お役立ちコラム お墓の色々
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- 供養をきわめる -
宗教による葬儀とお墓の違い・日蓮宗編
宗教はもとより、宗旨によっても葬儀やお墓に違いがあります。これは、同じ宗教であっても、宗旨によって教理や信仰対象、よりどころとするお経や作法に違いがあるからです。
今回は日蓮宗の特徴と、それに由来する葬儀やお墓の特徴をご紹介いたします。
日蓮宗とは
日蓮宗(にちれんしゅう)は、鎌倉時代中期に日蓮聖人(にちれんしょうにん)によって開かれた宗旨です。
鎌倉仏教の一つに数えられ、お釈迦様の説かれた法華経(妙法蓮華経)(ほけきょう・みょうほうれんげきょう)をよりどころとします。法華経の功徳が込められているとされる「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」の7文字のお題目を心から信じて唱えることが仏となる唯一の道であるとしています。
日蓮宗の教え
お釈迦さまの教え(言葉)をまとめたお経は8万4千もの数があるといわれていますが、中でも、日蓮宗がよりどころとする「法華経」では、生きとし生ける全てのものに、「仏の心(仏性)」が備わっていると説いています。
「南無妙法蓮華経」の「南無」とは、「一心に仏を信じること」で、「妙法蓮華経」の5文字にはお釈迦さまが多くの人を教え導いた智慧と慈悲の功徳が、全て備わっていると言われています。全てに備わる「仏の心」を信じ、「南無妙法蓮華経」のお題目を口に出して唱えることで、自分の中にある「仏の心」をも呼びあらわしていこうというものです。
日蓮宗の葬儀
日蓮宗では葬儀においても「南無妙法蓮華経」というお題目を唱えることが重要で、葬儀の中でもこのお題目が唱えられます。葬儀の場でお題目を唱えることは「故人の生前の信心深さを讃え、故人が無事に霊山浄土に辿り着き成仏する」手助けとなるため、参列者にとっても功徳を積むことになり修行が進むとされています。
葬儀は一般的に以下の流れで行われます。
司会者(葬儀社)による開式の宣言
総礼(そうらい:僧侶が合掌し、お題目を三唱する)
道場偈(どうじょうげ:諸仏をお迎えし、礼拝する)
三宝礼(さんぽうれい:仏・法・僧に礼拝する)
勧請(かんじょう:釈迦、菩薩、日蓮聖人等をお迎えする)
開経偈(法華経を讃える)
読経
咒讃鐃鈸(しゅさんにゅうはち:供養のための演奏を行う)
開棺(かいかん)
日蓮宗独自の儀式で、僧侶が棺の傍に立ち、中啓という扇子を用いて棺を3回打ち鳴らし、音を立てながらお経を読み、お供物のお花やお茶、お膳などを祭壇に捧げます。
引導(いんどう)
こちらも日蓮宗独自の儀式です。仏様に故人を引き合わせる儀式で、僧侶は払子(ほっす)と呼ばれる麻や獣毛などを柄につけた仏具を振り、引導文を読みます。
唱題(しょうだい:お題目を唱えること)
宝塔偈(ほうとうげ:法華経の功徳を讃える)
回向(えこう:死後に良いところに生まれることを祈ります)
四誓(しせい:生きとし生けるもの全てを救うための誓いの言葉を唱える)
三帰(さんき:三宝に帰依することを誓い、祈りを捧げる)
奉奏(ぶそう:仏様をお送りする)
司会者(葬儀社)による閉式の宣言
日蓮宗の作法
日蓮宗には、僧侶が使う装束(しょうぞく)数珠と、一般用の勤行(ごんぎょう)数珠という2種類の数珠があります。特徴は房が丸く(菊房・玉房)なっているところです。
また、房の長さは普通の長さの短房、少し長い中房、長い長房があり、中房と長房は、ご祈祷をする僧侶が用いる数珠となっています。
「珠」の材料は、香木・梅・黒檀・菩提樹・水晶・真珠・珊瑚・象牙・石など多種多様ですが、昔から白水晶が最上の珠といわれます。
合掌をするときや、経本を持つときは、房を下にし、左手に2重に掛けて持ちます。
また、勧請・唱題・回向という法要の中で最も大切なときには、親珠を両方の中指の第一関節に、数珠を一度ねじってから(あやにする)そのまま両手を自然に合わせましょう。
数珠の房は二つの房を右手に、三つの房が左手にくるようにします。
日蓮宗の焼香は正式には3回とされていますが、参列人数の都合などで、導師は3回、一般参列者は1回であることが多いです。
一般参列者が焼香を1回する場合は、焼香台の前でまず合掌・一礼し、右手の親指と人差し指で抹香を軽くつまみ、静かに火種にそそぎます。その後再び合掌をして、一礼し、席に戻るという流れとなります。
日蓮宗のお墓
お墓の正面には「○○家先祖代々之墓」「○○家之墓」などと刻むことが一般的に多いですが、日蓮宗の檀家や信者の場合「南無妙法蓮華経」や「妙法○○家先祖代々之墓」とする場合もあります。「南無妙法蓮華経」の「法」以外の6字の端の部分を、長くひげのように伸ばして書いた「髭題目(ひげだいもく)」と呼ばれる文字を記します。これは「法」の光に照らされ、万物がことごとく真理を体得して活動することを表しています。
そして、側面または裏面には、建立年月日、建立者、法号などを刻みます。法号とは、他宗旨でいう「戒名・法名」のことで、下記の4つにて構成されます。
院号
もとは天皇や高位の貴族につけられたものですが、現在ではお寺や社会に貢献した人あるいは信仰が厚かった人に付けられるもの
道号
悟りを得て仏道に入った者の称号
日号(法号)
狭義の法号のことで、一字目に日蓮上人の「日」を付けることから日号といわれます
位号
日号の下につけられ年齢や性別、信仰心の篤さなどによってつけられる「居士」や「大姉」などのこと
日蓮宗の塔婆供養
卒塔婆は元来「ストゥーパ(仏塔)」と呼び、お釈迦様のお骨を納める建物を指していました。後に日本に渡り、お釈迦様の仏塔になぞらえてご先祖のお徳をたたえ、供養の心を簡易的な板で出来ている卒塔婆で表しています。
日蓮宗の場合は卒塔婆にも「南無妙法蓮華経」を記し、故人の命日(年回忌)や、春秋のお彼岸、お盆、お施餓鬼等の他、日蓮聖人の命日となる「お会式(おえしき)」にも建てられます。
まとめ
今回は日蓮宗の特徴と、それに由来する葬儀やお墓の特徴をご紹介いたしました。同じ仏教でも他の宗旨との教えの違い、そしてそれに伴う葬儀や作法、お墓の違いを見ることができたと思います。
お墓は家族の心の柱であり、ご先祖様への感謝をお供えする場です。遠いご先祖様に対する感謝というものは、お墓があることでより大きく育まれてくるものかと思います。お題目を中心とする日蓮宗の教えと共に、「生かされて生きる命」の根源に対しての感謝の想いを持ち続けたいものですね。