お役立ちコラム お墓の色々
お役立ちコラム お墓の色々
- 供養をきわめる -
LGBTQカップルが同じお墓に入るためには
LGBTQとは
LGBTQとは、性的マイノリティ(性的少数者)の総称として使われる言葉です。
以下の性的指向や性自認を意味する英単語の頭文字をとって作られました。
・Lesbian(レズビアン:女性同性愛者)
・Gay(ゲイ:男性同性愛者)
・Bisexual(バイセクシュアル:両性愛者)
・Transgender(トランスジェンダー:出生時に割り当てられた性別と性自認が異なる人)
・Queer/Questioning(クイア/クエスチョニング:自らの性のあり方について特定の枠に属さない人、わからない人など)
調査機関・調査方法によってデータに差はありますが、日本におけるLGBTQの割合は現在約3%〜10%と言われています。
性的少数者の権利を求める運動が活発となったのは1980年代のアメリカです。その後2000年代に入って日本でも少しずつ認知が進んできました。
日本では同性結婚が法的に認められてはいませんが、2015年に東京都渋谷区で同性カップルをパートナーとして証明する制度(パートナーシップ証明)が導入されるなど、多様な性のあり方を認める動きが全国に広がっています。
LGBTQカップルが同じお墓に入ることは、法的に可能か?
「祭祀に関する権利の承継」について定めた民法第897条には、次のような記述があります。
①系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
②前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
以上のように、お墓を引き継ぐ“祭祀主催者”についての定めは明確になっていますが、埋蔵される遺骨に関する定めは何も書かれていません。
つまり祭祀主宰者の同意を得られれば、法的には誰の遺骨でも埋蔵することができます。
墓地には「管理規約」がある
墓地には管理規約が存在し、そこで「納骨できる人の範囲」を定めている場合があります。
そのため、たとえば「埋蔵できるのは原則として3親等以内の親族まで」といったような感じで管理規約に抵触する場合、LGBTQカップルが同じお墓に入ることはできません。
つまり、「LGBTQカップルが同じお墓に入るための条件」は、
・祭祀承継者の同意
・墓地の管理規約に抵触しないこと
となります。
その他の課題
「LGBTQカップルが同じお墓に入ることに法的な問題はない」とはいえ、課題は少なくないのが現状です。たとえば、仏教の主要宗派でのLGBTQの受け入れは、それぞれの寺院の判断に委ねられていることが多く、非親族同士の埋葬が断られるケースもあります。
ただ、受け入れをする寺院も少しずつ増えてきています。今後さらに理解や協力が広がれば、受け入れ体制も充実してくるかもしれません。
LGBTQカップルは、どのように供養してもらえる?
LGBTQカップルであるからといって、供養の方法が変わるわけではありません。基本的には一般的なカップルと同じように供養されます。傾向としては、先祖代々のお墓よりも、パートナーと2人だけの夫婦墓(めおとばか、ふうふばか)などが選ばれているようです。
夫婦墓とはご先祖が代々眠っているお墓とは異なるもので、夫婦2人だけが納骨され、継承を前提としないお墓のことです。
夫婦が2人ともお墓に入った後は永代供養となり、一定期間はお寺や霊園の管理者の手でお掃除やお参りなどの面倒を見てもらえます。そして、あらかじめ決めておいた33回忌、50回忌などの期間が過ぎるとお墓は解体され、遺骨は合祀墓に移されるというものです。
夫婦墓は墓石に特徴があり、先祖代々のお墓ではないので「~家之墓」とは刻みません。
刻まれる文字で多いのは夫婦の連名です。石材や形もある程度好きなように選べるため、夫婦の想いをデザインに反映させることもできます。
なお、夫婦墓についての詳細は、以下の記事をご覧ください。
◆近年増えている夫婦墓とは?
その他、近年は血縁などに縛られない自分らしい埋葬方法の1つとして「墓友(はかとも)」があります。墓友は、費用を出しあって1つのお墓を買い、そこに一緒に入るという交友関係です。墓友自体にLGBTQとの強い関連があるわけではありませんが、「血縁ではない人と一緒に埋葬される」ことは、今後も増えていくのかもしれません。
まとめ
多様な性のあり方を認める動きが全国に広がりつつありますが、お墓や供養に関してはまだまだ進んでいるとはいえないかもしれません。
「先祖や故人を供養するため」だけではなく、「今を生きる家族や親族のつながりを象徴する」側面を持つのがお墓です。
そんなお墓や供養が悩みの種になることなく、家族の絆を強くするものとなることを願っています。