お役立ちコラム お墓の色々

お役立ちコラム お墓の色々

- 供養をきわめる -

七夕(たなばた)とはどんな行事?◆起源や由来、地域の風習などを解説◆

供養・埋葬・風習コラム

7月7日は、七夕(たなばた)。全国各地で、笹や竹、七夕飾りが街や施設に並び、願い事を書いた短冊が風にたなびく光景もよく見られます。子どもから大人まで多くの人々に馴染み深い行事であり、織姫と彦星の言い伝えを聞いたことがある方も多いと思いますが、その詳しい内容や行事の由来、七夕飾りに込められた意味などまでは、知らない人の方が多いのかもしれません。

今回は、七夕の起源や、由来となった物語と合わせて、飾りの意味や地域の風習などをご紹介していきますので、今年の七夕をいつもより深く味わうきっかけになれば幸いです。

七夕とは?

七夕とは、「7月7日の夜に限り、年に一度だけ、織姫と彦星が天の川を渡って会うことができる」との言い伝えにちなんで、星に願い事をしたり裁縫や芸事の上達を祈願したりする、日本の伝統行事です。短冊に願い事を書いて、七夕飾りと一緒に笹や竹の葉に飾ったり、そうめんなど、七夕にちなんだものを食べたりして過ごすのが一般的です。寺社や街中が七夕飾りで彩られる風景も、この時期の風物詩となっています。

この日は、桃の節句(ひな祭り)や端午の節句と並ぶ、「五節句」のひとつです。「七夕(しちせき・たなばた)の節句」とも呼ばれ、季節の節目を祝う行事として古くから大切にされてきました。また、生命力が強く邪気を払うとされる笹や竹を飾ることから、「笹の節句」「笹竹の節句」とも呼ばれています。

五節句とは以下の5つです。

・1月7日 「人日(じんじつ)の節句」(七草の節句)

・3月3日 「上巳(じょうし)の節句」(桃の節句)

・5月5日 「端午(たんご)の節句」(菖蒲の節句)

・7月7日 「七夕(しちせき・たなばた)の節句」(笹の節句) ・9月9日 「重陽(ちょうよう)の節句」(菊の節句)

7月上旬から8月上旬にかけては、日本各地で七夕にちなんだ行事やお祭りも行われています。中でも、日本三大七夕祭りともいわれる、宮城県の「仙台七夕まつり」、神奈川県の「湘南ひらつか七夕祭り」、愛知県の「安城七夕まつり」などが有名で、毎年たくさんの人が訪れ賑わいます。

桃の節句、端午の節句については、こちらの記事で詳しく紹介しています。

桃の節句・ひな祭りはどんな行事?〜起源や雛人形に込められた意味などを解説します〜

端午の節句とは?起源や歴史、鯉のぼりの由来などを解説

七夕の節句の起源

古代中国の「乞巧節(きっこうせつ)」がルーツ

七夕(たなばた)の起源は、古代中国の「乞巧節(きっこうせつ)」、または「七夕節(しちせきせつ)」という行事にさかのぼります。もとは書物や衣類の虫干しをする日だったとも言われていますが、やがて夏の星空にちなんだ、織物の神様ともいわれる織姫の伝説と結びつき、織物や裁縫の上達を願う女性の節句として親しまれるようになりました。

この行事は、「上達する(巧みなる)ように星に祈る(乞う)、お供えをする祭典(祭奠)」という意味から「乞巧奠(きこうでん)」とも呼ばれています。

「織姫(織女)」と「彦星(牽牛)」の星の伝説

七夕の由来として古代中国から伝わる、織姫と彦星の星の神話を紹介します。

中国では、織姫と彦星をそれぞれ、「織女(しゅくじょ)」、「牽牛(けんぎゅう)」といい、この物語は、「夏の大三角」と呼ばれる三つの星のうち、琴座のベガ(織姫星・織女星)と鷲座のアルタイル(彦星・牽牛星)が、ちょうど天の川を挟んで輝く様子から生まれたと言われています。紀元前6世紀ごろの書物にはすでに、このふたりの物語が登場しており、古くから語り継がれてきたようです。

天帝(天の神様)の娘で機織りが得意な働き者の織姫(織女)は、同じく働き者で牛飼いの彦星(牽牛)と結婚しました。最初は仲睦まじく暮らしていましたが、やがてお互いに夢中になりすぎて働かなくなってしまいます。それに怒った天帝は、ふたりを天の川の両岸に引き離してしまいました。 すると今度は、悲しみに暮れるあまり仕事も手につきません。そんな織姫と彦星を見た天帝は、年に一度、七夕の夜だけ会うことを許したといいます。ふたりは心を入れ替えて真面目に働き、織姫はより美しい布を織り、彦星は田畑を豊かに実らせたと伝えられています。

「たなばた」という読みの由来

七夕の行事は、奈良時代頃に日本へ伝わり、季節の節目を祝う宮中行事「節会(せちえ)」の一つとして取り入れられました。当時は庭の祭壇に酒や果物などと共に、五色の糸を供え、裁縫や芸事の上達を願う宴が開かれたほか、7という数にあやかり、蹴鞠(けまり)や歌合せをはじめ「七遊」と呼ばれる七つの遊びなども行われたと言われています。

一方で、日本には古くから「棚機(たなばた)」という行事がありました。これは、水辺の機屋(はたや)にこもった乙女が神の衣を織って棚に供え、神様を迎えて秋の豊作を祈るとともに、人々の穢れを祓うというもので、乙女は「棚機女(たなばたつめ)」と呼ばれていました。のちに仏教の影響を受けて、お盆を迎える準備の意味合いも込めて行われていたようです。

七夕を「たなばた」とする特殊な読み方は、この風習が由来になったと言われています。 このように、中国の星にまつわる神話や、宮中に伝わった行事、日本の禊ぎや祈りの風習が融合し、やがて江戸時代には、五節句が式日(現在の祝日)の一つとして定められたことで、七夕(たなばた)は庶民の間にも広く浸透していきました。

七夕の風習

短冊に願いごとを書く

七夕といえば、願い事を書いた短冊を笹に飾る風景が思い浮かびます。もともとは、宮中で梶の葉に和歌を書いて願いを託す風習だったようです。江戸時代、寺子屋で、書の上達を願って詩歌の言葉や願い事を短冊に書いて飾るようになり、この習わしが広まったと言われています。 童謡「たなばたさま」にも「五色の短冊」と歌われているように、短冊には青・赤・黄・白・黒(紫)の五色を使うのが基本とされています。これは、中国の陰陽五行説に基づいた色であり、宮中でお供えされていた五色の糸にも通じると言われています。今は、色についてそこまで意識されることは少ないかもしれませんが、願いを言葉にして空へ届ける気持ちは、今も変わらず受け継がれています。

なぜ笹や竹に飾るの?

短冊や七夕飾りを飾る植物といえば、笹がよく知られていますが、「笹竹の節句」とも呼ばれるように、若い竹が用いられることも少なくありません。このように笹や竹が用いられるのには、いくつかの理由があります。

笹や竹は虫よけの効果があることから、稲作などでも重宝されてきました。さらに、冬でも青々とした葉を保つその生命力の強さから、昔から邪気を払う植物として親しまれてきました。こうしたことから、笹や竹に飾りをつけることで災厄を避ける願いが込められるようになったといわれています。

また、まっすぐ空に向かって伸びる笹は、願いを天に届けてくれるとも信じられてきたようです。

七夕飾りの意味

たくさんある七夕飾りにも、それぞれ意味が込められていますので、よく知られているものをいくつか紹介します。

・着物の形の「紙衣(かみごろも・かみこ)」、同じ形の紙をつなげた「三角つなぎ」「四角つなぎ」・・・裁縫の上達

・吹き流し・・・はた織りや芸事の上達

・網の形をした「投網(とあみ)」・・・豊漁、豊作、幸運を集める

・折り鶴・・・長寿

・提灯・・・魔除け、短冊の願い事を明るく照らす

・輪つなぎ・・・天の川の象徴、人とのつながり、夢が続いていくこと

七夕の食べ物

七夕に食べるものといえば、「そうめん」。細く長い形が天の川や織り糸に見立てられ、芸事や裁縫の上達、健康を願う意味が込められていると言われています。

このそうめんの原型とされるのが、「索餅(さくべい)」という、小麦粉を縄のようにねじって揚げたお菓子で、七夕に無病息災を祈って食べられていました。現在ではあまり見かけませんが、一部の菓子店では、七夕に合わせて作られることもあるようです。 星形の切り口が特徴の「オクラ」も、願いを天に届けるとされ、天の川に見立てて、そうめんに添える盛り付ける様子もよく見られます。

そのほか、笹の節句にちなんだ、笹かまぼこや笹団子、笹寿司。七夕の頃に収穫される小麦の恵みに感謝し厄除けの意味も込めて食べられる「七夕ほうとう」など、地域ならではの味も受け継がれています。

お盆にもつながる地域ごとの七夕

七夕は、全国的に親しまれている行事ですが、地域によって異なる独自の風習もあります。

北海道では、子どもたちが「ローソク出せ~」と歌いながら、近所をまわってお菓子をもらう、ハロウィンを思わせるような行事があるようです。また、新潟では、「七夕丸」と呼ばれる小さな舟をかやなどで作り、願い事を託して海に流す風習があります。

そのほか、東日本を中心に、真菰(まこも)や藁で作った牛や馬を飾る、お盆の「精霊馬」に通じるような風習も残っています。

全国的には、七夕(またはお盆がある月の七日)に、お墓掃除などお盆の支度を始める風習もあり、地域によってはこの日を「七日盆(なぬかぼん)」とも呼んでいます。 お盆に飾る「精霊馬」についてはこちらで詳しく解説しています。

故人のためのお盆の過ごし方。精霊馬を作ってみよう。

七夕にお墓参りはいかがでしょうか

七夕は、短冊や七夕飾りを飾ってお願い事をしたり、地域によっては盛大にお祭りが開かれたりもしますが、お盆の準備を始める日としても大切にされてきました。

ご先祖さまを気持ちよくお迎えできるようにお墓を掃除し、星に願いを届ける七夕の日に、ご先祖さまに日頃の感謝を伝え、「願いごとが叶うよう、これからも見守ってください」と手を合わせるのもおすすめです。織姫と彦星が年に一度だけ会える特別な日ですから、大切な人との繋がりを、より一層感じることができるかもしれません。

まとめ

七夕は、星に願いをかける行事として広く親しまれていますが、その背景には、技芸の上達を願ったり、家族の健康や幸せを祈ったりと、長く受け継がれてきた人々の祈りのかたちがあります。

空に向かって願いを届けるこの日は、目に見えないつながりを感じる日でもあり、星に思いを馳せる時間は、ご先祖さまをはじめ過去から受け継がれてきた先人の想いと、今を生きる私たちの未来への願いを繋ぐ時間と言えるのかもしれません。

今年の七夕は、願いを込めた飾りを家族でつくったり、夜空を見上げてそっと手を合わせたりしながら、ご先祖さまとのつながりにも心を寄せてみてはいかがでしょうか。

お墓参りの作法や、お墓参りの意味についてまとめている記事もありますので、あわせてご覧ください。