お役立ちコラム お墓の色々

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- 供養をきわめる -

宗教による葬儀とお墓の違い・真言宗編

葬祭基礎知識

宗教による葬儀とお墓の違い・真言宗編

宗教はもとより、宗旨によっても葬儀やお墓に違いがあります。これは、同じ宗教であっても、宗旨によって教理や信仰対象、よりどころとするお経や作法に違いがあるからです。

今回は真言宗の特徴と、それに由来する葬儀やお墓の特徴をご紹介いたします。

真言宗とは

真言宗は、“お大師さま”として親しまれている弘法大師/空海が、平安時代初期に体系化した「真言密教」を教義とする宗派です。

真言密教の「真言」とは、仏の真実の「ことば」を意味します。
そして「密教」は、お釈迦さまの教えを広く民衆に分かりやすく説いて明らかにする「顕教(けんぎょう)」とは対となる、閉ざされた師弟関係によって口伝された「秘密の教え」のことです。

真言宗の密教は東密(とうみつ)と呼ばれ、同じ密教である天台宗は台密(たいみつ)と呼ばれます。天台宗では密教と顕教を同格に扱う点(顕密一致)が真言宗との大きな違いです。

真言宗の教え

真言宗には、密教と顕教を大きく隔てる「即身成仏(そくしんじょうぶつ)」という考え方があります。

これは、悟りに到達するまで、輪廻転生などを経て長い時間をかけなければならないとする顕教に対し、密教ではその肉体のままで究極の悟りを開き、仏となることができるという教えで、真言密教の根幹となっています。

この即身成仏をするために、「入我我入(にゅうががにゅう)」と呼ばれる大日如来と一体となった状態を目指し、自らの身体、言葉、心という三つのはたらきを、大日如来と合致させる修行を行います。

具体的には「三密加持(さんみつかじ)」という修行で、手に仏の象徴である印を結び(身密/しんみつ)、口に仏の言葉である真言を唱え(口密/くみつ)、心を仏の境地に置き(意密/いみつ)ます。身密・口密・意密をあわせて三密といいますが、これは大日如来のはたらきは通常の人間の思考では計り知れない密なるもの、という意味によるものです。

この修行によって授かる功徳の力と、大日如来の加護の力(加持力)が同時にはたらいて互いに応じ合う時、即身成仏が可能になると空海は説いています。

真言宗の葬儀とは

真言宗の葬儀は、故人を密厳浄土(みつごんじょうど)という大日如来のいる仏の国に送り届けるための儀式として解釈されています。

密厳浄土とは、太陽である大日如来を中心とし、その周りに何重にも重なって、仏の居る層や人間の居る層などが存在すると考えられています。その密厳浄土に故人を送り届けるために、今世で身についてしまった悪い考えや習慣などを葬儀によって浄化し、仏様の加護を得られるように供養をし、閻魔様などの十人の裁判官に裁かれる際に、大日如来の加護を得られるように取り計らいます。

真言宗の葬儀の特徴

お経

一刻も早く故人に真言の教義を教え、仏弟子にする(速疾成仏/そくしつじょうぶつ)ために、お経は、早口かつ小さな音で読まれます。

土砂加持(どしゃかじ)

真言宗では、納棺の際に「土砂加持」が行われる場合があります。
土砂加持は、生前の罪を浄化し成仏に近づくために行われる儀式で、清水、護摩(火)、「光明真言(こうみょうしんごん)」(短いお経)によって洗い清められた土砂を、僧侶が遺体に振りかけます。実際に故人の身体に振りかけられるのはごく少量の砂です。

灌頂(かんじょう)

故人に自己の死を認識させ、この世からあの世へ送り出すための区切りとして行われる「引導」の儀式の際に、灌頂が行われます。
灌頂は故人の頭に水をそそぎかけるもので、空海が中国にて密教を授かった際に行なわれたことに由来し、これにより、故人は大日如来と一体化するものとされています。

真言宗の作法

焼香

真言宗では焼香の回数を3回とし、額の高さまで上げておしいただきます。3回行う理由については諸説ありますが、以下の理由が主に挙げられます。

①大日如来、空海、先祖に向けるという意味
②三宝(仏、法、僧)に捧げる意味
③身口意(行動、言葉、気持ち)を浄める意味

お線香も同じく3本手向けることが基本となっています。

数珠

真言宗の葬儀で使われる数珠は、振分数珠と呼ばれ、二重にして使用するほどの長さが特徴です。108個ある主玉に親玉が2個、四天玉が4個、弟子玉20個や浄名玉1個などがつき、両端に梵天房が2本ずつある本連数珠が、正式なものとして広く使われています。持ち方は、房を外に出して両手の中指にまっすぐに架け渡し、そのまま合掌します。頻繁に両手をこすり合わせてジャラジャラと音を立てるのも真言宗の特徴です。108個の玉を鳴らす事で108個の煩悩を払う、という意味があります。使わない時は二重にして手のひらにかけ、親指で押さえるようにしておきます。

真言宗のお墓

日本の伝統的なお墓として、縦長の直方体の墓石があげられますが、この形態の墓石が庶民に浸透したのは江戸時代以降といわれていて、日本で古くからお墓や供養塔として作られていたのは五輪塔です。

五輪塔は下から、方形の地輪(ぢりん)、円形の水輪(すいりん)、三角の火輪(かりん)、半円形の風輪(ふうりん)、宝珠形の空輪(くうりん)という5つの部位で構成され、五大(ごだい)と呼ばれる地・水・火・風・空を表し、大日如来を象徴するもので、真言密教の思想から生まれた形です。

この五輪塔は空海入滅から300年経った平安時代後期から作られ、のちに「真言宗中興の祖」と呼ばれる覚鑁(かくばん)上人が広めました。当初は一部の貴族のためのものでしたが、その後、鎌倉時代から戦国時代にかけて武将の間で普及し、やがて庶民にも広まり、日本の供養塔・お墓として今もなお宗派を超えて用いられています。

なお、真言宗では墓石に刻む文字に決まりはありません。

一般的には、「〇〇家之墓」や、宗派で使われるお経、念仏の言葉などが刻まれます。
他には、成人の場合は大日如来をあらわす梵字「(ア)」を、15歳以下の子どもの場合は、地蔵菩薩を示す「カ」を文字の頭に刻むことがあります。例えば「梵字+〇〇家之墓」というように刻みます。

また、「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」と刻むこともあります。「南無大師遍照金剛」とは、真言宗で唱えられる一番短いお経です。「大師遍照金剛」とは空海のことで、「南無」とは帰依する・信心するといった意味となり、つまり「南無大師遍照金剛」とは、「弘法大師空海に帰依(信心)します」という意味になります。

まとめ

今回は真言宗の特徴と、それに由来する葬儀やお墓の特徴をご紹介いたしました。同じ仏教でも他の宗旨との教えの違い、そしてそれに伴う葬儀や作法、お墓の違いを見ることができたと思います。

真言宗は主だった宗派が16、本山が18ヵ寺あり、地域や寺院によってもしきたりが違う場合があります。今回ご紹介したことを参考にしつつ、葬儀やお墓を建てる際などは寺院や近隣の葬儀社、石材店などの専門家にも相談してみましょう。