お役立ちコラム お墓の色々
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七草粥を食べる「人日の節句」っていつ?起源や七草粥の由来、受け継がれる風習などを解説します

1月7日は、「人日(じんじつ)の節句」です。
この言葉を聞いて、「耳にしたことがない」「端午や桃の節句なら聞いたことがあるけれど・・・」という方も少なくないかもしれません。 その一方で、毎年、この日には決まって七草粥を食べるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。その七草粥も、実は人日の節句にまつわる伝統ある習わしの一つなのです。
今回は、人日の節句とはどのような行事なのか、その起源や、七草粥を食べるようになった理由などを解説し、今もなお受け継がれている風習についてもご紹介します。
人日の節句(七草の節句)とは
節句というと、ひな祭りとして知られる3月3日の「桃の節句」(上巳の節句)や、鯉のぼりで馴染みのある5月5日の「端午の節句」がよく知られていますが、1月7日の「人日の節句」も、それらと同様に、季節の節目を祝う日として日本で古くから大切にされてきた「五節句」の一つです。
「人日」とは「人の日」つまり「人を大切にする日」との意味があり、春の七草を入れた七草粥を食べて今年一年の無病息災を祈ることから、「七草の節句」とも呼ばれています。
なお、五節句とは以下の5つのことです。
・1月7日 「人日(じんじつ)の節句」(七草の節句)
・3月3日 「上巳(じょうし)の節句」(桃の節句)
・5月5日 「端午(たんご)の節句」(菖蒲の節句)
・7月7日 「七夕(しちせき・たなばた)の節句」(笹の節句)
・9月9日 「重陽(ちょうよう)の節句」(菊の節句)
このように五節句は、同じ奇数が重なる日が基本となっていますが、1月だけは、1月1日が元日で1年の始まりの格別にめでたい日であることから、別の節目の日が選ばれたと言われています。
人日以外の4つの節句については、こちらで紹介しています。
◆桃の節句・ひな祭りはどんな行事?〜起源や雛人形に込められた意味などを解説します〜
◆七夕(たなばた)とはどんな行事?〜起源や由来、地域の風習などを解説〜
◆9月9日の重陽の節句とはどんな行事?◆起源や菊に込められた意味、風習、食べ物について解説します◆
人日の節句の起源と歴史
「人日(じんじつ)」と呼ばれる由来は、古代中国にあり
人日の節句の起源は、古代中国にあると言われています。
古代中国では、元日から7日までの各日に「鶏、狗(犬)、羊、猪(豚)、牛、馬、人」を割り当て、それぞれの日にはその動物を殺さず、7日目の人の日(人日)には、犯罪者の処刑を行わないというしきたりがあったようです。また、人の日である1月7日には、七種の若菜で作った羹(あつもの/熱い汁物)を食べて無病息災を祈ったとも言われています。
これらの風習が、その他の季節の行事や風習とともに日本に伝わると、宮中で取り入れられ、様々な日本の習わしと融合しながら発展し、「人日の節句」として定着しました。江戸時代になると、幕府が五節句を公的な祝日として定めたことで庶民の間にも広まり、明治時代以降に祝日ではなくなったものの、現在までその習わしが受け継がれています。
日本古来の1月7日の行事
1月7日に行われていた「白馬節会(あおうまのせちえ)」
1月7日に、日本で古くから行われていた行事に、白馬節会(あおうまのせちえ)があります。これは、白馬を天皇にご覧いただき1年の邪気を避けるという儀式で、現在では、京都の上賀茂神社、大阪の住吉大社、茨城の鹿島神宮などで、神事として受け継がれています。
この儀式は、陰陽五行説に基づいて「春の良き日に青い馬を見ると年中の邪気を払うことができる」とした中国の故事にならったもので、一説には、日本では白い馬が神聖な存在とされたことから、「あおうま」との読みを残したまま「白馬」と書くようになったと言われています。
飛鳥時代から1月7日に宮中で開かれていた、「七日節会(なぬかのせちえ)」と呼ばれる宴を始まりとする白馬節会は、元日節会(がんじつのせちえ)、新嘗祭(にいなめさい)と並ぶ、天皇の即位に次いで重要な行事に位置付けられていたとされ、1月7日が季節の節目として重んじられていたことが伺えます。
七草粥の由来の一つ「若菜摘み」
平安時代、正月最初の子(ね)の日(初子の日)には、春の七草などの若菜を摘んだり食べたりして無病息災を祈る、「若菜摘み」という風習があったと言われています。平安時代の和歌などにも登場しており、『小倉百人一首』に出てくる光孝天皇の句「君がため 春の野に出でて若菜摘む 我が衣手に 雪は降りつつ」をご存知の方も多いかもしれません。「供若菜(若菜を供ず/くうず)」という、若菜を天皇に献上する行事も行われていたようです。
これらが、正月最初の子の日から、次第に1月7日の行事として定着し、前述でも紹介した、「人日の日に七種の若菜で作った羹(あつもの)を食べる」という中国の風習と結びついて、七草粥の風習が生まれたとも言われています。
日本各地の主な風習
七草粥
七草粥は、春の七草を入れたお粥で、人日の節句である1月7日に1年の無病息災を願って食べます。雪の下から芽吹く若菜の生命力を取り入れることで邪気を払うことができると考えられており、正月料理で疲れた胃腸を休めるという意味合いからも、七草粥を食することで1年を健康に過ごせると言われています。昔は、前の晩である1月6日の夜に準備し、7日の朝に食べるのが一般的だったようです。
春の七草とは、以下の7種類とされ、それぞれに健康を助ける効能があるとされているだけでなく、縁起が良い食べ物としても知られています。
<春の七草と、縁起が良いとされる由来>
・芹(せり)・・・競り勝つ(競り合うように生えることから)
・薺・夏無(なずな)・・・撫でて穢れや邪気を払う(「撫で菜」と読んで)
・御形(ごぎょう)・・・仏様の身体(仏様の姿形を指して御形と言うことから)
・繁縷(はこべら)・・・子孫繁栄(「繁」の字より)
・仏の座(ほとけのざ)・・・仏様が座る安座(蓮華座に似ていることから)
・菘・鈴菜(すずな/かぶ)・・・神を呼ぶ鈴(その形から)
・蘿蔔・清白(すずしろ/大根)・・・穢れのない純白、潔白(大根の白さから)
ただ、日本海側や東北地方、北海道などの豪雪地帯では、この時期に菜物が手に入りにくかったため、身近な野菜などを使ったお粥や汁物を食べる習わしが受け継がれている地域や、七草粥の風習が見られない地域もあります。
また、沖縄では、旧暦の1月7日を「ナンカヌシク(七日節句)」と呼び、本州側で知られている七草とは違う7種類の菜物を使った「ナージューシー」などと呼ばれる雑炊を食べるなど、地域ごとの特色も残っています。
現在では、野に生える七草を摘むことはなかなか難しいですが、ありあわせの菜物で作るのも良いとされているほか、スーパーや八百屋、ネット通販などで七草のセットや、フリーズドライの商品が手に入るようになり、若い世代や、かつて七草に馴染みのなかった地域でも、広く親しまれるようになっています。
七草たたきと囃子言葉
その昔、七草粥の準備をする際には、七草を包丁やすりこぎで叩きながら「七草囃子」などと呼ばれる囃子言葉を唱える習わしがありました。
節は地域によって様々ですが「七草ナズナ、唐土の鳥が、日本の土地に、渡らぬ先に、トントントン(ストトントン、ゴトゴトなど)…」と言ったものが多く、中国で正月の夜に飛んできて災いをもたらすとされる鬼車鳥(きしゃどり)を床や戸を打ち鳴らして追い払ったという言い伝えから、唐土の鳥、つまり中国の鳥(外からの災い)が渡ってこないようにという厄除けの意味があったようです。
今では、この囃子言葉を知っている人は少なくなりましたが、地域によっては七草粥の行事で唱えるところがあるなど、今もな大切にお受け継がれています。
新年を迎えて初めて爪を切る「七草爪」「七日爪」
1月7日は、「七草爪」「七日爪」とも呼ばれ、新年最初の爪切りをする日とされています。
日本では古くから、「縁を切ること」「怪我をして血で穢すこと」を避けるために、お正月の間は爪を切ってはいけないと伝えられており、1月7日に新年最初の爪切りをすることから、この日は「七草爪」「七日爪」とも呼ばれています。
七草を浸した水や、茹でた汁に指を浸してから爪を切ると、邪気を払い、1年間風邪や病気を遠ざけると伝えられてきました。爪を柔らかくして切りやすくすることで、怪我を避けるという意味合いもあったようです。
神社や寺院で無病息災を祈る行事
人日の節句には、各地の神社や寺院を中心に、無病息災を祈願する仏事や神事、七草粥の振る舞いといった行事を行うところがあります。
中には、市が立ったり、参拝者が参加できる催しを開いたりするところもあり、地域住民が交流し、伝統的な風習に触れる機会となっています。
正月飾りの飾り納め
関東・東北・九州などの地域では、1月1日から7日までを「松の内」、つまり、年神様が家に滞在するためお正月飾りを飾っておく期間としているところが多く、その終わりの日で、年神様が山へお帰りになる1月7日にお正月飾りを片付け始める地域もあります。
一方で、関西では松の内を1月15日までとする地域が多く見られます。これは、もともと全国的に15日までが松の内とされていた名残です。江戸時代に幕府が「正月飾りは7日まで」という通達を出したことで、関東を中心に7日が定着しましたが、関西では15日までとする古い慣習が残ったと言われています。
人日の節句にお墓参りはいかがでしょう
人を大切にし、1年の無病息災を願う日である「人日の節句」は、ご先祖さまに手を合わせ、ご先祖様が命を繋いでいただいたおかげで今の自分があることや、いつも家族の健康や安全を見守ってくれていることへの感謝を伝える機会として、とても相性の良い日です。
また、この日は松の内が明ける地域も多く、年神様となって家に訪れていたご先祖さまが山へ帰られる日でもあるため、お墓参りをして、「今年一年、家族が無事に過ごせますように」とお祈りするのにも相応しい節目と言えます。
お正月行事がひと段落したタイミングに、ご先祖様とのつながりに想いを馳せて墓前で手を合わせることで、新しい年を感謝の心と共に気持ちよく踏み出すことができるのではないでしょうか。
お墓は、決して縁起が悪い場所ではないため、お正月でもお参りすることができます。1年の中でも、家族や親戚が集まりやすい時期ですので、1月7日やその前後に家族揃ってお墓参りをするのもおすすめです。
ただ、冬のお墓参りは、天候が崩れやすく足元も滑りやすくなるため、寒さ対策や動きやすい靴を選ぶなどの準備をしっかりして、無理なく行うことが大切です。
お正月のお墓参りや、お墓参りの意味、「お墓参りでお願い事をしていいのか」についても解説していますので、併せてお読みください。
◆お正月にお墓参りをしてもいい?年末年始のお墓参りの考え方や注意点をご紹介
◆お墓参りでお願いごとをするのはNG?~歴史、宗派、マナーから考察~
まとめ
人日の節句は、その名前こそあまり知られていませんが、七草粥を食べて1年の無病息災を願う行事として、かつては多くの人々に親しまれてきました。近年では、春の七草がスーパーやネット通販で手軽に手に入るようになったことや、コロナ禍以降に家庭で伝統行事を楽しむ人が増えたことなどもあり、七草粥を取り入れる家庭が再び増えているようです。
暮らしの中に先人の知恵や伝統を取り入れることは、忙しい日々の中で心を整えるきっかけにもなります。
お正月がひと区切りつくこの節目の日に、七草粥で一年の健康を願うのはもちろん、ゆっくり自分や家族を労う時間を作ったり、家族揃ってお墓参りをしてご先祖さまに手を合わせたりと、「人」を大切にするひとときを持ってみてはいかがでしょうか。
お墓参りの作法や、家族の絆が深まるお墓参りに触れることができる動画や写真集もご紹介しています。ぜひご家族と一緒にご覧ください。