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「伴侶石」韓国で流行している石のペットとは?

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「伴侶石」韓国で流行している石のペットとは?

石というと、墓石の他に、庭石や建物、様々な彫刻や置物など、私たちの生活の中にも深く溶けこんでいますが、最近韓国では、ペットとして育てる石「伴侶石」「愛玩石」が流行しているようです。
2024年3月にアメリカの経済新聞ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が記事にしたことをきっかけに、世界でも話題になっています。

「伴侶石」は、人々にとってどのような存在として扱われているのでしょうか?流行の背景や人と石の繋がりについて、日本の石文化も交えてご紹介します。

韓国で流行している伴侶石

ペットとして育てる石「伴侶石」

韓国でブームになっている「伴侶石」。パワーストーンをお守りとして持ち歩いたり、お地蔵様や生き物の形に彫刻した石を大切にしたりするのとは違い、川に落ちているようなごく普通の石を、まるで生き物のペットのように扱います。
目や顔を描く、そばに置いて眺める、服を着せる、食事を与える、お風呂に入れる、話しかけるなど、それぞれの方法で世話をし、可愛がるようです。

2021年ごろから流行

韓国で伴侶石の人気が高まったのは、2021年頃だと言われています。俳優がテレビ番組で伴侶石を紹介。また、K-POPの人気男性アイドルグループである「SEVENTEEN(セブンティーン)」「TOMORROW X TOGETHER(トゥモロー・バイ・トゥギャザー)」などのメンバーが、伴侶石を育てる自身の様子をSNSで公開したことがきっかけとなったようです。

韓国の石材会社が、大量の石をタライに入れて洗う動画をSNSにアップした際には、「動物虐待にならない?」「トイレトレーニングは済んでいるの?」と冗談半分のコメントとともに7万以上の「いいね」がつき、購入者も増えたようです。このようなエピソードからも伴侶石への注目度の高さを感じます。

「伴侶」の意味

日本で「伴侶」というと、配偶者を想像する方が多いと思いますが、韓国では「伴侶動物」「伴侶犬」「伴侶猫」のようにペットを呼ぶ時に使われています。
ペットは日本と同様に「愛玩動物」とも言うのですが、そばに置いて可愛がるだけではなく、「気持ちを分け合う家族のような存在」「パートナー」という意味を込めて「伴侶動物」「伴侶石」という表現が広がったと言われています。

何があっても静かに寄り添ってくれる伴侶石

近年韓国では、長時間労働や少子化が問題視される中で、結婚や出産を望まない人の増加とともに、「ペット産業」が盛んになっていると言われています。

仕事のストレスや一人暮らしによる孤独感を癒したいと考える人が増えたことが、命を預かる負担がなく、何事にも変化せず静かに寄り添ってくれる、石のペット「伴侶石」の流行に繋がっているようです。

アメリカで流行した「ペットロック」

石のペットは、韓国で流行するより前にアメリカでブームが起こり、日本でも売り出されていたことをご存知でしょうか。

ペットロック

「ペットロック」は1975年にアメリカで大流行した、石をペットとして扱う商品です。ゲイリー・ダール(Gary Dahl)という人が、飼育を楽しみにながらもストレスや出費、生き物を管理する負担から解放されるとして発案し、500万個以上も売れる大ヒットとなりました。世話やしつけについて書かれたマニュアル、血統書などがセットになっており、ユーモアを交えたプレゼントとして売り出されていたようです。

最近では、2022年に公開されたアニメーション映画『ミニオンズ フィーバー』に、ペットロックを持ったキャラクターが登場。更に、ゲームメーカーのニンテンドーからは、携帯型ゲーム機ニンテンドーDS用のペットロックを育成するソフトが発売されており、アメリカでは今でも知名度の高い存在のようです。

日本でも売り出されていた

ペットロックがアメリカで流行した後、日本でも1977年(昭和52年)にトミー(現・タカラトミー)から発売されたようです。80年代には、「藤子不二雄」(藤子・F・不二雄)の短編漫画『オヤジロック』の題材として取り上げられています。

日本の石文化

石を鑑賞する文化

話しかけたりお世話をしたりするわけではありませんが、日本にも、石を愛でる文化があります。中でも、砂を敷いた水盤や台座に自然石を配置して室内で鑑賞する「水石(すいせき)」は、中国で始まった「愛石趣味」が伝わり、武将や上流階級で楽しまれていたものが大衆化していったとされ、700年にもわたる歴史があると言われています。また、庭に砂や石だけで山や水の景色を表現する「枯山水(かれさんすい)」も、古くから残る石を用いる文化と言えそうです。

昭和40年(1964年)前後には、全国で「石ブーム」が起き、山や川に多くの人が石探しに訪れたり、たくさんの石が売り出されたりし、雑誌などでも多く取り上げられていたようです。

お墓の歴史

日本で石といえば、「お墓」も外すことができない伝統的な文化と言えるでしょう。
日本では、縄文時代にはすでに埋葬の文化があったと言われています。各地に有力者の古墳が残されており、奈良県の石舞台古墳でも見られるように、石造の棺「石棺(せきかん)」や棺を収める石室が見つかっています。
そして平安時代以降、仏教の教えが浸透するとともに、五輪塔など石造りの供養塔や墓碑が建てられるようになり、江戸時代になると、先祖の供養や葬儀といった行事と合わせて現代のような角柱型の石を設えたお墓が定着していったと言われています。

お墓のデザインには様々なものがありますが、最近では、前述した「水石」のように自然が作り出した石の形に魅力を感じ、「自然石墓」という石の自然な形を生かしたお墓を選ぶ人も増えているようです。

石に魂が宿る

古来日本では、自然界のあらゆるものに霊や神が宿ると考えられており、特に石や岩を、命や魂が宿る神聖なものと捉えて大切に扱ってきた歴史があります。現代でも、「石には魂が宿るから持ち帰ってはいけない」と言い伝えられている地域もあるようです。
お墓を建てる際には、「開眼供養」や「魂入れ」といって、亡くなった方の魂をお墓に宿らせる儀式を行う風習があります。このような思想や歴史が、供養塔や石造りのお墓、石仏などが作られてきた土台になっていると言えそうです。

石に愛着を感じる心

伴侶石として選ばれる石は、滑らかに丸みを帯びたものが多いものの、宝石ではなく、川や海に落ちているようなごくありふれた石です。

小さな子どもが、なんの変哲もないように見える石を集めて宝物にしたり、何かに見立てて遊んだりということはよくある光景ですが、大人でも、ふとした時に石を「可愛い」「きれい」と感じることがありますし、石をアートに使うこともあります。

自然の石に同じ形のものは一つもなく、その形になるまでの歴史も質感も模様もいろいろ。不規則で自然を感じる石だからこそ、人はそこに優しさを感じ、特別感を持ったり人生や感情を重ね合わせたりして愛着を感じるのかもしれません。

まとめ

石は、よく見ると一つ一つ表情が違い、私たちの心を惹きつけます。夏休みには、石に絵を描くストーンアートに取り組んだり、「石の性質や種類」「石がどこから流れてくるのか」などをテーマに、夏の自由研究に取り組んだりするお子さんもいらっしゃいます。
人の寿命よりはるかに長く地球に存在し、様々な環境の中で形を変えていく石。お子さんと川や海へ遊びに行った際には、落ちている石を手に取って、一つ一つ見比べてみるのも面白いのではないでしょうか?

※石を持ち帰る際には、マナーを守ることが大切です。自治体が管理する河川や海岸では石を拾っても問題ないとされていますが、常識を外れてたくさん持ち帰ることはやめましょう。また、私有地の場合は勝手に入ってそこにある物を持ち出してはいけませんし、国立公園となっている場所も、物を拾って持ち帰ってはいけないことになっていますので、注意しましょう。

日本のお墓・墓石の歴史については、こちらの記事でも紹介しています。
いつからある?日本のお墓、墓石の歴史とは

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