お役立ちコラム お墓の色々
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- 供養をきわめる -
梵字とは?お墓で見かける理由
梵字とは、古代インド語を表す文字です。日本には、仏教と共に伝えられました。
卒塔婆に記されていたり、五輪塔に刻まれていたり、お墓で見かけることも多い梵字ですが、「なぜお墓に?」「そもそもなんて書いてあるの?」「意味は?」など、考え始めると数々の疑問が湧いてきます。
今回は、梵字の歴史、梵字と仏教の関係、なぜお墓で使われているのかについてご紹介します。
そもそも梵字とは
梵字の由来はやや複雑なので、わかりやすくするために、まず、「サンスクリット語」「梵語」「梵字」に分けて、それぞれ説明します。
サンスクリット語とは
古代インドで使われていた言葉の一つです。仏教の多くの経典が、この言語で記されました。主に南アジア・東南アジアにおいて用いられ、哲学や学術などの分野でも広く使われてきました。
梵語とは
日本や中国など、漢字文化圏でのサンスクリット語の呼び方が「梵語」です。サンスクリット語は、梵天(ブラフマー神)によってつくられたという伝承があることから、「梵」語という言葉があてられました。
ブラフマー神とは、ヒンドゥー教の創造を司る神です。ブラフマー神(創造神)、ヴィシュヌ(維持神)、シヴァ(破壊神)の三神は一体であり、最高神が姿を変えて現れたものといわれています。このブラフマー神の、仏教での姿が梵天です。
梵字とは
梵語を書き写す際に、使われた文字が「梵字」です。文字としての梵字の起源は、古代インド語の一系統である「ブラーフミー文字」と考えられています。ブラーフミーとは『ブラフマー神の創造した文字』を意味します。
つまり、仏教と関わりの深い「サンスクリット語」が、漢字文化圏で「梵語」と呼ばれるようになり、その梵語を記す文字が「梵字」として使われたという関係性です。
梵字と仏教の関係
次に、日本での梵字の歴史をご紹介しつつ、さらに強固になった仏教との結びつきをご説明します。
梵字が日本に伝来したのは、奈良時代のことです。奈良時代と言えば、聖武天皇によって奈良の大仏や全国の国分寺・国分尼寺が造られた時期ですから、仏教が国家によって大変大切にされていた時代です。
梵字は中国を経由して日本に伝わりましたが、この時一緒に仏教も伝来したため、日本では仏教と梵字が強いつながりを持つようになります。見たこともない難解な梵字は、当時の日本の僧侶たちに神聖なものとされ、「神の文字」と考えられていたようです。遣唐使や僧侶らが読み方や意味を学び、少しずつ日本に広まっていったとされています。
平安時代になると、天台宗の開祖である最澄や、真言宗の開祖である空海によって、梵字で書かれたたくさんの経典が日本にやってきました。梵字の研究はさらに進み、仏教の修行に取り入れられたり、専門の学問や書道等が発達するなど、梵字と仏教は独自の文化を生みだすまでに発展しました。
ただし、ここで一つ補足説明があります。梵字にはいくつかの種類があり、日本で梵字と呼んでいるものはその中のうちの一つ、「悉曇(しったん)文字」のことなのです。
悉曇文字は、インドのブラーフミー文字そのものではなく、ブラーフミー文字が原型となった、「シッダマートリカー文字」が起源だと言われています。「完成された」を意味する「シッダー」と、「文字」を意味する「マートリカー」が組み合わさった言葉「シッダマートリカー」には、言語のすべての音韻を表せる、完成された文字であるという意味があります。一説には、日本の五十音の元になったとも考えられているようです。
空海らが中国から持ち帰った経典類の中に、この悉曇文字で書かれたものが含まれていたことから、日本では主流の梵字となりました。
複雑になってきましたが、「日本の梵字は、ブラーフミー文字から派生したシッダマートリカー文字から、さらに派生した悉曇文字」「梵字とは、広義ではブラーフミー系文字に属する文字体系を指し、狭義(日本)では悉曇文字のことを指す場合が多い」ということです。
お墓で見かける理由
先述のような事情から、仏教との結びつきが強い梵字。では、お墓で見かける梵字には、どのような意味があるのでしょうか?
五輪塔に彫られた梵字の意味
五輪塔は、平安中期から使われてきた供養塔です。下から方形・円形・三角形・半月形・宝珠形の5つの石材が重なって造られています。五輪塔には、仏教の五大要素である「地水火風空」にあたる梵字が彫られています。
また、五輪塔を簡略化したものである卒塔婆にも、同じように「地水火風空」にあたる梵字が記されています。
墓石の梵字の意味
梵字は、一つ一つに象徴する如来や菩薩などがいます。墓石に梵字が使われている場合、その宗派のご本尊への敬意や、「守ってほしい」という願いが込められています。例えば、真言宗では大日如来を表す「ア」と言う梵字を使用します。天台宗では、「ア」または、阿弥陀如来を表す「キリーク」という梵字を使用します。浄土真宗など、梵字を使わない宗派もあります。
また、子供の墓石には、地蔵菩薩を表す「カ」が使われていることもあります。地蔵菩薩は、賽の河原で石を積む子供を救う存在であるため、「カ」の梵字からは亡くなった子供を想う親心をうかがい知ることができます。
お墓の梵字には、れっきとした意味があります
本記事についてまとめると、以下のようになります。
・日本の梵字は、古代インドの言葉が形を変えて日本に伝来した文字。
・梵字は一文字で如来や菩薩などを象徴している。
・お墓で見かける梵字は、仏教で大切な五大要素や宗派のご本尊を意味している。
一見すると難解な梵字も、このような背景を知ってからあらためて眺めてみると、また違った意識で見ることができると思います。お墓は、さまざまな文化や歴史が積み重ねられた奥の深いものです。気になったことはぜひ調べてみましょう。