お役立ちコラム お墓の色々

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- 供養をきわめる -

宗教による葬儀とお墓の違い・天台宗編

葬祭基礎知識

宗教による葬儀とお墓の違い・天台宗編

宗教はもとより、宗旨によっても葬儀やお墓に違いがあります。これは、同じ宗教であっても、宗旨によって教理や信仰対象、よりどころとするお経や作法に違いがあるからです。

今回は天台宗の特徴と、それに由来する葬儀やお墓の特徴をご紹介いたします。

天台宗とは

天台宗は中国を発祥とする大乗仏教の宗派のひとつです。
釈尊の「全ての人に悟りの世界を」という教えに着目した中国の僧侶・智顗(ちぎ)が教義を体系づけました。智顗はその晩年を杭州の南の天台山で過ごし、弟子の養成に努めたことから「天台大師」と諡(おくりな)され、またその教学は天台教学と称されました。これが天台宗の起源となっています。

天台大師の教えを最澄(さいちょう)が日本に伝え、天台宗の開祖となりました。

天台宗の教え

天台宗では「誰もが平等に成仏できる」という仏教思想の原点が説かれ、お釈迦さま一代の教えの中で最もすぐれたものとされる妙法蓮華経(法華経)を拠りどころとしています。

天台宗はこの法華経を中心に、菩薩戒・顕教(けんぎょう)・密教・禅法などを融合した総合仏教といえます。「四宗相承」(ししゅうそうじょう)と呼ばれ、円(天台の教義)・密・禅・戒、そして念仏を、法華経の精神で統合していこうという考え方です。そして、すべての人、生物、存在には仏になる可能性があると教えています。

天台宗は、後に日本の仏教を代表する十三宗派を輩出したことでも知られ、信仰者の多い浄土真宗やその派生元である浄土宗、日蓮宗が教えを受け継いで誕生しました。また、禅宗の曹洞宗・臨済宗にも天台宗の教えが基盤にあります。

天台宗の葬儀の構成

天台宗の葬儀は、顕教法要・例時作法・密教法要の3つの儀式によって執り行われます。

天台宗では仏の教えを顕教と密教の二つに分類します(顕密二教)。顕教は「自身を救い他人を利する」という教えで、一方の密教は「仏と自己の一体を観念し、仏の力で仏の境地に達する」という教えです。この2つの教えによって故人の罪や穢れを拭い去り、故人や緑者と一緒に仏道に達するというのが、顕教法要と密教法要の考え方です。

顕教法要では、法華経を読誦して故人の生前の行いに対する懺悔を行います。懺悔には、仏性を高める意味合いがあります。

密教法要では、サンスクリット語をそのまま音写した「光明真言」を念誦して本尊を供養します。これによって故人が極楽浄土へ引導されることを祈ります。天台宗では一般に光明真言を「オン、アボキヤ、ビロシャナ、マカボダラ、マニハンドマ、ジンバラ、ハラバリタヤウン」と唱えています。

一方、これらの間に執り行われる例時作法では、阿弥陀経を読み上げて阿弥陀如来に救いを求め、故人が極楽浄土へ往生するように願います。これら3つの儀式により、故人を仏の道へと導いていきます。

また、天台宗の葬儀では、散華といって蓮の花びらに見立てた紙を柩などにまく儀式があります。これは、蓮の香りにより悪いものを払うと考えられているためです。

天台宗の葬儀の特徴

剃度式(ていどしき)

通夜の際に、水や香を使って故人の身を浄める儀式です。「髪の毛にカミソリをあて、剃る素振り」を見たことがあるかと思いますが、これは「仏の元に出家する」という考えに沿って行います。ただ、現在では実際に剃髪をすることはほとんどありません。

列讃(れっさん)

穏やかな曲と共に打楽器が鳴らされ、故人の生前の功徳を讃える列讃を唱えます。阿弥陀如来に迎えられて故人が仏となり、その成仏をお祈りすることになります。

奠湯(てんとう)/奠茶(てんちゃ)

棺を閉ざした後に、茶器を供えます。

引導、下炬(あこ)

導師によって引導が渡されたのち、たいまつや線香などによって空中に梵字が描かれます。故人を称える文が唱えられ、弔辞などを読んだ後に読経を行い、最後に回向文が唱えられて、葬儀が終わります。

天台宗の作法

焼香

焼香の回数には特に決まりはなく、寺院や地域によって違いがあるといわれていますが、左手を右手に添えながら額にいただく流れを3回繰り返すところが多いようです。

数珠

よく見かける丸い玉を連ねた数珠ではなく、正式には楕円形のかたちをした平たい数珠を用います。一般的には、108個の「主玉」と4つの「天玉」、そして1つの「親玉」が連なっており、親玉からさらに紐が伸び、その紐には「弟子玉」が連なっています。
親指と人差し指の間にひっかけるようにして持ち、弟子玉が連なっている部分を下側に垂らして礼拝します。

天台宗のお墓

天台宗では「さまざまな仏さまは釈迦牟尼仏が、縁によって私たちを救うために姿を変えて現れたものである」と考えるため、多くの仏さまを等しく祀ります。この特徴はお墓にもあらわれていて、具体的には墓石に刻む文字にも、お墓の形にも決まりはありません。

自由な文字を刻むことができますが、基本的には、法華経に由来する「南無阿弥陀仏」や「南無釈迦牟尼佛」、そして、〇〇家之墓とすることが多いです。

また、大日如来をあらわす梵字「ア」や、釈迦如来をあらわす「バク」、阿弥陀如来をあらわす「キリーク」が多く使われています。梵字は文字の頭に入れ、「梵字+〇〇家先祖代々之墓」と入れるのが一般的です。

その他、故人が好きだった言葉やデザイン性を重視した文字などを彫刻することもでき、今までのお墓の形にとらわれず、自由な発想でお墓を作ることができます。

五輪塔に文字を刻む場合には、禅宗系に見られる、下から「地・水・火・風・空」の梵字、日蓮宗にみられる「妙・法・蓮・華・経」のどちらかを用いることが多いです。

まとめ

今回は天台宗の特徴と、それに由来する葬儀やお墓の特徴をご紹介いたしました。同じ仏教でも他の宗旨との教えの違い、そしてそれに伴う葬儀や作法、お墓の違いを見ることができたと思います。

天台宗は後の十三宗派へと繋がることもあり、他の宗派と共通する作法や特徴が見られます。また「朝題目に宵念仏」という言葉に表されるように、いろいろな面において決まりごとが少ないことも特徴です。ご自身のお気持ちはもちろん、親戚や縁者の意見も取り入れながら、お近くの石材店で墓石に刻む文字や墓石の形などを吟味して、理想の供養の形を実現してみてはいかがでしょうか?