お役立ちコラム お墓の色々

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- 供養をきわめる -

宗教による葬儀とお墓の違い・臨済宗編

葬祭基礎知識

宗教による葬儀とお墓の違い・臨済宗編

宗教はもとより、宗派によっても葬儀やお墓に違いがあります。これは、同じ宗教であっても、宗派によって教理や信仰対象、よりどころとするお経や作法に違いがあるからです。

今回は臨済宗の特徴と、それに由来する葬儀やお墓の特徴をご紹介いたします。

臨済宗とは

臨済宗(りんざいしゅう)は、禅宗の1つに数えられ、宗祖は中国の禅僧である臨済義玄(りんざい ぎげん)禅師です。日本には、宋時代の中国に渡り学んだ明庵栄西(みょうあん えいさい)らによって鎌倉時代以降に伝えられ、様々な流派が成立し、現在では主に14の諸派、約7000もの末寺があります。

臨済宗では、特定のご本尊は定められていませんが、一般的には「釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)」を本尊としてお祀りし、縁によっては、薬師如来や観世音菩薩、文殊菩薩などをお祀りする寺院もあります。

禅宗の教え

禅宗の1つである臨済宗。その禅宗の始祖は5世紀末の中国の禅僧・達磨大師です。
その達磨大師の教えに、禅の真髄が凝縮された「四聖句(しせいく)」があります。

1.不立文字(ふりゅうもんじ)

文字や言葉には限界があるので、まずは行動(坐禅・修行)すること。
限界があるからこそ、文字や言葉は大切に用いらなければならない。

2.教外別伝(きょうげべつでん)

言葉を用いずに師匠の心から弟子の心へと、その真髄を伝えること。

3.直指人心(じきしにんしん)

人心の中に潜んでいる仏心と、文字や言葉に頼らずに、坐禅をすることで直に向き合う。

4.見性成仏(けんしょうじょうぶつ)

人間誰もが備えている仏性(仏になれる本性)を自覚すれば、おのずと仏になれる。

臨済宗を含め禅宗の教えの根幹は坐禅にあるとされ、これはお釈迦さまが坐禅の修行に精進され、悟りを開かれたことに由来しています。禅の真髄は、物事の真実の姿やあり方を見極めて、これに正しく対応していく心のはたらきを調えること。そして坐禅をして身体を安定させ、心を集中させることで身・息・心の調和をはかることです。

達磨大師の四聖句はこの悟りの到達までの道標となるものなのです。

臨済宗の葬儀

臨済宗の葬儀は、故人を仏の弟子にするための「授戒の儀式」、経典を唱える「念誦(ねんじゅ)の儀式」、仏性(ぶっしょう)に目覚めさせ、故人を仏の世界へと導くための「引導の儀式」の3つで構成されます。

これは、臨済宗では禅の考え方に基づき、葬儀を「故人が仏の弟子となって修行の道に入り、自らの仏性に目覚める儀式」と考えるためです。

通夜では「般若心経」が読まれ、葬儀では「観音教」「大悲円満無礙神咒(大悲呪)(だいひえんまんむげじんしゅ)」「宗門安心章(しゅうもんあんじんしょう)などが唱えられます。

臨済宗の葬儀では、白木位牌の最上位に「○」を書いたものを用います。この「○」は円寂、つまり故人が悟りの境地に至ったことを表しています。戒名には、新帰元(「この世のお務めを終えられ、新たに仏様の世界にとお帰りになる」の意味)、戒名の下には霊位と書きます。実は仏壇に位牌を祀る習慣は、臨済宗からスタートしたとも言われています。

臨済宗の作法

臨済宗の正式な数珠は、108の玉が連なった「看経念珠(かんきんねんじゅ)」です。108の玉には、人間が持つ108種類の煩悩を解消する力があると考えられています。看経念珠の他には、振分念珠と呼ばれる長い数珠を使うことも可能です。

合掌するとき以外は、看経念珠を二重にして左の手首にかけます。 合掌する際は、数珠を二重にして左手の親指と人差指の間にかけてください。房が下にくるようにかけ、右手を添えて合掌礼拝して「南無釈迦牟尼仏」と唱えます。

臨済宗のお焼香ですが、香を額に押し頂いたりせずに、そのまま1回香炉にくべます。ただし、額に頂くことを禁じているわけではなく、また臨済宗の中でも、2回あるいは3回の焼香を行ったり、1回目だけ額に頂いたりする宗派もあります。不安な場合は、寺院に確認してみましょう。

臨済宗のお墓

臨済宗のお墓は、禅宗に見られる特徴である、墓石の竿石部分に「円相」が刻まれることがあります。円相は悟りや心理などを円形によって表現したもので、「○○家之墓」の上部に彫刻されることが多いです。他にも、ご本尊である「南無釈迦牟尼仏」と彫刻しているお墓もあり、五輪塔は上から「空」「風」「火」「水」「地」とそれぞれ梵字を刻みます。
ただ、お墓の形態について厳格な決まりはなく、和型以外の、洋型やデザイン墓石でも問題ありません。

臨済宗の塔婆供養

臨済宗では法要の後に板塔婆(とば)を立てて供養します。
塔婆とは、正式には「卒塔婆(そとば)」と言い、サンスクリット語の「ストゥーパ(仏塔という意味)」に漢字をあてたものです。

板塔婆の表面の上部には「空・風・火・水・地」に対応する「キャ・カ・ラ・バ・ア」の5つの梵字(ぼんじ)が書かれます。梵字の他に「大円鏡智(だいえんきょうち)」や「平等性智(びょうどうしょうち)」などの、お経の文章に出てくる文字を書く場合もあり、梵字やお経の文字の下には、故人の戒名や何回忌などの、供養の趣旨を書きます。

板塔婆の裏面には、供養の年月日や供養主の名前を書きます。また、禅宗独特の言葉である禅語(ぜんご)が書かれることもあります。

まとめ

今回は臨済宗の特徴と、それに由来する葬儀やお墓の特徴をご紹介いたしました。同じ仏教でも他の宗派との教えの違い、そしてそれに伴う葬儀や作法、お墓の違いを見ることができたと思います。普段何気なく行っている作法にも、意味や由来があります。他にも気になることがありましたら、ぜひ寺院や石材店などで尋ねてみてください。