お役立ちコラム お墓の色々
お役立ちコラム お墓の色々
- 供養をきわめる -
似ているけれど実は大きく違う「遺書」と「遺言書」
遺書と遺言書の違い
自分の死後に言い残す言葉を一般的に「遺言(ゆいごん)」と言います。この遺言を記載した書面が遺書(いしょ)です。遺書には決まった形式や書かなくてはならない内容は定まっておらず、自由に書くことができます。
ただし、遺書には法的効力は伴いませんので、残された家族や友人等に宛てたプライベートなメッセージや、想いなどがつづられることが多いです。
一方、民法が求める一定の方式に従って作成されたものを遺言(いごん)といい、その書面を「遺言書(いごんしょ)」といいます。
遺言は「ゆいごん」「いごん」と読み方が分かれますが、法律の専門家は「いごん」を使用します。「遺言(いごん)」は法的概念です。残された家族に自らの財産を自らの想いに沿って相続してほしい時などに遺言を残し、法の定める要件を満たせば、法的な効力が認められます。
※以下、法的効力を伴うものを「遺言(いごん)」といたします。
遺言(いごん)の内容
遺書の内容は自由ですが、遺言(いごん)の内容は厳格に定められています。
遺言制度は、相続にあたり被相続人(亡くなって財産を残す人)の意思を尊重するためのもので、民法では遺言できる事項が法定されています。これを遺言事項といいます。遺言事項は、大きく4つに分類できます。
①遺言者(遺言を残す人)の意思で、民法に定められている法定相続制度とは異なる相続方法とすることを認める事項
相続人の廃除又は廃除の取消しや相続分の指定、遺産分割方法の指定、遺産分割の禁止など
②遺言者の意思で、相続以外の方法で財産を処分することを認める事項
遺贈(遺言者の財産を無償で譲ること)に関する事項、財団法人設立の寄付行為、信託の設定
③身分関係に関する事項
認知や、未成年後見人・未成年後見監督人の指定
④遺言の執行に関する事項
遺言執行者(責任をもって遺言を実行する人)の指定
遺言(いごん)がない場合の法定相続
遺言(いごん)が残されていないときは、民法に定められた法定相続人が、法定相続分にしたがって相続することになります。
たとえば、被相続人Aさんに残された家族が、父と母、姉と弟、妻と長男・次男という場合、法定相続人は、妻と長男・次男であり、法定相続分は妻2分の1、長男4分の1、次男4分の1となります。
上記のような法定相続制度に従いたくない場合に遺言書を作成する大きな意味があります。
遺言書(いごんしょ)はどのようにつくるのか
遺言書(いごんしょ)には大きく分けて3種類あり、それぞれ決められた様式があります。遺言書は様式の条件を満たしていることが重要です、条件を満たさない場合は法的効力が認められません。
①自筆証書遺言
遺言者が、遺言の全文・日付・氏名を自書し、捺印した遺言です。
費用もかからず、手軽に作成できるので、もっとも利用されている方式です。
日付の記載や押印を忘れて無効となってしまう、自書でなく無効となってしまう、内容があいまいで執行できない、保管中に紛失してしまった、などのリスクも大きいやり方です。
②公正証書遺言
遺言者の指示により公証人が筆記した遺言書に、遺言者、公証人および2人以上の証人が、内容を承認の上署名・捺印した遺言です。
法律のプロが作成するので、形式面、内容面のミスがなく、作成後は公証役場で保管されるので紛失や盗難の危険もありません。また家庭裁判所の検認手続も不要です。
③秘密証書遺言
遺言者が遺言書に署名・捺印の上封印し、封紙に公証人および2人以上の証人が署名・捺印等をした遺言です。
遺言の内容を公証人に知られたくないが、確かに遺言書を作成して、この封筒にいれたという事実を、公証人らに証明してもらうものとなります。
公証人が内容をチェックするわけではないので、内容に不備があって執行できない場合や、自己保管による紛失や盗難のリスクがあります。
遺言(いごん)の法的効力の限界
遺言者の意思を尊重する遺言制度にも、いくつかの限界はあります。
遺留分
遺言でも奪うことができない相続人の権利として、遺留分があります。これは遺族の生活保障という観点から、最低限、相続人に残されなくてはならない遺産の割合を定めたものです。遺留分は、兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者、子、直系尊属)に認められています。
公序良俗違反
遺言者の意思を尊重するといっても、それが公序良俗に違反する場合は、法的効力は認められません。
詐欺、強迫、錯誤による遺言
遺言が詐欺や強迫によってなされたときは取り消すことができ、また、錯誤(勘違い)によってなされたときは無効となります。
後悔のない遺言(いごん)を
遺書と遺言書(いごんしょ)の違いに注意し、法的効力を持たせたい場合は、様式に従って遺言書を作成しましょう。遺言(いごん)の効力が出るのは、自分が亡くなった後です。あいまいな遺言で残された家族が困らないよう、専門家に相談し、確認してもらうこともひとつの手です。