お役立ちコラム お墓の色々

お役立ちコラム お墓の色々

- 供養をきわめる -

お墓に菊をお供えするのはなぜ?

供養・埋葬・風習コラム

お墓に菊をお供えするのはなぜ?

お墓参りに、何を準備しますか?線香、故人の好きだったお供え物、お花などいろいろありますよね。さて、このお花ですが、お墓参りというと、菊を思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。それはなぜなのでしょう。
菊は色や形など様々な種類があり、多様なシーンで使われていますが、この菊が、お墓のお供えや仏花として好まれるのには、いくつか理由があります。

今回は、お墓によくお供えされる菊について、起源や由来、お墓のお供えとして好まれる理由、お供えする際の作法などを解説していきますので、お供えの花を選ぶ際の参考にしていただけたらと思います。

お墓のお供えや仏花として菊が選ばれる理由

古来より格調高い花とされてきたから

菊は、平安時代に中国から日本に入ってきたとされ、宮中で菊を楽しむ行事が開かれるなど、その清らかで凛とした雰囲気から、格調高い花として扱われてきました。
天皇家のご紋章になっていることからも、そのことが分かるのではないでしょうか。桜と並んで国花とも言われ、50円硬貨やパスポートにも菊があしらわれています。

鎌倉時代、後鳥羽上皇が菊を大変気に入り皇室の家紋としたのちは、公家や武家の間でも菊の花や葉が家紋として使用されるようになり、更には蒔絵や衣装の文様としても流行しました。

このような歴史から、格調高く美しい菊は冠婚葬祭など様々なシーンで使われるようになり、お墓に、故人や仏様への感謝や敬意を込めてお供えする花としても定着していったようです。

身近で伝統ある花だから

菊が日本に伝わって以降、その人気は庶民にまで広がり、日本の秋を代表する花として、そして薬草や観賞用として、古くから親しまれてきました。菊を楽しむ催しや、菊人形、菊をモチーフとした絵柄、さらには食用としても活用されるなど、日本の伝統や文化と深く関わっています。

昔から日本人に馴染みがあり、伝統ある花だからこそ、お供えとしてもよく使われるようになったようです。

邪気を払うとされているから

中国では昔から、菊は不老長寿や厄除けの力がある花とされており、菊と共にその考え方も伝わりました。

あまり知られていませんが、桃の節句で知られる3月3日の上巳(じょうみ)の節句や、5月5日の端午(たんご)の節句(菖蒲の節句)などと同じ五節句の一つに、9月9日の「重陽(ちょうよう)の節句」があります。重陽の節句は「菊の節句」とも呼ばれ、菊の花を飾ったり菊酒を飲んだりする地域もあります。これも、菊に厄除けや長寿・無病息災の力があると考えられていたためです。

厄除け、つまり邪気を払うとされていることからも、お墓のお供えや仏花としてふさわしいと考えられてきたようです。

花持ちが良く散らかりにくいため

菊が、他の花に比べて花持ちが良いというのも、お墓のお供えに選ばれている大きな理由です。つぼみの状態でも見た目がよく、花が完全に開いた後も長持ちします。

お墓は外にあるので、炎天下や風雪にさらされるなど、お供えした花が痛みやすい環境となります。すぐにしおれて枯れてしまっては残念ですし、片付けも大変です。このような理由もあり、花持ちの良い菊はお供えの花として重宝されてきたのです。

更に、枯れた後に散らかりにくいというのも、選ばれる理由の一つとなっています。

種類が豊富だから

種類が多いことも、墓前に供える花として菊が好まれる理由の一つです。
日本では江戸時代以降、様々な種類の菊が開発され、海外でも多くの種類が栽培されています。
様々な色・形・花の大きさのものがあるため、好みのものを選べますし、ワンパターンにならず、お墓に菊だけで飾っても見栄えが良くなるということも、魅力の一つのようです。

さらに、夏菊、秋菊、寒菊など、種類によって開花の時期が違うため、季節に関わらず手に入りやすいというのも、選ばれる理由となっています。

菊以外にお供えできる花

お墓や仏壇には、季節の花や、故人が好きだった花をお供えすることもよくあります。

例えばユリは、気品を感じ、大きな花がお墓の雰囲気を引き立ててくれるということで、お墓のお供えとしても人気があります。ただし、花粉が服やお墓に付くと、なかなか取れないため、花粉を取り除いてからお供えすると良いでしょう。

母の日でおなじみのカーネーションや、菊の仲間であるキンセンカ、春に咲きドライフラワーとしてもよく使われるスターチスも、花持ちが良いことからよく選ばれます。

その他、色合いや扱いやすさを考えると、春にはマーガレットや牡丹、夏から秋にかけてはリンドウ、グラジオラス、センニチコウ、ケイトウなども良いでしょう。

仏教では、菊やその他の花に樒(しきみ)を添えることもあり、地域や宗派によっては樒だけをお供えすることもあるようです。
また、神式のお墓には、お花ではなく榊(さかき)をお供えすることが一般的です。

樒と榊については、こちらの記事に詳しくまとめています。
樒(しきみ・しきび)と榊(さかき)の違い〜樒をお供えする意味や使われ方を紹介します〜

避けた方が良い花

お墓にお供えする花の種類に、特別な決まりはないと書きましたが、避けたほうがよい花、お墓には不向きな花があります。

バラやアザミのようなトゲのある植物、アサガオのようなツル状の植物、彼岸花やスズラン・スイセンなど毒のある植物は、縁起が悪い、触る人を傷つける危険があるなどの理由から、避けた方が良いとされています。

その他、時間が経つと花びらだけでなく花のまま落ちる、ツバキやサザンカ、それから黒い花も、縁起が悪いとして、お供えすることを控える地域もあります。香りが強い花も、周りのお墓まで影響することを考えて避けることが多いようです。

ただ、これらに当てはまっていても、故人が好きだった花であればお供えできることもあります。そのような場合、例えば、トゲを取り除く、お供えしたまま放置しないなど、他のお参りや掃除をする方への配慮をすると良いでしょう。また、宗派や地域によっても考え方の違いがあるので、周りや親族に事前に相談しておくと安心です。

お墓に花をお供えする時の作法

お墓の花の供え方について、特に決まり事はありませんが、一般的とされている作法を紹介しておきます。お墓の周りをきれいに彩ることも故人の供養につながりますので、参考にしていただけたらと思います。

花の本数は奇数本

お供えする花の本数に決まりはないですが、日本では3本、5本、7本など、奇数の花を飾ることが一般的です。これは、中国から伝わった陰陽の考え方において、偶数を陰数、奇数を陽数とする考え方があり、奇数は縁起の良い数とされてきたためです。
花立ての大きさに合わせて準備すると良いでしょう。

バランスに気をつける

花は、お墓参りをしている人に向けてお供えするのが一般的です。正面から見て菱形に見えるように花を配置すると、バランスよく飾ることができます。
また、お墓には左右に1つずつ花立てがあることが多いので、その場合は花束を2本用意し、本数や花の位置など、左右対称に飾りましょう。

カラフルに飾る

色も、これといって決まりはありません。
四十九日までは白い花、法事の際には白・紫の花が良いとされており、亡くなってから日が浅い間は、白を中心に淡い色を選ぶことが多いようですが、その後お墓参りをする際は、カラフルに飾って問題ありません。

綺麗に飾られた花を見ることで、仏様や故人、そして手をあわせる私たちの心も清めると考えられています。また、美しい花にも最期が訪れるということを、胸に止める意味もあるようです。

お墓のお供えでは、3色の場合は白・黄・紫、4色の場合は白・赤・黄・紫、5色の場合は白・赤・黄・紫・ピンクとされることが多く、菊をお供えする場合もこれを基本にすると、迷わず選ぶことができるでしょう。

造花でもOK

お墓に造花をお供えすることは、マナー違反ではありません。近年では、お墓に頻繁に通えない方も多いため、花が枯れてお墓を汚す心配がなくなることから、造花をお供えするケースも増えています。
ただ、考え方はそれぞれで、やはり生花の方が良いと考える人もいるため、家族や親族など周りの人の理解を得ておくと良いでしょう。

まとめ

お墓にお供えする花の定番とも言われる菊を中心に、選ばれる理由やお供え方法などを解説してきました。
菊は、日本に古くから伝わり親しまれ、お墓や葬儀に限らず、日本人の日常や文化に根付いている花です。そんな伝統と格式を備え、花持ちの良い菊の花をお墓にお供えするようになったのは、故人や先祖を癒したい、心安らかに眠って欲しい、という気持ちの現れだったのかもしれません。

菊をお供えする際には、この花に込められた意味や、受け継がれてきた伝統を感じながら手を合わせてみてはいかがでしょうか。

お墓に花をお供えする際のマナーや花の選び方については、こちらの記事でも解説していますので合わせてお読みください。

なぜ?お墓に花を供える理由とは?
お彼岸に供える花の選び方 菊じゃなくても大丈夫
お盆のお墓参りで避けた方がいい花5選