お役立ちコラム お墓の色々

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樒(しきみ・しきび)と榊(さかき)の違い〜樒をお供えする意味や使われ方を紹介します〜

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樒(しきみ・しきび)と榊(さかき)の違い〜樒をお供えする意味や使われ方を紹介します〜

お墓や仏壇・葬儀・法要などでは、樒(しきみ・しきび)という濃い緑の枝葉をお供えすることがあります。同じく枝葉をお供えする植物として、神道で使う榊(さかき)がありますが、見た目がよく似ているため、お供えの準備をする際に迷ったり間違えそうになったりすることもあるようです。
しかしこれらは、種類も特徴も異なる植物で、その意味や使われ方にも違いがあります。

今回は、そんな樒と榊の違い、樒をお供えする意味や使われ方などを解説していきます。お墓参りや仏壇のお供えをする際の参考にしてみてください。

樒(しきみ・しきび)とは?榊(さかき)とは?

樒も榊も、花ではなく、葉や実だけがついた状態で使います。それぞれ、どういう場面で使われているのでしょうか。

樒(しきみ)は、地域によっては「しきび」とも呼ばれ、仏事に使われます。お墓や仏壇にお供えすることがあり、葬儀に関わる飾りや儀式にも使用されることがあります。

「しきみ」という名前の由来は、毒を持っており「悪しき実」と呼ばれたことから「しきみ」と呼ぶようになった、四季を通して芽を出すことから「四季芽」と言われた、実の形が平たいことから「敷き実」と言われていたなど、諸説あるようです。

榊(さかき)は、木へんに神と書くところからも分かる通り、神事に使われ、神棚や祭壇・神式のお墓にお供えされます。神事における玉串奉奠(たまぐしほうてん)という儀礼で神前に捧げる玉串は、榊に木綿や紙の飾りをつけたものです。
名前の由来は諸説ありますが、一説には、神と人との境であることから「境木(さかき)」と呼ばれるようになったと言われています。

樒(しきみ・しきび)と榊(さかき)の違い

樒と榊は、どちらも楕円形で濃い緑の艶のある葉をつけていますが、植物の種類が違い、それぞれに特徴も異なります。

樒(しきみ・しきび)の特徴

樒(しきみ・しきび)の特徴

樒の葉は比較的柔らかく、少し波打ったような形をしています。葉が枝先に集まるように付いていて、向きが不揃いなのが特徴です。春になると、枝先の葉の根本あたりに薄い黄色の花を咲かせます。
別名「花芝・花柴(はなしば)」とも呼ばれ、花言葉は「甘い誘惑・猛毒」です。仏事で多く使われる樒ですが、この花言葉が示す通り、じつは木全体に毒性を持っています。特に実は、食べると中毒症状を起こすので扱いには注意が必要です。また、「香の木(こうのき)」とも呼ばれ、甘くはないですが独特の強い香りを発し、線香や抹香の原材料としても使われます。

榊(さかき)の特徴

榊(さかき)の特徴

榊の葉は、櫁に比べて硬く、形も平べったい印象です。櫁と大きく違う特徴は葉のつき方で、枝の下の方から左右交互に並んでおり、同じ方向を向いています。緑色も比較的濃く、香りはほとんど感じられません。初夏の頃には、それぞれの葉の付け根の部分から白く小さい花を咲かせます。

樒(しきみ・しきび)と榊(さかき)の見分け方

違いが比較的分かりやすいポイントをまとめておきます。
葉が1箇所から複数枚出ていて、薄緑色で香りの強いのが樒。
葉が左右交互に一枚ずつ付いて、濃い緑で香りがほとんどしないのが榊です。
迷った時にはこれを参考に見比べてみてください。

樒(しきみ・しきび)をお供えや仏事に使う理由

仏事に使う植物として毒のあるものは、本来タブーとされているにもかかわらず、樒が、仏事や、お墓・仏壇のお供えに用いられる理由はいくつかあります。

蓮の花の代わりとして

蓮の花・蓮華は極楽浄土に咲く花とされ、古くから仏教と深い関わりを持つ花です。樒は、蓮華の中でも青蓮華(しょうれんげ)と呼ばれるものと葉や花の形が似ていることから、仏教の儀式でよく使われるようになったと言われています。
また、漢字に使われている「密」の字は、真言宗の開祖である空海(くうかい)が、密教の修行で青蓮華の代わりに樒を使っていたことが由来であるとも伝えられています。

野生の動物や虫から遺体を守るため

現代では人が亡くなると、ほとんどが火葬されますが、昔は土葬が一般的でした。そのため、遺体の匂いを消し、獣や虫を遠ざけて故人の安らかな眠りを守るため、強い香りや毒性を持つ樒をお墓の周りに植えたり葉や枝を撒いたりしていたようです。

そのなごりで、今でもお墓や寺院に植えられていたり、お墓や仏壇にお供えされたりしているようです。

清め・浄化のため

日本では昔から、香りには、穢れを祓って場を浄化する力があると考えられてきました。さらに前述のように、樒の強い香りが獣や虫を遠ざけることからも、悪いものを寄せ付けず、場を清浄にするという意味合いを込めて、樒が用いられています。

清浄な水を保つため

樒には、花をお供えする際に水を腐りにくくする働きがあります。お墓や仏壇用の花束に樒が添えられているのには、上記の仏教的な理由や浄化の目的の他に、水を清浄に保ち、花を長持ちさせるという意味もあるようです。

樒(しきみ・しきび)はどんな場面で用いられるの?

仏事と深い関わりのある樒ですが、実際にはどのような場面で用いられるのでしょうか?

仏壇やお墓のお供え

お墓に虫や動物を寄せ付けず場を浄化する、水を長持ちさせるなどの意味を込めて、お墓や仏壇にお供えする菊などの花に、樒を添えることがあります。

また、宗派や地域によっては、お墓や仏壇に、生花ではなく樒のみをお供えする場合もあります。
例えば日蓮正宗では、樒のみを仏壇やお墓に供えます。浄土真宗では、水を入れた華瓶(けびょう)と呼ばれる壺型の仏具に樒を挿し、仏壇に供えるのが一般的です。前述でご紹介した空海が開祖の真言宗でも樒をお供えするところがあります。
また、愛媛県では、お墓の花立に樒の束をお供えするところが多くあるようです。

葬儀の飾りや儀式

お墓や仏壇だけでなく、葬儀でも祭壇に樒が飾られることは少なくありません。故人を安置する際の枕飾にも、花立に1本の樒を挿します。

地域による風習では、関西地方を中心に葬儀会場の門前に花輪や供花の代わりに「門樒(かどしきみ)」という樒でできた大きな飾りを置くところがあります。

また、故人が亡くなった時に故人の唇を湿らせる、「死に水」「末期の水」という儀式に1枚の樒の葉を使う、納棺の際に遺体の下に樒を敷き詰めるといった風習が残っているところもあります。

ただ、年々葬儀の規模を小さくするケースが増えていることや、現代になって遺体を清潔に保存できるようになったことで、大きく場所をとる門樒(かどしきみ)の代わりに板や紙に名前を書く、板樒(いたしきみ)・紙樒(かみしきみ)を使うことが増えていたり、「死に水」には筆やガーゼを使用したりと、樒を使わないケースも増えています。

抹香(まっこう)として

ここまでにご紹介してきた、樒の生花としての使われ方ではありませんが、仏事において多く登場するこちらもご紹介しておきます。
抹香(まっこう)とは、葬儀や法要で行われる焼香で、指でつまんで香炉に入れるお香のことです。
仏教において、香りは仏様の食べ物と言われ、場の浄化の力もあるとされていることから、昔は、沈香(じんこう)や白檀(びゃくだん)といった植物が使われましたが、現在は樒の樹皮と葉を乾燥させ粉末にしたものが、多く用いられているようです。

まとめ

樒(しきみ・しきび)と榊(さかき)の違い、樒の使われ方についてご紹介してきました。

樒は、故人の安らかな眠りを祈り、穏やかに見送るために昔から使われていきました。現代では技術の進歩により、遺体の保存や匂い消しという観点では使われなくなりましたが、死者を丁寧に弔う風習や仏教の考え方などと交わりながら長年使われてきたことで、故人の魂を大切に思う心を表すものにもなっているのではないでしょうか。

樒も榊も普段は見る機会が少ないため迷うこともあると思いますが、お墓参りなどのタイミングで迷う際には、今回の記事を思い出していたけたらと思います。

お墓参りなどにおけるお花のお供えについてもご紹介していますので、合わせてお読みください。
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お墓参りの作法の確認は、こちらの記事をご覧ください。
お墓参りの基本や作法をあらためて押さえておきましょう