お役立ちコラム お墓の色々
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- 供養をきわめる -
宗教による葬儀とお墓の違い・曹洞宗編
宗教はもとより、宗派によっても葬儀やお墓に違いがあります。これは、同じ宗教であっても、宗派によって教理や信仰対象、よりどころとするお経や作法に違いがあるからです。
今回は曹洞宗の特徴と、それに由来する葬儀やお墓の特徴をご紹介いたします。
曹洞宗とは
曹洞宗(そうとうしゅう)は、臨済宗とならび禅宗の1つに数えられます。今から800年ほど前の鎌倉時代に、「道元禅師(どうげんぜんじ)」が、正伝の仏法を中国から日本に伝え、それを「瑩山禅師(けいざんぜんじ)」が全国に広め、その礎を築きました。
曹洞宗には大本山が2つあり、ひとつは福井県にある大本山永平寺(えいへいじ)、もうひとつは横浜市にある大本山總持寺(そうじじ)です。両大本山と呼ばれ、曹洞宗寺院の根本、信仰の源となっています。なお大本山の住職は、貫首「かんしゅ」と呼ばれます。
曹洞宗の教え
曹洞宗は、お釈迦さまから歴代の祖師(そし)方に受け継がれてきた「正伝(しょうでん)の仏法(ぶっぽう)」を依りどころとする宗派です。
曹洞宗の坐禅は「只管打坐(しかんたざ)」といい、ただひたすらに坐るということが特徴です。何か他に目的があってそれを達成する手段として坐禅をするのではなく、坐禅をする姿そのものが「仏の姿」であると自覚することが曹洞宗の教えです。
曹洞宗の坐禅は「黙照禅(もくしょうぜん)」とも呼ばれますが、これに対し、同じ禅宗である臨済宗では、公案(禅の問題)について考え抜き悟りを目指す「看話禅(かんなぜん/かんわぜん)」と呼ばれる坐禅が行われます。
曹洞宗の葬儀
曹洞宗の葬儀は儀式が多いため、他の宗派よりお葬式に時間が掛かると言われています。他の宗派の葬儀の所要時間が約30分だとすると、曹洞宗の葬儀は約1時間を超えることもあります。これは曹洞宗の葬儀に独自の役割があるためで、「死後にお釈迦様(釈迦如来)の弟子になる」という目的で行われます。そして、弟子になるために必要な戒名・戒法を授かるための「授戒(じゅかい)」と、悟りを開くために仏の道へ導くための「引導」が、曹洞宗の葬儀の特徴となります。
葬儀は以下の流れで行われます。
1.剃髪(ていはつ)の儀式
導師(引導を渡す僧侶)が剃髪を行います。
2.授戒(じゅかい)
・懺悔文(さんげもん)
故人の生前の行いを振り返り、一生の中で犯したとされる罪を反省します。
・三帰戒文(さんきかいもん)
仏陀の教えを守り、仏門への帰依を誓います。
・三聚浄戒(さんじゅうじょうかい/悪をとどめ、善を修め、人々のために尽くすという菩薩戒の基本となる考え方)
・十重禁戒(じゅうじゅうきんかい/菩薩が必ず守るべき十種の戒)
導師が用意した法性水を故人の頭や位牌に注ぎます。
・血脈授与(けちみゃくじゅよ)
仏弟子となった証である血脈を授かり、霊前に供えます。血脈とはお釈迦様から弟子へと代々繋がる「法(次代の師となるべき者が相続するもの)」の系図のことです。
3.入棺諷経(にゅうかんふぎん)
読経、焼香を行います。
4.龕前念誦(がんぜんねんじゅ)
故人が悟りの道を進むことを祈るため、棺の前で龕前念誦のお経と十仏名(じゅうぶつみょう)を唱えます。
5.挙龕念誦(こがんねんじゅ)
出棺に際して故人を送り出すため、「大宝楼閣陀羅尼(だいほうろうかくだらに)」と「回向文」が唱えられます。また、邪気を払うために曹洞宗葬儀の特徴のひとつである鼓鈸三通(くはつさんつう)を行います。鼓鈸三通とは、引磐(いんきん/持ち手のついた小さな鐘)、太鼓、鐃祓(にょうはつ/シンバルのようなもの)といった鳴り物を、僧侶が三人一組となって打ち鳴らし、チン・ドン・ジャランとリズム良く大きな音を出すことを三回繰り返すことによって故人の魂を迎え、また見送ります。
6.引導法語
導師が故人の生前を漢詩で表し、松明で円を描き、悟りの世界に導きます。
7.山頭念誦(さんとうねんじゅ)
故人に荼毘(だび)することを告げ、すみやかに悟ることを願うもの。
8.出棺
再度、鼓鈸三通を行い、出棺します。
曹洞宗の作法
曹洞宗の正式な数珠は、玉が108個ある「本連(ほんれん)」と呼ばれるものです。108つあるといわれる人の煩悩を断ちきるために、一心に仏・法・僧の三宝(さんぼう)の名(みょう)をとなえながら、108の数珠を繰り数えれば、仏さまのご加護がいただけるとされています。
数珠を左手の四指にかけて合掌し、経本を手に持っている場合は左手の手首にかけておきます。どちらも房を下にしてかけ、一環で長いものは二環にしてかけます。
曹洞宗のお焼香ですが、2回が一般的です。焼香のときは、1回目は主香(しゅこう)といい、故人のご冥福を祈って薫(くん)じるもので、左手を添えて、香を額の前に軽くささげ、香炉に入れます。このとき、左手を右手の下に添えると敬虔(けいけん)な姿となり、一層“念”がこもります。二回目は従香(じゅうこう)といい、主香が消えないように香をつまんでそのまま香炉へ入れます。
曹洞宗のお墓
曹洞宗のお墓には、墓石に円相(えんそう)という印を刻むことがあります。円相とは、○の形をした印で、お墓の棹石にある家名の上部に彫られ、禅宗のお墓に見られる特徴です。一円相(いちえんそう)とも呼ばれ、仏・心の本来の姿・悟り・完全といった意味を示します。故人が悟りを開き、「完全な仏性となって成仏した人」であることを表すものです。
円相を最初に書いたのは、禅宗の第6祖の南陽慧忠(なんよう えちゅう)であると言われています。仏教の教理である「一切皆空」の真理を、一つの象徴でもってあらわしたもの、色や形のないものを目に見える形にしたものの代表が円相です。言葉や形にできない悟りの境地を表し伝えるために、塔婆のいちばん上に描いたり、葬儀の引導のときに空中に描いたりすることもあります。
また曹洞宗でも五輪塔を建てることがあります。刻む文字は梵字で「空・風・火・水・地」というのが一般的です。
曹洞宗の塔婆供養
曹洞宗ではお盆によく「お施食(せじき)」「お施餓鬼(せがき)法要」をします。六道輪廻の餓鬼だけではなく、ありとあらゆるものにも感謝や施しを通じて、御先祖の供養にあてるというものです。その際に卒塔婆を立てます。
卒塔婆は元来「ストゥーパ(仏塔)」と呼び、お釈迦様のお骨を納める建物を指していました。後に日本に渡り、お釈迦様の仏塔になぞらえてご先祖のお徳をたたえ、供養の心を簡易的な板で出来ている卒塔婆で表し、片面は供養の対象・もう一方は大日如来の梵字が書かれています。形の凸凹は「地・水・火・風・空(万物そのもの)」の表れです。法要後は、それぞれのお墓、又はお仏壇にお祀りします。
まとめ
今回は曹洞宗の特徴と、それに由来する葬儀やお墓の特徴をご紹介いたしました。同じ仏教でも他の宗派との教えの違い、そしてそれに伴う葬儀や作法、お墓の違いを見ることができたと思います。故人の思いや願いが、残された遺族と共に生き続けている事を感じるとき、人はつながりの中で、生死を越えて生き続けることを強く感じます。供養という行いを通じて、大切な方とのつながりをぜひ保ち続けてください。大切な人との生死を超えた絆を大事にしたいものです。