お役立ちコラム お墓の色々

お役立ちコラム お墓の色々

- 供養をきわめる -

インド・ジャイプールの青い陶器「ブルーポタリー」を贈り物に〜美しさに秘められた手仕事の魅力とは〜

供養・埋葬・風習コラム

大切な人へのプレゼントを選ぶ時、「せっかくなら、相手の笑顔が浮かぶような、特別感のあるものを贈りたい」と考える人は少なくないでしょう。しかし、「いざ選ぶとなると、何がいいか悩んでしまう」「結局いつもと同じような選択になりがち」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そんな時におすすめしたいのが、紀元前3000年のエジプトに起源を発しインドで発展した、鮮やかなブルーと温かな手仕事が魅力の「ブルーポタリー」です。お皿、花瓶のほか、小物入れ、アクセサリーなど可愛い雑貨もあり、贈り物や暮らしのアクセントとして、日本でも人気が高まっています。

今回は、多くの人々に愛されているインドの伝統工芸品「ブルーポタリー」の魅力や歴史、職人たちが守り続けるその技術についてご紹介していきます。

インド・ジャイブールの伝統工芸品、ブルーポタリー

ブルーポタリーとは?

ブルーポタリーは、インド北西部の都市、ジャイプールで受け継がれてきた伝統工芸品です。

ブルー(青い)ポタリー(陶器)という名前の通り、深く澄んだブルーが印象的な陶器で、藍色やスカイブルーのほか、黄色や緑を基調とした鮮やかな色彩、そして植物や動物をモチーフにした素朴な模様や絵柄が目を惹きます。

また、絵付けや彩色は、熟練した職人たちの手によって一つひとつ丁寧に行われており、同じものは二つとしてありません。その技術と、手仕事ならではのあたたかさや素朴なタッチも、ブルーポタリーの大きな魅力です。

こうした独特の色合いや温かな手仕事の風合いから、ブルーポタリーはインド国内だけでなく世界中にファンを広げており、近年では、器だけでなくアクセサリーやインテリアとしても人気が高まっています。

ブルーポタリーの産地、ジャイプール

ブルーポタリーの産地であるジャイプールは、インド北西部のラージャスターン州の州都で、インドの首都ニューデリーから南西約260kmに位置しています。

かつてこの地方にあった「アンベール王国」が、首都をアンベールからジャイプールに遷都した1727年に新しく建設された都市で、この時の国王であったサワーイー・ジャイ・シング2世の名前にちなんで、「ジャイ(ジャイの)プール(城壁に囲まれた町)」と名付けられました。その後、インドがイギリス植民地となった時代にもイギリスに従属する「ジャイプル藩王国」として存続し、インド独立と共にインドに併合されました。

その街並みや歴史的建造物、活気のある市場などが観光客にも人気の都市で、中でも旧市街は、その昔、ピンク色が好きだったイギリスの王子を迎えるために、旧市街の城壁や建物がピンク色で統一されたことから「ピンクシティ」の愛称を持ち、世界遺産にも登録されています。(日本人の目には淡い赤レンガ色に見えます。)

また、現在も王族の住居となっている宮殿は、「シティパレス」「ロイヤルパレス」としてその一部が公開されており、その中の一室、Sukh Niwas Blue Room(スク・ニワス・ブルー・ルーム)通称「青い部屋」は、壁や天井一面がブルーポタリーのタイルを思わせる白地にブルーの装飾で埋め尽くされ、インスタ映えスポットとして人気です。(スク・ニワスは歓喜・幸福の間の意味)

ジャイプールは、古くから王族の保護の元でさまざまな工芸や芸術が発展してきた土地でもあります。ブルーポタリーの他に、宝石細工、染色、織物などもよく知られており、多彩な手仕事が受け継がれています。

ブルーポタリーの起源と歴史

ブルーポタリーの起源

ブルーポタリーに使われる焼き物の技術は、紀元前3000年ごろの古代エジプトで生まれたと考えられています。

その後、時代を超えて18世紀、アンベール王国が首都をジャイプールへ遷都した頃に、この技術がジャイプールへと伝わりました。

前述でも紹介した、遷都を進めた国王で、ジャイプールという都市名の由来にもなったサワーイー・ジャイ・シング2世は、都市づくりの一環として各地から多様な技能を持つ職人たちを集めて定住させるという政策を行いました。その中に、トルコやペルシャ(現在のイラン)方面の技術者たちもいたとされ、彼らの持ち込んだ焼き物技術が現在のブルーポタリーの源流になったと考えられています。

当時、この技術は主にモスクや宮殿、王族の墓などの建築を彩るタイルなどに使われていましたが、王族の庇護を受けたことでジャイプールの地に根づき、独自の発展を遂げていきました。

ブルーポタリーの技術がジャイプールに定着したきっかけ

ブルーポタリーが、ジャイプールに定着したきっかけとして、19世紀、インドがイギリスの植民地となっていた時代のアンベール王国の国王で、芸術の愛好家としてその支援にも力を入れていたことで知られる、ラーム・シング2世のエピソードが残されています。

ある日、ラーム・シング2世が凧揚げ(お互いに糸を絡ませて相手の凧を落とす喧嘩凧)をしていたところ、とある兄弟に何度も負けてしまいます。その秘訣を聞いたところ、二人は陶芸家で、凧糸に陶器作りに使うガラスの粉を塗ってあるからと答えました。これをきっかけにこの陶芸の技術を知ったラーム・シング2世は、彼らに技術を教え広めるよう頼み、自身が設立した美術学校に呼び寄せたのでした。

衰退と復興〜世界中で愛されるブルーポタリー〜

王族の後押しを受け、発展のきっかけを得たブルーポタリーですが、その技術の継承に世襲制というルールがあったことや、イギリスの統治下で新しい技術や文化が入ってきたことなどから、一時は衰退の危機に陥ります。

そのような中、インドがイギリスから独立し、ジャイプールがインドに併合された後となる1950年代、最後の王妃であり政治家としても活躍した、ガーヤトリー・デーヴィーの後押しにより、再び世の中に知られるようになりました。

更に、1960年代には、「シルプ・グル」という、日本の国宝に当たる称号を受け、東京芸大にも留学していたという芸術家、クリパル・シン・シェカワットがブルーポタリーの制作を行なったことで飛躍的に発展したと言われています。

また、1977年以降には、社会起業家の女性、リーラ・ボルディアが、繊細な美しさを生かしたドアノブやビーズ、マグカップなど、今までになかった実用的な製品を開発し国内外への販路を広げたことで、ブルーポタリーはジャイプールの伝統工芸品として世界に広く認められるようになり、今も多くの人々に愛されています。

ブルーポタリーはどのように作られる?

ブルーポタリーは、素地づくりから絵付け、彩色、仕上げまで、すべてが職人の手仕事によって進められます。その美しい色彩はどのように生まれるのでしょう?その制作工程をご紹介します。

鮮やかな色合いを生み出す原料

ブルーポタリーの美しい発色の秘密は、陶器の原料にあります。

日本では、陶器というと粘土を用いるのが一般的ですが、ブルーポタリーは、水晶(石英)やガラスの粉末、陶磁器の釉薬(ゆうやく、うわぐすり)としても使われるホウ素などを粉にして調合したものを使います。これに水を加えて練り上げることで、真っ白で滑らかな素地(下地)が出来上がるのです。

この真っ白な素地があるからこそ、ブルーポタリー特有の、鮮やかで透明感のある青色が際立ちます。

これらの原料が、ジャイプール近郊で産出されることも、ブルーポタリーがこの地に定着した理由の一つとも言われています。

制作の流れ

➖1.整形と乾燥

上述のようにできた素地を、型やろくろを用いて、皿やポットなどの形に整形し、太陽光で乾燥させた後、サンドペーパーで磨き、下地剤に漬けるなどして仕上げます。

➖2.絵付けと彩色

成形の次は絵付けです。筆を用いて、下絵から彩色まで全て手作業で行われます。

植物や花をモチーフにした模様が特徴的で、象やラクダ、鳥など動物もよく描かれます。よく使われる色は、コバルトブルーやターコイズブルー、緑、黄色などです。

最後に釉薬をつけたら、焼く準備が整います。

➖3.釜で焼く(焼成)

最後は窯に入れて焼きます。800度〜1000度で8時間焼いた後、3〜4時間自然冷却させ、窯から取り出します。

彩色時には、くすんだ色をしている塗料が、焼き上がると透明感のある鮮やかな色に変化し、艶のある独特の風合いに仕上がります。

素地作りから考えると、全ての工程を終えるまでに10日ほどかかるようです。

日本の工芸品にも通じる、手仕事にしかない魅力

ブルーポタリーは、ジャイプールの豊かな文化に育まれ、人々に愛され、職人たちが手間を惜しまず丁寧に仕上げてきた伝統ある工芸品です。絵柄を見ると、手書きの風合いの中に職人達のたしかな息づかいが感じられ、器やアクセサリーなど、その一つひとつに見られる表情こそが、ブルーポタリーの魅力となっています。

素材と向き合い丁寧な工程を積み重ねて仕上げていくその仕事は、日本の伝統工芸にも通じるところがあり、作品の美しさや魅力の中には、手間を惜しまず物づくりに向き合う職人の精神が息づいていると言えるでしょう。

大切な人への贈り物に、ブルーポタリーはいかがですか?

ブルーポタリー特有の鮮やかな色合いと、柔らかな曲線によって描かれた素朴な絵柄、可愛さも感じる柔らかいフォルムは、日本の風景にも馴染むだけでなく、アクセントとして暮らしに爽やかな彩りを添えてくれます。異国の手仕事の風合いが、日常に温もりを届ける特別な存在となってくれることでしょう。

全てが職人の手仕事による一点ものだからこそ、大切な誰かを思いながら選ぶ贈り物にもぴったりです。

インド雑貨を扱う店でも人気があるようですので、ぜひ探して手に取ってみてください。

お墓きわめびとの会でも、お皿やアクセサリーなど、ブルーポタリーの雑貨を扱っています。スタッフが現地に足を運んで仕入れた、見ているだけでも気持ちが明るくなるような商品ばかりですので、ぜひリンクより覧になってください。

そのほか、同じく一点一点職人の手仕事で作られた、長寿や子孫繁栄を招くとして縁起が良く、幸せを運ぶとも言われているゾウモチーフの雑貨も取り扱っており、こちらの記事でもご紹介しいています。