お役立ちコラム お墓の色々
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- 供養をきわめる -
花火の起源を探る〜打ち上げ花火に込められた鎮魂の想い〜
花火・花火大会といえば、日本の夏の風物詩の一つとなっています。今年は、コロナ禍以降数年ぶりに再開されるお祭りや花火大会もあり、花火を見に出かける方も多いのではないでしょうか。
華やかで楽しいイメージのある花火ですが、古くから、供養や鎮魂といった亡くなった方への慰霊の想いや、平和への祈りなどが込められながら、日本の文化として定着してきた歴史があります。この記事では、その辺りも掘り下げながら、花火の起源や歴史について解説していきます。
込められたメッセージにも想いを馳せながら、今までと少し違った視点でも、花火を眺めていただけたらと思います。
花火のルーツ
花火の起源は古代中国
花火の起源は、古代中国で使われていた狼煙(のろし)であると言われています。その後、火薬の発見と共に武器や花火が開発され、イスラム諸国、ヨーロッパへと伝わったようです。
ヨーロッパ各地では、キリスト教の行事や、貴族のお祝い事などを盛り上げるために花火が用いられた記述があり、これが現在の観賞用花火、打ち上げ花火の原型となったと考えられています。
日本への伝来は武器としての火薬から
日本には、まず火薬が武器として伝わりました。文永11年(1274年)の蒙古(もうこ)襲来で、蒙古軍が使用したのが最初と言われています。さらに天文12年(1543年)、種子島に火縄銃と共に火薬の製造技術が伝来したことがきっかけで、火薬が本格的に普及することとなったようです。一説によると、この時に花火の製法も伝わったのではないかとされています。
花火鑑賞のはじまり〜あの家康も花火を鑑賞していた〜
打ち上げ花火・花火鑑賞の記録としては、天正10年(1582年)にキリシタン大名の大友宗麟がイエズス会宣教師に花火を打上げさせた、天正17年(1589年)に伊達正宗が米沢城で唐人による花火を楽しんだ、慶長18年(1613年)イギリス国王ジェームス1世の使者が徳川家康に花火を献上したなどのエピソードが残されています。一説には、家康が家臣にこの技術を故郷である三河(現在の愛知県東部)に持ち帰らせたとも伝えられています。
江戸時代になり戦がなくなると、花火を専門に扱う火薬屋が登場。当初、三河地方が徳川幕府によって唯一、火薬の製造・貯蔵を許可されていたとされ、このことをきっかけに花火作りが盛んになったようです。現在でも「三河花火」と呼ばれるなど、この地域の伝統産業となっています。その他、長野県、新潟県、秋田県、茨城県といった徳川家にゆかりのある地方も、花火の産地となっています。
花火大会のルーツと、込められた想い
鎮魂・供養の心と花火大会
現在の花火大会のルーツは、東京三大花火大会の一つに数えられる「隅田川花火大会」にあると言われています。江戸時代、「両国の川開き」と言われる隅田川の川開きに合わせて、花火師の玉屋・鍵屋が自身の花火を宣伝する目的で花火を打ち上げたのが始まりのようです。花火に合わせて「たまや〜」「かぎや〜」という掛け声が上がることがありますが、これは、双方の花火が上がる時にそれぞれ屋号を掛け声で呼んでいたことが由来となっています。
隅田川の花火大会については、「享保18年(1733年)5月28日の両国川開きにて、大飢饉や疫病による死者供養と災厄除去を祈願して花火を打ち上げたのが始まり」とも伝えられていますが、このエピソードについては、真偽が定かではなく、明治時代以降徐々に広まった伝承であるとの説もあります。
とはいえ、日本では古くから火は神聖なもの考えられ、お盆の迎え火・送り火や各地に伝わる火祭りのように、祈りや儀式に欠かせない存在とされてきました。そのため、起源については諸説ありますが、花火の文化が広まるに連れ徐々に、鎮魂、供養の想いが込められるようになり、自然と人々にも受け入れられていったのでしょう。
こうして全国に花火を鑑賞する文化が広がり、鎮魂や供養・慰霊、平和への祈りなどの意味を込めた花火大会も多く開かれるようになっていきました。
鎮魂・慰霊・供養などを目的とした全国の花火大会
日本全国の花火大会には、鎮魂の祈りや供養の想いを込めたものも多く開催されていますので、有名なものをいくつかご紹介します。
三重県の「熊野花火大会」は300年ものもの歴史がある花火大会です。お盆の初精霊供養に花火を打ち上げ、その花火の粉で燈籠焼を行ったことが始まりと言われ、現在でも追善供養やお盆の迎え火・送り火としての意味合いを込めて、お盆の日程に合わせて盛大に行われています。(2023年は8月17日に予定されています)
日本三大花火大会の1つとして長い歴史を持つのが、新潟県の「長岡まつり大花火大会」です。明治12年(1879年)に最初の花火大会が開催されて以来、100年以上に渡り受け継がれてきました。その後、第二次世界大戦末期の長岡空襲の翌年に行われた「長岡復興祭」が前身となり、戦没者の慰霊、復興の尽力した先人への感謝、世界平和を願う気持ちを込めて花火大会が続けられています。花火大会は毎年8月2日3日に開催されますが、長岡空襲の始まった時刻(8月1日午後10時30分)にも花火を打ち上げ、市内の寺院の協力を得て同時刻に慰霊の鐘が鳴らされます。
こちらも日本三大花火大会の一つである、茨城県の「土浦全国花火競技大会」は、航空隊殉職者の慰霊・鎮魂と、関東大震災からの復興を目的に、大正14年から開催されている花火大会です。実りの秋を祝い、農民の勤労を慰めるという意味もあり、夏ではなく、毎年11月に開催されています。(2023年は11月7日に予定されています)
先祖への感謝や平和への祈りと共に
日本の夏の行事として欠かせないものとなっている花火。はじめは、美しさを楽しむことから始まったものが、日本人が大切にしてきた「死者の魂を慰め平和を願う心」とも徐々に融合し、その華やかさと儚さが愛されるようになっていきました。
今年はぜひ、先祖への感謝や平和への祈りと共に、花火を見上げてみてはいかがでしょうか。
日本には花火以外にも、仏壇やお墓でローソクを灯し故人や先祖に手を合わせる、お盆にはご先祖さまの道を照らす迎え火・送り火を焚き、提灯に火を灯すなど、火を使った作法が生活に根付いています。
お盆やお彼岸などでお墓参りに行く際の作法もまとめていますので、参考にしてみてください。
◆【2023年】お盆・秋のお彼岸はいつ?期間・やることの基本を解説
◆お墓参りの基本や作法をあらためて押さえておきましょう