お役立ちコラム お墓の色々
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- 供養をきわめる -
五輪塔の歴史と特徴をわかりやすく解説します
四角や丸、三角の石が積み重なり”五重塔”のようになっているお墓を、墓地でご覧になったことはないでしょうか。
このお墓を五輪塔(ごりんとう)といいます。
実は五輪塔には、現在主流となっている四角柱状のお墓よりも長い歴史があり、「お墓といえば五輪塔」という時代がありました。
五輪塔は故人を成仏に導き、故人の魂を救う、供養に最適なお墓の形ともいわれています。
五輪塔とは
五輪塔は、主に供養塔やお墓として使われる塔の一種です。
密教(7世紀後半にインドで興隆した一宗派)の教理にもとづいて作られた形で、上から、空・風・火・水・地という五大と呼ばれる宇宙を構成する5つの元素を表現しています。
五大で形作られた五輪塔で供養することにより、故人は宇宙(五大)に還元され、極楽浄土に往生するとされています。
五輪塔はなぜあの形?
五輪塔は、真言宗の中興の祖・覚鑁(かくばん)上人が書した「五輪九字明秘密釈(ごりんくじみょうひみつしゃく)」を仏塔として体現したものといわれています。
教理では五輪塔の形状を、上から宝珠形の「空輪」、半月形の「風輪」、三角形の「火輪」、円形の「水輪」、方形の「地輪」という平面図で表しており、立体にすると、風輪は半球型で、火輪は屋根型(三角錐のものも存在)で、水輪は球形で表されます。
一般的に空輪と風輪は1つの石で作られ、他の部分はそれぞれ別のパーツとして作られることが多いです。
五輪塔はいつ登場した?
日本における五輪塔の歴史をひもとくと、平安時代にまでさかのぼります。
平安時代以前の一般庶民の間では、人が亡くなるとただ埋葬をするだけで、お墓というものはありませんでした。
その流れが変わったのが、平安時代中期に起こった浄土教の流行です。
「浄土教」と「念仏・往生」
浄土教とは、極楽浄土(阿弥陀仏が住んでいるといわれる国)に往生するため、阿弥陀仏の誓いを信じ念仏するという教えのことで、宗派である「浄土宗」や「浄土真宗」とは異なります。
浄土教は、中国で発達したあと、奈良時代に日本に伝えられました。そして、平安時代中期に「天台宗」の僧・源信(げんしん)によって、まず貴族の間に広まりました。また同じ頃、空也(くうや)上人が庶民に「念仏踊り」を広めました。
鎌倉時代になると、法然(ほうねん)上人、親鸞(しんらん)上人、一遍(いっぺん)上人が登場し、「念仏を唱えれば、阿弥陀様の慈悲により極楽へ往ける」という教えが、日本中に広まることになります。
成仏=往生=五輪塔
「五輪塔は密教の教理にもとづいて作られた」と「五輪塔とは」のところで解説しましたが、ではなぜ、密教の五輪塔の普及に、浄土教が関係してくるのでしょうか。
ここでキーパーソンとなるのが、覚鑁上人です。
密教では、「即身成仏(そくしんじょうぶつ)」という教えがあります。これは「密教」の実践を通じ、生身の肉体のまま仏になることを意味します。
覚鑁上人は、密教の本尊・大日如来による「即身成仏」の教えと、浄土教による阿弥陀様の「極楽往生」の考えは同じだと説いたのです。
ここに「成仏=往生=五輪塔」の教えが生まれます。
その後、覚鑁上人をはじめとする高野聖(こうやひじり=高野山を拠点として、布教や修行のために各地を巡り歩いた人たちのこと)が、
「人が亡くなった時に、五輪塔にお骨や遺髪、写経を納めると、亡くなった人は必ず成仏し、極楽往生できる」
「五輪塔のお墓を建てると、亡くなった人はすべて成仏し往生できる」
と教えたことで、日本の仏教はお葬式やお墓と深く関わりを持つこととなり、五輪塔が普及したのです。当時の五輪塔は木製で建てられ、現代主流となっている石塔タイプが普及する江戸時代までは、身分の上下関係なく建てられました。
なお、日本では平安時代後期の造立が確認されていますが、インドや中国、朝鮮では五輪塔タイプのお墓が見つかっていないため、「五輪塔は日本で生まれたお墓の形」とされています
五輪塔の文字
五輪塔が出現した平安末期から鎌倉・室町時代までは、上から順に「キャ・カ・ラ・ヴァ・ア」という五大を意味する種子(仏教の諸尊を梵字1文字で表したもの)を梵字(サンスクリット)で刻みました。
これが江戸時代になり、檀家制度が広まると、他宗の真似をすることが禁止され宗派別に異なる文字を入れるようになります。
・天台宗(密教)・・・ (上から)南無阿彌陀佛 または (上から)空風火水地の梵字
・真言宗(密教)・・・ (上から)空風火水地の梵字
・浄土宗 ・・・ (上から)南無阿彌陀佛
・浄土真宗 ・・・ (上から)南無阿彌陀佛
・禅宗(臨済宗・曹洞宗) ・・・(上から)空風火水地の梵字
・日蓮宗: (上から)妙法蓮華経 ※種子や文字のない五輪塔も存在する
なお、各宗派のお墓の特徴をまとめた記事がございますので、こちらもぜひお読みください。
◆宗派によるお墓の違い一覧
まとめ
覚鑁上人が説いたように、「五輪塔」を建てると、亡くなった人はみな最高の位と最高の世界へ往けるとされ、今日まで宗派を問わず、「ありがたい最高のお墓」とされています。
故人を仏様とし、極楽往生を叶える五輪塔。
故人の幸せを願うその想いの強さこそが、五輪塔の価値を高めているのかもしれません。