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安産や子育ての神様である鬼子母神とは?日蓮宗との関係も解説

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安産や子育ての神様である鬼子母神とは?日蓮宗との関係も解説

東京の都電荒川線には、鬼子母神前駅(きしぼじんまええき)という名前の駅があります。
雑司ヶ谷で古くから親しまれている駅ですが、名前に「鬼」という文字が入っており「鬼なのに神様なの?」と疑問に思った人もいるかもしれません。

実は鬼子母神(きしもじん)は、子宝や安産などのご利益をもたらしてくれる神様です。
今回は、この鬼子母神がなぜ安産や子育ての神様なのかについて、わかりやすく解説します。

鬼子母神とは?鬼なのに神様?

鬼子母神は、もともとはハーリーティー(ハリティー)と呼ばれる古代インドの神様でした。日本では、ハーリーティーという読み方に漢字を当てた訶梨帝母(かりていも)という名前も使われています。

鬼子母神とお釈迦様の逸話

鬼子母神は夜叉(やしゃ)と呼ばれる毘沙門天の眷属である鬼神の一柱で、数百人から1万人もの子供を産んだ母親だと伝えられています。

しかし鬼子母神には、人間の子供をさらって食べてしまうという恐ろしい一面もありました。
我が子を育てるために栄養をつけなければならなかったという説も存在しますが、子供を食べられた人間たちは悲しみ、鬼子母神を恐れました。そして人々はお釈迦様に助けを求めます。

お釈迦様は鬼子母神を止めるために、ある方法を取ります。
それは、彼女が特にかわいがっていた一番下の子供を隠してしまうことでした。
鬼子母神は、いくら我が子を探しても見つけられず、嘆き悲しみます。
それを見たお釈迦様は「たくさんいる子供のうち、一人を失うだけでもこんなにつらい気持ちになる。それなら、少しの子供しかいない人間の親たちが我が子を失ったとき、どれほどつらい思いをするかわかるはずだ」と言い、隠していた子供を鬼子母神のもとに帰しました。

そして鬼子母神は自分の行動を反省し、お釈迦様の教えを守り、我が子だけでなくすべての子供たちを守るよい神様となったのです。

鬼子母神がザクロを持っている理由

鬼子母神の像といえば、左手に幼子を抱き、右手に吉祥果(きちじょうか)を持った姿が有名です。吉祥果は、一般的にザクロのことを指します。
一説には、鬼子母神が心を入れ替えたあと、お釈迦様が「また人間を食べたくなったら、代わりにザクロを食べるように」と彼女にザクロを渡したと言われています。

またザクロは実の中にたくさんの種があることから、子孫繁栄の象徴とされており、鬼子母神が持っているザクロは子孫繁栄を願っているという説も存在します。

鬼子母神の読み方は?

実は、都電の駅名とお寺では、鬼子母神の読み方が少し異なります。
都電の「鬼子母神前」は「きしぼじんまえ」です。一般的に「母」は「ぼ」と読むため、この読み方も間違いではありません。

一方、「鬼子母神前」からほど近い場所にある「雑司ヶ谷鬼子母神堂」は「ぞうしがやきしもじんどう」と読みます。仏教では「母」を「も」と読むため、雑司ヶ谷だけでなくお寺では「きしもじん」と読んでいるのです。

ちなみに雑司ヶ谷鬼子母神堂のように、鬼子母神を祀るお寺では「鬼」という漢字を、一番上の点(角のように見える部分)がない形にしていることがよくあります。これは、鬼ではなくよい神様となり、角がなくなったことを表していると言われています。

鬼子母神のご利益

安産や赤ちゃんの健やかな成長、子供を授けてくれるといった子供に関するご利益が有名です。
ほかにも病気を防ぐ無病息災、すでにかかってしまった病気を治す病気平癒などのご利益もあります。

日蓮宗での鬼子母神

日蓮宗では、鬼子母神を「法華経(ほけきょう)を信じる人を守る神様」として特に大切にしています。

お釈迦様の教えを記したお経はたくさんありますが、日蓮宗では法華経がお釈迦様の本当の教えであり、これを唱えることが仏になる唯一の道としています。

日蓮宗の開祖である日蓮は、人々を苦しみから救うために、法華経を世に広めることに力を注ぎました。法華経を信じる人は鬼子母神の守護を得られるとされ、日蓮宗で鬼子母神を祀っているお寺はたくさんあります。

日本三大鬼子母神のお寺

ここでは、日本三大鬼子母神としてたくさんの人に親しまれる3つのお寺を紹介します。

雑司ヶ谷鬼子母神堂(法明寺)

鬼子母神の読み方の解説で述べた、東京都豊島区にあるお寺です。
江戸時代にはすでにたくさんの人がお参りする場所となっており、門前町もにぎわっていました。境内には樹齢約700年の大イチョウがあります。

鬼子母神に数百人から1万人の子供がいたという言い伝えから、子宝に恵まれるようにという願いを込めて「おせん団子」が生み出され、名物となっています。

入谷鬼子母神(真源寺)

東京都台東区にある、毎年7月の入谷朝顔まつりで有名なお寺です。

また「恐れ入谷の鬼子母神」という洒落(しゃれ)でも知られています。
一説によれば、昔、ある人が21日かけて入谷の鬼子母神に願掛けをしたところ、最終日の帰り道に願いが叶ったという話から、江戸っ子たちが鬼子母神のご利益には恐れ入ったと「恐れ入谷の鬼子母神」という洒落を好んで使うようになったと言われています。

中山鬼子母神(法華経寺)

千葉県市川市中山にあり、世界三大荒行の一つ「日蓮宗大荒行堂」で有名なお寺です。

法華経寺は、鬼子母神と日蓮宗のつながりを感じられる場所でもあります。
日蓮は生涯の中で、何度も命を狙われたり、危険な目に遭ったりしました。文永元年(1264年)11月11日にも、日蓮は大名に襲撃され大けがを負ってしまいますが、突如現れた鬼子母神によって命を救われました。
中山に逃れた日蓮は鬼子母神の守護に感謝し、自ら鬼子母神の像を彫ったと言われ、今でもその像は法華経寺で大切にされています。

鬼子母神への感謝と親しみを持ってお参りしてみませんか?

鬼子母神は名前に鬼とつくものの、安産や子供の成長、病気平癒などのご利益がある神様として昔から信仰され、庶民の間でも親しまれてきました。

今回紹介した日本三大鬼子母神以外にも、全国に鬼子母神を祀るお寺はたくさんあります。あなたの住んでいる地域の鬼子母神を探して、お参りしてみてはいかがでしょうか。

もしかしたらあなたのご先祖様も、あなたやあなたの両親の安産、無病息災を祈って鬼子母神にお参りしていたかもしれません。

お墓参りに行って、「鬼子母神によってつながれた縁」を確認してみるのもよいでしょう。

子供の無病息災を鬼子母神に祈ったら、子供と一緒にお墓参りに行ってご先祖様に祈るのもおすすめです。子供にとって、家族やご先祖様とのつながりを感じるよい機会となるはずです。