨済宗編

曹洞宗

曹洞宗(そうとうしゅう)は、鎌倉時代に日本に伝わった臨済宗とならぶ禅宗の1つです。

曹洞宗のお墓にも、墓石に円相を刻むことがあります。一円相(いちえんそう)とも呼ばれ、仏・心の本来の姿・悟り・完全といった意味を示すものです。故人が悟りを開き、「完全な仏性となって成仏した人」であることを表します。円相はお墓に刻む以外にも、塔婆のいちばん上に描いたり、葬儀の引導のときに空中に描いたりすることがあります。

曹洞宗でも五輪塔を建てることがあり、刻む文字は梵字で「空・風・火・水・地」というのが一般的です。

◆宗教による葬儀とお墓の違い・曹洞宗編

黄檗宗

黄檗宗(おうばくしゅう)は、臨済宗・曹洞宗と共に日本の三禅宗の1つに数えられる宗派で、坐禅にプラスして念仏をとなえる「念仏禅」が特徴です。また中国的な特徴を色濃く残しています。

お墓の形や墓石の正面に刻む文字に決まりはなく、和型墓石の場合で一般的に刻まれるのは「△△家先祖代々之墓」や「△△家累代(るいだい)」といった家名です。
また「お釈迦様を信心します」という意味の言葉「南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)」を刻んだり、他の禅宗と同じように「円相」を文字の頭に刻むこともあります。

五輪塔は「空・風・火・水・地」のそれぞれをあらわす梵字を、上に積まれた石から順番に刻みます。

◆宗教による葬儀とお墓の違い・黄檗宗編

日蓮宗

日蓮宗は、鎌倉時代中期に日蓮聖人によって開かれた宗派です。「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」の7文字のお題目を心から信じて唱えることが、仏となる唯一の道であるとしています。

お墓に刻まれることが多いのは「南無妙法蓮華経」や「妙法○○家先祖代々之墓」などです。その際「南無妙法蓮華経」の「法」以外の6字の端の部分を、長くひげのように伸ばして書いた「髭題目(ひげだいもく)」と呼ばれる文字を記します。

そして、側面または裏面には、建立年月日、建立者、法号などを刻みます。法号とは、他宗旨でいう「戒名・法名」のことです。

◆宗教による葬儀とお墓の違い・日蓮宗編

天台宗

天台宗は中国を発祥とし最澄(さいちょう)が日本に伝えた大乗仏教の宗派のひとつです。「さまざまな仏さまは釈迦牟尼仏が姿を変えて現れたものである」と考えるため、多くの仏さまを等しく祀ります。

お墓の形や墓石に刻む文字に決まりはありませんが、基本的には、法華経に由来する「南無阿弥陀仏」や「南無釈迦牟尼佛」、そして「〇〇家之墓」とすることが多いです。

また、大日如来をあらわす梵字「ア」や、釈迦如来をあらわす「バク」、阿弥陀如来をあらわす「キリーク」が多く使われています。梵字は文字の頭に入れ「梵字+〇〇家先祖代々之墓」と入れるのが一般的です。

五輪塔には、禅宗系にみられる、下から「地・水・火・風・空」の梵字、日蓮宗にみられる「妙・法・蓮・華・経」のどちらかを多く用います。

◆宗教による葬儀とお墓の違い・天台宗編

真言宗

真言宗は、弘法大師/空海が、平安時代初期に体系化した「真言密教」を教義とする宗派です。

お墓には一般的に「〇〇家之墓」や、成人の場合は大日如来をあらわす梵字「ア」を、15歳以下の子どもの場合は、地蔵菩薩を示す「カ」を文字の頭に刻みます。

また「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」と刻むこともあります。「南無大師遍照金剛」とは、真言宗で唱えられる一番短いお経で「弘法大師空海に帰依(信心)します」という意味です。

なお、日本で古くからお墓や供養塔として作られていた五輪塔は、大日如来を象徴するもので、真言密教の思想から生まれました。日本の供養塔・お墓として今もなお宗派を超えて用いられています。

◆宗教による葬儀とお墓の違い・真言宗編

浄土宗

浄土宗は法然を開祖とする鎌倉時代に成立した仏教の1つです。

浄土宗のお墓は、正面に「南無阿弥陀仏」や「俱会一処(くえいっしょ=同じ阿弥陀仏の浄土でまた共に会わせていただくという意味)」、または阿弥陀如来を表す梵字(ぼんじ)を家名の上に刻むのが特徴です。

また、戒名に「誉」の文字を刻む場合もあります。「誉号(よごう)」と呼ばれるもので、一般的に2大法要である授戒・五重相伝(浄土宗の最も大切な教えを五つの段階に分けて、順序よく理解しやすく伝える法要)を受けた故人に授与されています。

浄土宗の五輪塔は梵字を刻まずに、上から「南無・阿・弥・陀・仏」と刻む場合があります。

なお墓石の形や色などは特にしきたりなどはありません。

◆宗教による葬儀とお墓の違い・浄土宗編

浄土真宗

浄土真宗は鎌倉時代に親鸞(しんらん)聖人が開いた仏教の1つです。

浄土真宗では「お墓=ご先祖様の魂が宿る場所」とは考えません。お墓を「故人をしのびつつ、人間の命のはかなさや人々を救う阿弥陀仏の慈悲の力に気づかせていただける場所」と考えるため、お墓には「南無阿弥陀仏」や「倶会一処(くえいっしょ)」と記します。「○○家之墓」という文字がお墓の台座に記される場合もあります。

また「往生即成仏」の考えがあるため、「供養のための五輪塔」は不要という見解が一般的にあるようです。ただ「浄土真宗の開祖・親鸞聖人のお墓は五輪塔」というのは有名な話であり、浄土真宗であっても、古くから五輪塔が建てられていることもあるようですので、開祖にならい五輪塔を建てることは可能です。

◆宗教による葬儀とお墓の違い・浄土真宗編