お役立ちコラム お墓の色々

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お墓参りでお願いごとをするのはNG?~歴史、宗派、マナーから考察~

供養・埋葬・風習コラム

お墓参りでお願いごとをするのはNG?~歴史、宗派、マナーから考察~

日本のお墓参りは、故人の冥福を祈ったり感謝の気持ちを伝えたりする大切な行事です。なかには、墓前でご先祖様にお願いごとをする人もいるでしょう。しかし、お墓参りでお願いごとをするのはNGだという意見もあります。

そこで今回は、歴史、宗派、マナーの3つの側面からお墓参りについて考察していきます。お墓参りの意味について、いま一度考えてみましょう。

歴史的な視点から見るお墓参りの変遷

古くから続く日本のお墓参りにも、時代とともに変化が見られます。

縄文時代~弥生時代

日本最古のお墓は、北海道上磯郡知内町で発見された『湯の里4遺跡』とされています。お墓自体は2万年前から日本に存在したと考えられていますが、現代の「お墓文化」のもととなるのは青森県青森市にある「三内丸山(さんないまるやま)遺跡」です。1体ずつ丁寧に埋葬していた形跡があり、周辺で花や木の実、魚の骨なども出土しています。住居の近くにお墓を作り、死者に対しても生きている人と同様に親しみを持って大切にしていたと考えられます。縄文時代は手足をまげて土葬するのが中心でしたが、弥生時代になると木の棺が使われるようになります。
縄文時代のお墓から見る、お墓の存在理由

古墳時代

副葬品を納めた古墳が築かれ、死後の世界への信仰が芽生え始めたと考えられています。この世に存在するすべてを神とあがめる八百万の神への信仰も残っていましたが、言い伝えや伝説の神を崇めるといった信仰もあらわれます。例えば、伊勢神宮に祀られている天照大神(アマテラスオオミカミ)や出雲大社に祀られている大国主命(オオクニヌシノミコト)などです。さらに氏族の重要な祖先を神として崇める「氏神信仰」もあらわれ、それが神道に発展していきます。

仏教伝来

仏教の普及とともに、供養の概念が定着し、お寺管理の墓地での埋葬が行われるようになりました。寺院は仏教の中心であり、死者の供養や葬儀の場としても重要視されました。故人の供養は寺院で法事をすることであり、お墓参りの習慣はまだなかったようです。

江戸時代

儒教の影響を受け、先祖への敬意を表すためにお墓参りが重要視されるようになりました。ただし石塔のお墓を立てるのは、有力な貴族や武士の特権でした。一般庶民は、土葬や火葬だけで、お墓を持つことはあまりなかったようです。

お墓のサイズなど細かい規定は、1831年(天保2年)の墓石制限令によります。「百姓・町人の戒名の院号・居士禁止」や「墓石の高さ四尺まで」など、規則に沿ってお墓を建てるようになります。

明治以降

石の採掘技術の進歩や経済的な豊かさから、立派な墓石が普及していきました。寺請制度の廃止、火葬の普及、公営墓地の開設、墓石の形式変化など、様々な側面で革新が進み、現代のお墓文化の基盤が築かれました。明治時代以前はお寺管理の墓地が主流でしたが、明治時代以降は都市部の人口増加によってお墓が増え、それに伴って寺院墓地以外の霊園や墓地も増えていきました。

宗派によって違うお墓参りの意味

お墓参りは、宗派によって意味合いが違ってきます。それぞれの意味合いを比較してみましょう。

仏教

仏教では、お墓参りは「先祖や故人を弔い、冥福を祈る」それとともに「亡くなった人への感謝を伝える」ためのものです。お盆やお彼岸、故人の命日などにお墓参りするのが一般的で、数珠を手にかけて合掌します。数珠や持ち方は、宗派によって違いがあります。

神道

神道では、特に慣例はありませんが、命日にご先祖様を敬い崇拝するためにお墓参りをするのは仏教と同じです。仏教と違う点は、花ではなく榊、供物ではなく水や塩、お神酒を供えることです。祈るときは、ローソクを灯してから「二礼、二拍手、一礼」します。

神道のお墓参りとマナーについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
神道のお墓参りとそのマナーを解説します

キリスト教

浄土真宗以外の仏教においては、お墓は「故人の魂が眠る場所」とされていますが、キリスト教では「故人を偲ぶ場所」と考えられています。これは、死後すぐに魂は天に召されると信じられており、お墓は記念碑としての意味合いがあるためです。祈る対象も故人ではなく神に向かって祈ります。

お墓参りでお願いごとをするのはダメ?

ご先祖様に手助けしてもらおうとお墓参りでお願いごとをするという考えは不自然ではありません。ではなぜダメという考えがあるのでしょうか?

良いとされる理由として、はっきりお願いをすることで「決意表明になり自分でも努力する」「ご先祖様にも気持ちが伝わりやすくなりご先祖様も手助けしやすい」というのがあります。一方でダメとされる理由としては「ご先祖様の冥福を祈る場所で勝手なお願いをするのは違う」「そもそもその場で願わなくてもご先祖様はわかっている」など道徳観的なものからきているように思われます。

どちらの意見も視点が違うだけで間違いではありませんし、どちらが正解といえるほどの根拠もありません。結局は、自分で決めるのが正しいといえるでしょう。

ただしどちらに決めたとしても、ご先祖さまや故人への感謝の気持ちを心に浮かべるようにします。

「いつも見守ってくれ、ありがとうございます」
「おかげで日々問題なく過ごせています」

など、当たり前の毎日が続いていることへの感謝を伝えるとよいでしょう。

大きなライフイベントがある際、故人に報告するためにお墓参りをする方もいらっしゃいます。亡き両親や祖父母に、進学、就職、結婚、出産、新居購入など、無事にライフイベントを迎えられたことを感謝とともに伝えましょう。

お墓参りは故人やご先祖様との対話

一般庶民がお墓を建てるようになったのは、江戸時代以降のここ数百年のことです。平和な世の中になり、立派なお墓を立てられるようになったのもご先祖様のおかげです。今あることを当たり前と思わず、報告や決意、感謝など、故人やご先祖様に語りかけるためにお墓参りをしましょう。そして、ぜひその習慣を子どもや孫の代にも伝えていきたいものです。
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