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浄土真宗ではお盆をどう過ごす?盆提灯や飾り、歓喜会について解説

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浄土真宗ではお盆をどう過ごす?盆提灯や飾り、歓喜会について解説

お盆は、日本で昔から大事にされてきた、ご先祖様の霊を家にお迎えする行事です。
一般的に、ご先祖さまを供養する行事として定着しているお盆ですが、浄土真宗の場合は考え方が他の宗派と異なることから、お盆の意味や過ごし方にも大きな違いがあります。

浄土真宗では、お盆をどのように過ごすのでしょうか?今回は、浄土真宗におけるお盆の考え方と合わせて、お盆にやることややらないこと、飾りやお供えについて解説し、浄土真宗のお盆の法要である「歓喜会」についても紹介します。

お盆とは

まず、一般的に知られている、お盆の意味や由来について解説します。
お盆は、ご先祖様の霊を自宅にお迎えしてお祀りする行事です。
「盂蘭盆会(うらぼんえ)」というのが正式な名称で、「お釈迦様の弟子の1人である目連が、亡くなった母親が餓鬼の世界(餓鬼道)に堕ち苦しんでいたところを、すべての修行僧に食べ物や飲み物を施すという功徳を積むことで救い、母親は極楽往生を遂げることができた」という言い伝えにちなみ、ご先祖様の冥福を祈る追善供養を行うのが一般的です。

日本では、仏教が伝わる前から祖先の霊を敬い自宅に迎えてお祀りする風習があり、この風習と、仏教の追善供養の行事が融合する中で、お墓参りや送り火・迎え火、精霊棚の飾りなど、ご先祖様をお迎えして手厚く供養し、またあの世へお送りするという風習が育まれていったようです。

追善供養、お盆の由来や意味について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
追善供養とは?生者が故人のためにできる唯一のこと
お盆の由来、知っておきたい5つのこと

浄土真宗におけるお盆「歓喜会(かんぎえ)」

浄土真宗の考え方「臨終即往生」

仏教において浄土真宗以外の宗派では、人が亡くなると六道(ろくどう)という迷いの世界(死後の世界)を巡りながら、功徳を積むことで極楽浄土を目指すとされています。その際、この世に残った人が故人に代わって、読経や法要などの善行により功徳を積み故人の冥福を祈ることを、「供養」「追善供養」と呼びます。

しかし、浄土真宗では、「臨終即往生(りんじゅうそくおうじょう)」という教えがあり、人が亡くなるとすぐに阿弥陀如来の手で極楽浄土に導かれ仏様になると考えられています。そのため、「迷いの世界をさまよう」という概念がなく、生きている人が功徳を積んで故人の冥福を祈る「追善供養」の考え方もありません。

歓喜会(かんぎえ)とは

このように、追善供養の必要がない浄土真宗において、お盆は「歓喜会(かんぎえ)」とも呼ばれ、供養のためではなく、ご先祖様や阿弥陀仏のお救いに感謝し、仏様の教えとの出会いや往生できることを喜ぶ(歓喜する)日として位置付けられています。

時期は一般的なお盆と同様です。多くの地域では8月13日〜16日、関東の一部など新暦で行う場合は7月13日〜16日となります。

仏壇を整えてお供えをし、お墓参りや、自宅に僧侶を招いての読経などを行うのが一般的で、供養の目的ではなく、歓喜会の意味にもあるように、ご先祖さまや阿弥陀仏への感謝を込めて行います。さらに、寺院で開催されている法話会に参加することもあります。

浄土真宗のお盆ではやらないこと

前述のように、浄土真宗では追善供養の必要がないため、精霊棚・盆棚の飾りや、ご先祖様の供養を目的としたお供えはしません。
また、故人は仏様になっており、霊が死後の世界から帰ってくることはないため、迎え火や送り火は行わず、ご先祖様が乗る動物を模して作られる精霊馬も用意しません。

提灯については、先祖の霊を迎える意味合いでは飾りませんが、感謝を示す意味で仏壇の周りに飾る地域もあるようです。

浄土真宗のお盆の過ごし方

では、浄土真宗のお盆はどのように過ごすのでしょうか?お盆にやることを紹介していきます。

仏壇の掃除と飾り付け・お供え

浄土真宗でも、他の宗派と同様にお盆に入る前日までに仏壇を掃除して整えます。飾り付けやお供えは、以下のように行うのが基本とされており、地域の風習にも合わせながら、無理のない形で整えると良いようです。

夏用の打敷(うちしき)を敷く

具足と呼ばれる花立・香炉・火立(ロウソク立て)が置かれている前机(前卓)や上卓に、打敷(うちしき)と呼ばれる布を敷きます。浄土真宗の打敷は三角形で、お盆には、白・金・青のいずれかの色の、夏用のものを使用します。

供笥(くげ)に餅を乗せて供える

供笥(くげ)とはお供え物を載せる台で、本願寺派では六角形、大谷派では八角形のものを用います。これに、高位のお供え物とされるお餅(丸餅)を、鏡餅のように重ねて乗せお供えします。お菓子や果物などを一緒に供えることもあるようです。

白いロウソクを準備する

ロウソクの灯は、仏様の知恵の象徴と考えられており、読経や法要の際に灯します。可能ならば和ろうそくを準備するのが良いとされており、その場合は錨(イカリ)型と呼ばれる、くびれがあり先端に向かって太くなっている形の、白い和ろうそくを準備します。

青木や供花を供える

花立には、樒(シキミ)や青木(松などの常緑樹)、供花を飾ります。毒や棘があるもの、縁起が悪いとされるものは避け、仏花として売られているものや花持ちの良い季節の花を選ぶようにしましょう。

仏飯と線香を供える

仏飯(ぶっぱん)といい、新しく炊いたご飯を専用の器に盛ってお供えします。これは、仏様やご先祖様が召し上がるのではなく、食べものへ感謝の気持ちを表すとされています。本願寺派ではハスの花の蕾のように少し膨らんだ円錐形に、大谷派ではハスの実をイメージし円筒状に盛ります。

線香は、立てずに寝かせて炊くのが特徴です。香炉の大きさにより線香がはみ出してしまう場合は、線香を入る大きさに折って寝かせます。

盆提灯(切子灯篭)を飾る

他の宗派では、蓮の花などが描かれた盆提灯を飾ることが多く見られます。これは、ご先祖様の霊を家にお迎えする意味があり、浄土真宗では必要なとされていますが、仏壇の飾りつけの一環ということであれば、問題なく飾って良いとされています。
また、地域によっては提灯に縦長に切った和紙や布をあしらった「切子灯篭(きりことうろう)」を飾るところもあるようです。

お墓掃除とお墓参りをする

お墓掃除とお墓参りも、他の宗派と同じようにお盆の時期に行うことの一つです。ただ浄土真宗では、お墓は故人の魂が宿る場所ではなく、故人を偲びつつ、命のはかなさに気づいたり阿弥陀仏への信仰を深めたりする場所と考えられています。そのため、お盆のお墓参りも、ご先祖様の霊をお迎えしたりお送りしたりという意味合いとは異なり、ご先祖さまや阿弥陀仏に感謝し、仏様とのご縁を繋ぐためにお参りします。

お供えする線香は、仏壇の作法と同様に、1本を香炉に合わせて2つか3つに折り、寝かせてお供えします。

浄土真宗のお墓についてはこちらでも解説しています。
宗教による葬儀とお墓の違い・浄土真宗編

自宅で法要を行う

自宅に僧侶を招いて、法要を行うこともあります。特に故人が亡くなって初めて迎える初盆(新盆)では、僧侶を招いて法要を営み、親族を招いての会食などを行うことも多いようです。
僧侶を自宅に招いて法要を行う場合は、お布施とお車代を、僧侶が会食を辞退された場合には御膳料をお渡しします。それぞれ封筒を分け、お盆などに乗せて渡すのがマナーです。

法話会に参加する

寺院で開催される、歓喜会の法話会に参加する方も多いようです。
ご先祖様への感謝を深めるだけでなく、浄土真宗や阿弥陀仏の教えを学び、自身の生き方を見つめ直す機会にもなっているようです。

まとめ

浄土真宗における、お盆の意味や過ごし方について解説してきました。一般的なお盆をイメージさせる迎え火・送り火などは行いませんが、仏壇やお墓をきれいに整え、ご先祖様や仏様に想いを馳せて手を合わせて過ごすという点では、他の宗派と共通しています。

宗派によって考え方や作法に違いはあれど、現世を去り旅立った故人を想い、ご先祖様や神仏に感謝する心は、昔から変わらず私たち日本人の魂に根付いていると言えるのではないでしょうか。

浄土真宗では、人が亡くなると、阿弥陀仏により極楽浄土へ導かれるとされます。その極楽浄土に咲く、「最上の花」とされるのが蓮の花です。お盆に飾る蓮の花についてもまとめていますので、ぜひ合わせてお読みください。
お盆に飾る蓮の花とお墓の関係は?お盆のお供えは何にする?

2024年のお盆休みについてはこちらでご確認ください。
最大9連休!2024年(令和6年)お盆はいつ?期間、やることの基本を解説

浄土真宗において、毎年盛大に執り行われる行事「報恩講」についてもまとめています。
浄土真宗の「報恩講(ほうおんこう)」とは?