お役立ちコラム お墓の色々

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- 供養をきわめる -

お焼香の正しいやり方や回数は?作法やマナーついて解説します

葬祭基礎知識

お焼香の正しいやり方や回数は?作法やマナーついて解説します

通夜や葬儀・法事において行われる焼香(しょうこう)は、参列者一人一人が故人と向かい合い、香を焼(く)べて手を合わせる、重要な供養の儀式です。しかし、その方法や作法について教わる機会はあまりないため、「子どもの頃に大人の振る舞いを見て覚えただけで、きちんと教わったことがない」、「なんとなく周りの方と同じようにやっているけれど、正しいかどうか自信がない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

大切な方とのお別れの場で、故人やご遺族への気持ちをきちんと表すためにも、基本の作法は押さえておきたいものです。今回は、焼香の意味や作法・マナーについて、宗派ごとの違いも交えながら紹介していきます。

焼香とは

焼香とは一般的に、仏式の葬儀や法要などにおいて、複数の香木・香料を細かく砕いて混ぜ合わせたお香(「抹香」「焼香」「刻み香」とも呼ばれる)を焼べて、故人や仏様に対して供香(くこう、ぐこう/お香をお供えする)しつつ手を合わせて拝む供養の儀式のことを言います。

拝む際にお香を炊く風習はインドが起源と言われています。日本には6世紀半ばである飛鳥時代に仏教と共に伝わり、今のように細かく砕いたお香を焚くやり方は、様々な宗派が確立されていった鎌倉時代に広まったとされています。お香はその後も用途に合わせて改良され、その中で生まれた「線香」は現在もお墓や仏壇で日常的に使われていますが、特に大切な儀式とされる通夜や葬儀、法要などでは、「本来の焼香」ということで、昔ながらの作法が受け継がれているようです。

焼香の意味

焼香には、その香りによって、焼香する側や周囲の穢れを祓い、心身を清めるという意味があり、心を整えて供養に専念するために重要な儀式の一つとされています。

また、仏教において、極楽浄土は良い香りに満ちており、仏様は良い香りと共に故人を迎えにいらっしゃるとされていること、香りと共に立ち上る煙も、あの世とこの世をつなぐと考えられていることから、その香りと煙により故人が迷わず極楽浄土へ辿り着くことができるようにとの祈りを込めて、焼香を行うとされています。

さらに仏教では、香りは仏様の食べ物と考えられていることから、故人や仏様への供物として香りをお供えするという意味もあるようです。

その他、焼香の香りが隅々まで広がる様子から、仏教の教えの広がりや、仏様の慈悲の心を表しているという説や、お香がいずれ灰になり香りも消えていくことから、すべてのものに永遠はなく移り変わるという、平家物語の冒頭でも有名な「諸行無常」「盛者必衰」といった仏教の教えを表すという説もあります。

焼香のやり方(基本の作法)

焼香の順番

焼香は、喪主→遺族→親族→一般の参列者と、故人との血縁関係が近い順に行われます。基本的には葬儀場のスタッフの案内に従うと良いでしょう。

焼香のやり方

焼香は、まず右手の親指・人差し指・中指の3本でお香をつまみ、つまんだお香を、頭を軽く下げつつ額の前まで持ち上げた後、香炉の中の煙が上がっているところへ指をこすりながら落とすという一連の動作を、1〜3回行うのが基本のやり方となっています。

途中の、つまんだお香を額の前に持ち上げて捧げるようにする動作は「おしいただく」と言い、お香をありがたいものとする意味や、お香に故人への感謝や成仏などの祈りを込めるといった意味があるようです。「お香」ではなく「香り」がありがたいと考える浄土真宗など、「おしいただく」という動作を行わない宗派もあります。

浄土真宗の例のように、焼香の作法、また回数については宗派によって異なる部分がありますので、後ほど解説します。基本的にはご自身の宗派の作法でよいとされていますが、ご自身の宗派がはっきりしない、細かい作法を思い出せないという場合には、基本の作法で行うか、前の人に倣うと良いでしょう。

基本の流れ

①順番が来たら焼香台へ進む
②ご遺族に向かって一礼する(遺族の場合は参列者へ一礼)
③焼香台の前で深めに一礼する
④宗派ごとの作法に従って焼香をあげる(1〜3回)
⑤合掌礼拝(がっしょうらいはい/手を合わせて一礼)する
⑥少し下がって一礼する
⑦ご遺族に向かって一礼し席へ戻る

会場によっては、焼香台が僧侶と祭壇の間にあり、焼香の際に僧侶の前に立つ必要がある場合もあります。その際は、焼香台へ進む前と、焼香が終わって焼香台の脇へ下がった時に、「前を失礼します」という意味を込めて僧侶に向かって一礼しましょう。

以上が一般的な流れとなっています。形式ごとの作法や、宗派により異なる部分もありますが、まずは基本の作法を覚えておくと良いでしょう。

焼香の形式ごとの作法

焼香には、通夜・葬儀会場の様式などによって3つの形式で行われるため、それぞれの一般的な作法を紹介します。

立礼焼香

椅子が用意されている会場などで、座席から立って焼香を行う形式で、前述した「基本の流れ」が、立礼焼香での基本の作法となります。
多くの葬儀場で行われているものですので、この機会に確認しておかれると良いでしょう。

座礼焼香

寺院や自宅の和室などで、低い焼香台が用意されている場合に、着座で焼香を行う形式です。立礼焼香との大きな違いは移動の仕方です。焼香台が近い場合は立ち上がらず膝をついて移動します。少し距離がある場合には中腰で移動するようにしましょう。

①順番が来たら中腰の姿勢で焼香台へ進む
(焼香台までが近い場合は立ち上がらず膝をついて移動する)
②焼香台の手前に座りご遺族に向かって一礼する(遺族の場合は参列者へ一礼)
③立ち上がらずに焼香台の前に進んで座り、一礼する
④宗派ごとの作法に従って焼香をあげる(1〜3回)
⑤合掌礼拝(がっしょうらいはい/手を合わせて一礼)する
⑥立ち上がらずに少し下がって一礼する
⑦ご遺族に向かって一礼し席へ戻る

回し焼香

会場が狭い場合や、地域による習慣がある場合などに行われるもので、参列者の席に香炉を回し、席についたまま順に焼香を行っていく形式です。この形式の場合、ご遺族が背を向けて座っていることも多いため、遺族への一礼は行わないことが一般的です。

①手元に香炉を乗せたお盆が回ってきたら、軽く会釈をして受け取り、自分の目の前(椅子に座っている場合は膝の上)に置く。
②祭壇に向かって合掌する。
③宗派ごとの作法に従って焼香をあげる(1〜3回)
④合掌礼拝(がっしょうらいはい/手を合わせて一礼)する
⑤香炉を乗せたお盆を、隣の人(または後ろの人)に回す。

宗派ごとに異なる焼香の回数や作法

先にも述べた通り、宗派ごとに焼香の回数や作法が異なる場合がありますので、それぞれご紹介します。
なお、僧侶の考え方や地域などによっても異なる場合があります。心を込めてお香を焚いて手を合わせれば、失礼に当たることはありませんが、心配な方は家族や僧侶・地域の方に確認しておくと安心でしょう。

臨済宗

焼香について特に定めはないようですが、焼香は1回で、お香はおしいただかずに香炉にくべるのが一般的のようです。

曹洞宗

焼香は2回行いますが、お香を額の前におしいただくのは1回目のみで、2回目はお香を摘んだらそのまま香炉にくべます。

黄檗宗

焼香は3回で、お香を額の前におしいただき、香炉にくべます。

日蓮宗

焼香の回数は、僧侶は3回、一般の参列者は1回とすることが多いようです。お香は3本の指ではなく、右手の親指と人差し指の2本でつまみ、額の前におしいただいて香炉にくべます。

天台宗

焼香の回数は、1〜3回と寺院や地域によって差があるようです。お香は額の前におしいただき、香炉にくべます。

真言宗

焼香は3回で、お香を額の前におしいただき、香炉にくべます。

浄土宗

焼香の回数に特に決まりはなく、寺院や地域によって違いがあると言われていますが、1回または3回を基本とすることが多いようです。お香は額の前におしいただき、香炉にくべます。

浄土真宗

焼香の回数は、本願寺派は1回、真宗大谷派は2回とされ、いずれもお香はおしいただかずに香炉にくべます。

宗派ごとの葬儀の作法やお墓の違いについて詳しくまとめた記事もありますので、合わせてご覧ください。
宗派によるお墓の違い一覧

気をつけるべきマナー

これまでに解説してきた作法に加え、マナーとして気を付けておきたいことがあります。

左手に数珠を持ち、焼香は右手で

お焼香に立つ際、数珠はポケットなどに仕舞わず左手に持って席を立ちましょう。そして、右手で焼香を行ったあとに合掌します。数珠は、持ち歩く際も合掌の際も、房を下に垂らすように持つと良いでしょう。

バッグは持たない

焼香の際はバッグを持たないことがマナーです。焼香台の近くに荷物置き場が用意されていることもあるようです。そうでない場合は、バッグを置いて席を立ち焼香台に向かいましょう。

故人にお尻を向けないように礼をする

焼香の際、遺族や、場合によっては僧侶に向けて一礼をする場面があります。このとき、故人にまっすぐお尻が向かない位置に立って礼をすると良いでしょう。遺族が焼香する際、参列者に向けて礼をする場合も同様です。祭壇の真ん中より左右のどちらかに寄った位置で、斜めに向いて礼をすると良いでしょう。

まとめ

お焼香は、故人を見送る自分自身や周囲を清め、故人の冥福を祈り行われる儀式です。

宗派により作法の違いはありますが、大切なのは故人やご遺族、仏様に心を込めて手を合わせる供養の気持ちです。普段とは違う特別な場で、緊張して細かい作法を思い出せないということもあるかもしれませんが、基本の作法を押さえておけば失礼に当たることはありませんので、慌てずに礼を尽くして振る舞うと良いでしょう。

仏教において、香り・お香はとても大切にされており、お墓参りの際も線香のお供えは大切にされています。お墓に線香をお供えするマナーや、香炉の手入れについてまとめた記事もありますので、お墓参りの際の参考にされてください。
お墓参りでお線香をお供えする本数に決まりはあるの?〜お線香の意味や宗派による作法・マナーを紹介
お墓の香炉とは?役割・種類・お手入れ方法をご紹介します

焼香だけでなく供養の場で大切な、合掌や数珠についての記事もございます。
ご存知ですか?「合掌」の意味と作法
数珠の意味とは?どんなものを選ぶといいの?