お役立ちコラム お墓の色々

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故人のためのお盆の過ごし方。精霊馬を作ってみよう。

供養・埋葬・風習コラム

故人のためのお盆の過ごし方。精霊馬を作ってみよう。

すっかり長期休暇のイメージがついてしまったお盆ですが、本来は故人の霊を家で迎える期間です。時には家でゆっくり、ご先祖様や故人を偲ぶ時間を作ってみましょう。お盆を見直すきっかけづくりに良いのが、精霊馬(しょうりょううま)づくりです。ご自身の手を動かして作ることは、故人を想い返す良い機会になるでしょう。とても簡単に作れますので、お子さんと一緒に作るのもおすすめです。命について、親子で考える時間を持つことができます。

お盆の精霊馬は何のために作る?

仏教では、8月13日になるとあの世にいる故人の霊が家に帰ってきて、8月16日までこの世に滞在するという考え方があります。精霊馬は、あの世とこの世を移動する霊が使う乗り物なのです。キュウリで作るもの、ナスで作るもの2種類がありますが、これは好みで作っているわけではなく、乗り物としての役割が違うのです。
キュウリで作るものを精霊馬といい、これは故人があの世からこの世にやってくる際に利用すると言われています。なるべく早く来てもらえるように、足の速い馬を用意します。
一方、ナスで作るものは精霊牛と言います。これは故人との別れがなごり惜しく、あの世にあまり早く帰ってほしくない気持ちを表しています。また、帰りはお供え物を持ち帰るので、荷物のたくさん積める牛を用意するという意味もあります。
ただし、宗派や地域によって風習が異なる場合もあります。行きも帰りも精霊馬を用意するところ、行きが精霊牛で帰りが精霊馬という逆のところもあります。浄土真宗の場合、お盆に霊が戻ってくるという考え方がないので、精霊馬は必要ありません。

いつ飾ればいいのか?

精霊馬と精霊牛、それぞれの役割を考え、霊が移動する少し前に用意するようにします。霊がこちらに来るのは13日の夜と言われていますので、迎えの精霊馬は13日の午前中に用意しましょう。霊が帰るのは16日の明け方と言われていますので。送りの精霊牛は15日の夜に飾ります。地域によっては両方一緒に用意するところもあります。

大人の作るかっこいい精霊馬の作り方

それでは、いよいよ精霊馬を作ってみましょう。と言っても、作り方はとても簡単です。ペンチを使う時や、割り箸を刺す時には怪我にご注意ください。

1、キュウリ・ナスを用意する。

精霊馬に使うキュウリは反りがあるものを使った方が、生き物らしく見えます。ナスはなるべく太くて短いものを使うと、牛らしくなります。

2、ペンチを使い、脚の長さに割り箸を切る。

キュウリに使うものはやや長めに。ナスに使うものは短めに切ると、より馬と牛らしくなります。4本の脚の長さがあまりに違うと、立てなくなります。長すぎると、大股開きになってかっこ悪いので、長さを測ってあらかじめ目印を入れてから切ると良いでしょう。

3、キュウリ・ナスに割り箸を刺し込む。

付け根から足先に向けてハの字に広がるように刺していきます。きゅうりは反りの強い方を上にして頭にします。無理に力を入れると、簡単に折れたり砕けてしまうので、なかなか刺さらないようでしたら、切れ込みを入れたり割り箸を杭のように削ってください。前後の脚の感覚をやや開けたほうが、足の速い馬らしく仕上がります。なすはヘタを頭にして、刺し込んでいきます。牛らしいどっしりとした体つきにするために、ナスの太い部分に脚をつけましょう。立たせることができたら完成です。

最近では、耳や足まで野菜で作ったり、模様や顔を刻んだり、特徴的な精霊馬を作る方がいらっしゃいます。インターネット上で見ることができるので、眺めてみるのも面白いでしょう。

飾る場所、飾り方は?

完成した精霊馬は精霊棚(盆棚)に飾ります。精霊棚とは、お盆だけ設ける特別に作った棚で、戻ってきた霊が滞在する場所になります。ここでは簡単なものの作り方をご紹介します。
小さな机の上に、真菰のゴザを引いてください。その上に位牌、位牌の左右に小さな盆提灯を置き、菊や百合などの盆花、季節の野菜や果物、故人の好きだった食べ物などのお供え物、そして精霊馬を飾れば完成です。これらの道具は、時期になるとスーパーやホームセンターでセットにして売られています。
精霊馬と精霊牛の飾り方には、少し注意があります。まず、置く場所は決まっており、精霊棚の向かって右側になります。そして、飾る向きに気をつけてください。霊を連れてくる精霊馬は、頭を精霊棚の内側に向けて飾ります。霊を送り出す精霊牛は、頭を精霊棚の外側へ向けて飾ります。ただし、この置く場所や飾り方にも地域で違いがあります。精霊棚ではなく家の玄関に飾る地域では、精霊馬は家向きに精霊牛は外向きに飾ります。精霊棚に飾る場合でも、霊は東から来るという考えのもと、精霊馬は西向き、精霊牛は東向きに置く地域もあります。精霊馬の風習には、作り方から飾り方まで、宗教や地域によって違いがあるので、正確に行いたい方はご親戚や地域の方に確認してください。

精霊馬づくりで大切なこと

肝心なのは故人を想いながら作ることです。一緒に過ごした時間、受けた恩、後悔、故人との思い出を振り返りながら作る精霊馬には、きっと愛着が湧いているはずです。故人への感謝とご自身の死生観を見直す機会にもなります。
親子で作る方は、秋のお墓参りにも一緒に行ってみてください。ご先祖のおかげで命が受け継がれてきたことを実感する場になります。ご両親がお墓を大切にする姿を見せることで、お子さんもご先祖や故人に感謝し、家族を大切に思うことでしょう。
命について考える機会を与えてくれる精霊馬づくりに、ぜひ挑戦してみてください。