お役立ちコラム お墓の色々

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お墓参りで見かける六地蔵。6体並んでいる意味とは?

供養・埋葬・風習コラム

お墓参りで見かける六地蔵。6体並んでいる意味とは?

お墓参りの際、墓地の入り口に6体並んでいるお地蔵様を見かけたことはありませんか?お墓について調べるときは、一緒に仏教のことも少し学んでみると良いかもしれません。死生観をあらためて考える良い機会になりますし、ご供養にもより一層気持ちが込められると思います。本記事ではお墓参りで見かける六地蔵を始め、さまざまな場所でお見かけするお地蔵様についてご説明します。

そもそもお地蔵様とは

お地蔵様の正式なお名前は、地蔵菩薩といいます。インドの古典語であるサンスクリット語でクシティ(大地)・ガルバ(胎内)と言われていたものが、意訳されて「地蔵」となりました。
道端でお見みかけしたり、雑貨のデザインになっていたり、私たちには比較的身近なお地蔵様ですが、実はとても重大な役目を背負った存在です。仏教では、お釈迦様が入滅(亡くなる、という意味)して以降、現世には仏が存在しなくなったと考えられています。次の仏となる弥勒菩薩が悟りを開くのは56億7000万年後(5億7600万年後とする説も)と言われており、地蔵菩薩はそれまでの長い期間、仏に代わって人々を救い導く役目を任されているのです。

6体並んだお地蔵様(六地蔵)の意味

地蔵菩薩は、手を合わせた者の身代わりとなって地獄の苦しみから救うだけでなく、死者が生まれ変わる六つの世界すべてを巡って救済を行うと考えられています。六地蔵とは、地蔵菩薩が六つの世界へ赴くために姿を変えたものなのです。お墓にある六地蔵は、故人が良い世界に生まれ変わることを願って建てられています。
六つの世界は「六道(ロクドウまたはリクドウ)」と呼ばれています。人は亡くなると生前の行いをもとに、どの世界に生まれ変わるか、審判を受けると言われています。程度の違いはありますが、どの世界も苦しみから逃れることはできません。本来、仏教の目的は、悟りを開いてこの六道の輪廻転生から抜け出すことにありました。
*浄土真宗では、全ての死者は阿弥陀如来によって極楽浄土に招かれると考えられているので、六道に生まれ変わることはありません。

天道…悩みや苦労がなく、楽しいことに満ち溢れた世界です。しかし、天道といえどもいつかは死がおとずれ、幸せな世界から立ち去らなければいけない悲しみや恐怖があります。

人間道…人間が住む世界です。苦しみもたくさんありますが、仏教を修めることで輪廻を抜けられる可能性のある唯一の世界です。

修羅道…戦いや争いが絶えることがない世界です。
畜生道…牛や馬など、弱肉強食の畜生の世界です。
餓鬼道…飢えと渇きに常に苦しむ世界です。
地獄道…六つの世界で最も過酷な世界です。苦痛が絶えず続くと言われています。

救済に向かう六道とお地蔵様の関係は以下のようになっています。ただし、地域やお寺によってお地蔵様の名前が異なることもあります。

 天道…日光地蔵
 人道…除蓋障(じょがいしょう)地蔵
 修羅道…持地(じじ)地蔵
 畜生道…宝印地蔵
 餓鬼道…宝珠地蔵
 地獄道…檀陀(だんだ)地蔵

有名な長野県善光寺の六地蔵では、地獄道へ向かうお地蔵様だけが片足を崩しています。これは、最も過酷な地獄道へ一刻も早く救済に向かおうとする姿と言われています。地蔵菩薩の慈悲深さを伺うことができます。

お墓以外で見かけるお地蔵様にはどんな意味が?

お墓に六地蔵がある意味はおわかりいただけたかと思います。では、6体並んでいないお地蔵様や道端でお見かけするお地蔵様にはどんな意味があるのでしょうか?

墓石のそばに建てられたお地蔵様

墓石のそばに建てられているお地蔵様は、水子地蔵の場合があります。水子とは、流産や中絶によってこの世に生まれることのできなかった胎児や、幼くして亡くなった子供を意味します。生まれて間もなく海に流された日本神話の神・水蛭子(ヒルコ)が名前の由来となっています。水子地蔵には、我が子の成仏やあの世での幸せを願う親心が込めれているのです。
地蔵菩薩は子供と縁の深い存在です。有名な「賽(サイ)の河原」の話では、幼くして亡くなった子供は三途の川を渡れず、親のために石を積み上げるように命令されますが、いくら積み上げても鬼によって崩されてしまいます。子供たちに課せられたこの終りのない苦行も、地蔵菩薩が救うと考えられています。水子供養にお地蔵様を作るのはこうした背景があるからです。

道端に建てられたお地蔵様

お地蔵様を道端でお見かけすることもあると思います。この場合は、日本の道祖神信仰とつながって地域を守る存在として建てられていることが多いです。
 道祖神とは、旅の安全や道の安全を守る神様、またはそれらを祈願して建てられた石碑や石塔、祠を指します。また、集落や村の入り口にある場合には、外からの災いを避けたいという願いが込められています。お墓の入り口にあるお地蔵様も同じで、故人が安らかに眠れるようにあの世とこの世の境界を守ってもらうという意味もあるのです。
 道祖神は名前の通り「神」です。仏教とは異なる考え方なのですが、日本の神は仏が姿を変えたものと考える「本地垂迹説(ホンチスイジャクセツ)」や民間信仰と相まって、道祖神がお地蔵様の形をしている場合があります。

他にも、東京にある高岩寺の「とげぬき地蔵」や京都にある仲源寺の「めやみ地蔵」など、地蔵菩薩をご本尊とするお寺が日本各地にあります。

お墓もお地蔵様も故人のためにあります

現世のさまざまな場所で私たちを見守ってくださるだけでなく、故人のために六道に赴くお地蔵様は、生者死者のどちらにも身近で頼りになる存在です。お墓や道端でお見かけした際は、故人共々常日頃お世話になっているお礼に手を合わせてみてはいかがでしょうか?