お役立ちコラム お墓の色々
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- 供養をきわめる -
「遺言」と似ているけど違う。「死後事務委任契約」とは
いわゆる「おひとりさま」や、高齢の夫婦で身寄りがない、あるいは親戚が遠方にいて頼むことができない場合でも、自分の葬儀やお墓などに関して「こうしてほしい」という希望を持つ方は多いと思います。そして、人に迷惑をかけたくないと、自分の葬儀やお墓、永代供養の手配をしておく人も多いそうです。
しかし、自分の口座の預金を他人が引き出すことはなかなかできません。またタンスなどに現金を置いていても、きちんと自分の希望を残しておかないと、せっかくのお金が国庫に納められることもあるそうです。
生前に自分の希望を明確にするものとして「遺言」が頭に浮かぶ方も多いと思いますが、実は遺言だけで全てをカバーできるわけではありません。今回は、自分が亡くなった後の希望をどうすれば実現できるのか見ていきましょう。
死後事務とは
死後事務とは、亡くなった後の事務的な手続きのことです。
代表的なものとして以下の11項目があげられます。
①家族・親族・友人への連絡
②葬儀・火葬・埋葬・納骨などの手続き
③お墓・供養に関する手続き
④役所・関係機関への届出(死亡届、戸籍関係、保険・年金・運転免許証など)
⑤生前の医療費・施設利用費など未払分の精算、謝礼金の支払
⑥車等を含む遺品整理や、不動産(住まい)の処分
⑦老人ホーム等の施設利用料の支払い、及び入居一時金等の受領
⑧公共サービス等の名義変更・解約・清算手続き
⑨インターネット上のホームページ、ブログ、SNS等への死亡の告知、または閉鎖、解約や退会処理など
⑩保有するパソコンの内部情報の消去など
⑪その他(勤務先の退職手続き、ペットのことなど)
実はこれらは遺言で依頼できる内容ではなく、仮に遺言書に記載したとしても、法的強制力がありません。
自らの死後の手続が、望んでいたとおりになされるようにするには、遺言書の他に、任意後見契約などと合わせて、死後事務委任契約を作成しておくことが大切です。
本人が第三者(個人、法人を含む) に対し、亡くなった後の諸手続、事務等についての代理権を付与して、死後事務を委任する契約を「死後事務委任契約」といいます。契約であるため、本人に意思能力が必要です。
「成年後見制度」や「遺言」との違い
死後事務委任契約と似たようなものに、「成年後見制度」や「遺言」があります。
それぞれ役割は異なりますので、注意が必要です。
成年後見制度
成年後見人とは、認知症や知的障害などの精神上の疾患により、判断能力が著しく低下した方の財産を保護するために、家庭裁判所から選任されて、ご本人の財産保護や身上監護を行う者のことです。その方が亡くなるまでのサポートとなり、亡くなった時点で契約は終了します。
遺言
遺言は死亡後に執行されますが、記載して法的強制力を発揮するのはあくまでも財産承継についてのみとなります。
一方で、死後事務委任だけを作っておいても財産承継の部分については対応できません。遺言だけ書いても死後事務については任せることができません。両方が必要となります。
死後事務委任契約
死後事務委任契約は資格が必要な制度ではありません。
残された家族や親族が死後事務をやってくれるのであれば、誰かに死後事務を委任する必要はありません。ただ、いわゆる「おひとりさま」や、高齢の夫婦で身寄りがない、あるいは親戚が遠方にいて頼むことができない場合は、弁護士や司法書士などが、生前に委任契約を結んで手続きを代わりに行うこともあるそうです。
死後事務を誰に委任する?
弁護士や司法書士などのほかに税理士、行政書士、NPOや企業、一部の社会福祉法人など様々な団体が今、死後事務の委任を受けています。
また日本司法書士会連合会では、身寄りがない場合、遺言書を作るときに、一緒に死後事務委任の契約をすることを勧めているということです。
死後事務委任契約にかかる費用
費用を亡くなった後に支払うことはできないので、依頼の履行にかかる実費とその報酬を、生前にあらかじめ委任した人に預けておくというケースが一般的です。事務手続きの内容や数によっても費用は大きく異なりますが、例えば、「役所への死亡届の提出、戸籍関係の諸手続き」だと30,000円、「健康保険、公的年金等の資格抹消手続き」だと50,000円といった感じで、合計数十万円から100万円以上が必要になるようです。
まとめ
亡くなった後の手続きは、これまでは残された家族が行うことが一般的でした。ただ、65歳以上の単身世帯は2040年には男女とも2割を超えるという推計があり、家族・親族以外の人に死後事務を託すケースは、今後も増えていくことでしょう。ただ、例えおひとりさまであっても、あらかじめ希望を伝えておけば、自分の望む最期を迎えることができます。
また、おひとりさま以外でも自分が亡くなった後の葬儀やお墓、供養に対して望まれるカタチがある場合、死後事務委任をすることで、そのご希望が叶えられます。例えば、本人はお墓を望んでいても、遺族が永代供養にしてしまうケースもあり、これを避けるために死後事務委任を使うこともあります。
気になることがありましたら、実績のある行政書士や司法書士、弁護士等の専門家、または、ご供養も関連するようであれば当会まで一度問い合わせてみてはいかがでしょうか。