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お盆やお彼岸に行われる「施餓鬼」とは?〜意味や由来を解説します〜

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お盆やお彼岸に行われる「施餓鬼」とは?〜意味や由来を解説します〜

お盆やお彼岸の時期には、全国各地で「施餓鬼(せがき)」という行事が行われます。
これは、飢えや渇きに苦しむ魂にお供えを施し供養するという仏教において重要な行事ですが、施餓鬼という言葉に聞き覚えはあっても、「参加したことがなく、何のための行事か分からない」「聞いたことがあるけれど、何をするの?」という方も少なくないのではないでしょうか。

今回は、「施餓鬼」の意味や由来、どのように行われるのかなどについて、解説していきます。日本人の間で昔から伝えられてきた供養の心に触れられる内容でもありますので、ぜひこの機会に知っていただけたらと思います。

施餓鬼とは

「施餓鬼(せがき)」は、生前の悪い行いによってあの世で餓鬼道(がきどう)に堕ちて餓鬼(がき)と呼ばれる鬼になってしまった人や、誰にも供養されることのない無縁仏(むえんぼとけ)など、飢えや渇きに苦しんでいる死者の霊魂に、食べ物や飲み物を施し供養(救済)する仏教行事です。

正式には「施餓鬼会(せがきえ)」といい、「お施餓鬼」と呼ばれることもあります。また、曹洞宗・臨済宗といった禅宗では、施す者と施される者の間に身分に違いはないという考えから、「餓鬼」という表現を使わず、「施食会(せじきえ)」と呼びます。

この供養をすることで、苦しんでいる霊魂を救い鎮めるだけでなく、供養をする側も大きな功徳が得られ、さらにその功徳によってご先祖様の追善供養にもなるとされています。

餓鬼と餓鬼道について

「餓鬼」は、インドのサンスクリット語で「死者の霊」を表す「プレータ(preta)」を日本語に訳した言葉で、元々は子孫からお供え物(供養)をしてもらえないまま彷徨っている亡霊(亡者)を意味していたようです。

仏教には「輪廻転生」という教えがあり、魂は「六道(ろくどう、りくどう)」と呼ばれる6つの世界を、生まれ変わりながら行き来するものと考えられています。六道とは地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人間道、天上道の6つです。
その中でも、強欲で嫉妬深い人、物惜しみや貪るような行いをした人が行くとされる餓鬼道に堕ちて亡者になった者を餓鬼と呼び、飢えや渇きに苦しみ続けながら現世にもさまざまな災いをもたらすと言われています。

施餓鬼の由来

施餓鬼の由来は、 『救抜焔口餓鬼陀羅尼経(くばつえんくがきだらにきょう)』 という経典あると言われ、以下のような内容が書かれています。

お釈迦様の弟子の1人である阿難(あなん)が瞑想をしていると、焔口(えんく)という名の餓鬼が現れ「お前は3日後に死んで、私のような餓鬼に生まれ変わるだろう」と予言しました。その苦難から逃れる方法を尋ねたところ、焔口は「無数の餓鬼や多くの僧侶に食べ物を施し、さらに私のために供養をすればよい」と言います。たくさんの食事を工面することができずに困った阿難がお釈迦様に助けを求めると、お釈迦様は、「陀羅尼(だらに)」という祈りの言葉と作法を用いて食べ物を施すようにとの教えを授けました。阿難がその通りにすると、餓鬼は救われ、その功徳で阿難も寿命を伸ばすことができたのです。

この経典は、真言宗の開祖である空海が、唐から持ち帰ったと伝えられ、ここに書かれたお釈迦様の教えが元になり、施餓鬼会が行われるようになったと言われています。

施餓鬼はいつ行うの?

施餓鬼は、お盆や、3月の春彼岸、9月の秋彼岸に合わせて執り行われることが多いようです。

しかし、施餓鬼の目的は餓鬼に施しをしてその霊魂を救うことですので、執り行う時期に決まりはなく、宗派や寺院によって回数もタイミングも様々です。毎日行っているお寺や、檀家の定例会も兼ねて定期的に行うお寺もあり、また、大きな災害などで多くの人が犠牲になった時に執り行われることもあります。

なお、浄土真宗では死者はすぐに成仏するとされ、供養は必要ないと考えられているため、施餓鬼の法要も行いません。

お盆と施餓鬼

施餓鬼は、お盆に合わせて執り行われることも多く、お盆の行事として定着している寺院もあります。
お盆は、先祖の魂を自宅でお迎えして供養する行事ですが、この時期にはあらゆる霊魂があの世からこの世に帰ってくると考えられていることから、縁のあるご先祖様と共に、その他の無縁仏や餓鬼など彷徨っている霊魂も供養するという意味があるようです。

また、お盆の法要である「盂蘭盆会(うらぼんえ)」は、「お釈迦様の弟子の1人である目連(もくれん)が、餓鬼道に落ちた母親に食事を施し供養した」という言い伝えに由来するとされており、餓鬼道に落ちた人を施しによって救うという内容が塔施餓鬼の由来とされる阿難の言い伝えと似ていることから、これらが混じり合い、施餓鬼会を盂蘭盆会(お盆)と合わせて行うことが増えたとも言われています。

お盆には、餓鬼が家に帰る先祖の霊を羨んで邪魔してしまうことがないようにとの意味を込め、餓鬼のための食べ物をお供えするという風習も残されているようです。

お盆(盂蘭盆会)の由来や起源については、こちらの記事をご覧ください。
お盆の由来、知っておきたい5つのこと

施餓鬼では何をする?

施餓鬼の法要では、お供えをし、僧侶による読経や法話をいただいた後、焼香を行うのが一般的です。卒塔婆(そとうば)を用意して先祖供養を行なったり、苦しんでいる魂を供養するために、「施餓鬼旗(せがきばた)」「施食幡(せじきばん)」と呼ばれる5色の旗を飾ったりすることもあるようです。
寺院によっては、檀家同士の交流の場を設けたり、会食や法話会を開いたりするところもあります。

自宅に僧侶を招いて執り行うことも可能で、基本的な流れは寺院で行うときと同じです。その際には、参列者全員でお墓参りをしたり、食事をふるまったりすることもあるようです。

地域によっては、故人があの世でも食べ物に困らないようにとお米を袋に入れた「施餓鬼米」、餓鬼へのお供えとして茄子やきゅうりを細かく刻んで水に浸した「水の子」など、施餓鬼ならではのお供えもあります。

施餓鬼での基本のマナー

施餓鬼は、大切な仏教行事とされており、いくつかのマナーがあります。今回は一般的なマナーをご紹介しますが、寺院によっても考え方や作法に違いがあります。迷った時には他の檀家の方や寺院に尋ねて確認しておくと、失礼のない振る舞いができるでしょう。

服装

施餓鬼には、平服や略礼服で参列するのが一般的ですが、寺院によっても違いがあり、白・グレー・ブラウンなどのシンプルな普段着で良いとされる場合もあります。

お布施

施餓鬼では、お布施を用意するのが一般的です。
寺院や地域によって異なりますが、3,000~10,000円程度が相場と言われています。また、そのほかに、卒塔婆代やお車代が必要な場合もありますので、事前に確認すると良いでしょう。

お布施の包み方・表書き

お布施は、奉書紙(ほうしょし)と呼ばれる和紙に包むのが正式な作法とされていましたが、現在では、白無地の封筒に入れるのが一般的となっています。

表書きは、濃墨の毛筆や筆ペンを使用し、「御布施」または「お布施」と書きます。寺院によっては「御施餓鬼料」「施餓鬼供養料」「冥加料」「御回向料」などと書く場合もあります。

封筒の下部中央には、フルネームか「〇〇家」を、裏面左下には、住所・電話番号・金額を書きましょう。

まとめ

施餓鬼が他の法要と決定的に違うことがあります。それは、故人やご先祖様に限らず不特定多数の供養のために営まれるということです。施餓鬼は、他人のために施すという行いが自分自身にも返ってくること、私たちはお互いに助け合い支え合いながら生きているということなど、生きる上で重要な気づきを得られる機会としても、昔から大切に営まれてきました。

お盆やお彼岸の時期には、施餓鬼会を開催している寺院が多くあります。古くから伝えられてきた、人を大切にする心やより良く生きるヒントに触れる機会となりますので、お墓参りと合わせて、足を運んでみてはいかがでしょう。生かされていることへの感謝を胸に、手を合わせることができるのではないでしょうか。

お彼岸の日程や過ごし方についてはこちらをご覧ください。
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