お役立ちコラム お墓の色々

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マンション・アパートでの迎え火はどうすればいいの?

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マンション・アパートでの迎え火はどうすればいいの?

夏の風物詩でもあるお盆の迎え火・送り火ですが、マンションやアパートにお住まいの方の中には、控えている方も多いと思います。火災の心配やご近所への配慮もあり、なかなか難しいのが実情のようですが、火を焚かなくてもご先祖や故人を偲ぶ気持ちを表すことはできます。本記事では迎え火・送り火の代わりに盆提灯を使ったお盆の供養方法をご紹介します。ご先祖や故人を大切にする伝統はぜひとも続けていきたいものです。

お盆の迎え火・送り火とは

浄土真宗以外の仏教各宗派では、お盆の13日にあの世にいるご先祖や故人の霊が家に帰ってきて、その月の16日までこの世に滞在するという考え方があります。迎え火・送り火にはお迎えとお見送りの意味があるのです。
もともとの迎え火の作法は、お墓の前で提灯に火を灯して持ち帰り、仏壇に移すというものでした。送り火は仏壇の火を提灯でお墓まで持っていき、その前で消すものでした。現在はお墓が遠い方も増えていますし、火を持ち歩くのも難しいので、下記のようなやり方が一般的になりました。
迎え火では、ご先祖や故人があの世から戻ってくるときの目印として、13日の夕方に玄関先で小さな火を焚きます。送り火では、「あの世へ迷わず帰れるように」と願いを込めて、16日の夕方に、迎え火と同じ場所で火を焚きます。
浄土真宗では、迎え火・送り火は行いません。亡くなった方は仏様になるので、「お盆に霊が帰ってくる」という考え方が無いからです。お盆は「歓喜会(かんぎえ)」と呼ばれ、ご先祖や故人に感謝を表す行事になります。盆提灯は「感謝の意を表すもの」として使うことができます。

マンション・アパートでの迎え火は難しい

マンションやアパートで迎え火・送り火を行うことは、正直なところ難しいようです。玄関の外は共用部分だと思いますので、ここで火を焚くのはマンションの規約に反している可能性が高いからです。また、ベランダやバルコニーで行う方もいるようですが、実はこれらの場所も、法律上は共用部分です。立ち上る煙で隣の部屋に迷惑をかけたり、火事と間違われてしまう可能性もあるのでおすすめはできません。

マンション・アパートでは盆提灯がおすすめ

前項の事情からマンションやアパートでは、迎え火・送り火の代わりに盆提灯の利用がおすすめです。盆提灯とは、迎え火・送り火のように「先祖や故人の霊が迷わず帰ってくる目印」として飾る提灯です。また、故人を供養し、感謝を表す意味もあります。
提灯とはいっても、コンセントを指して使う電気式のものや、電池式のろうそく型のライトを飾るものもあるので、正しく使えば火災の心配もありません。飾る場所は精霊棚や仏壇の前になるので、共用部分のルールに違反することもありません。
盆提灯は6月ごろからホームセンターやスーパーで売られています。また、通販や仏具店では一年中販売しています。石材店で手に入る場合もあります。

盆提灯の種類

盆提灯はさまざまな種類があります。ここではその一部をご紹介します。大きさもさまざまなものがあるので、お住まいの環境に合わせて選びましょう。毎年使うもですから、保管の際に場所をとらないことも大事なポイントです。
盆提灯は1対で使うものなので、同じものを2つ用意します。

吊り提灯

上から吊るす提灯です。縦長の御所提灯(ごしょちょうちん)や丸型の御殿丸(ごてんまる)などの種類があります。吊るす場所や方法はあらかじめよく検討しておきましょう。

置き提灯

置いて使う提灯です。豪華な印象の大内行灯(おおうちあんどん)や、ライトをつけると、熱で中の回転筒が回る回転行灯(かいてんあんどん)などがあります。

初盆に使う白提灯

他の提灯とは違い、四十九日の忌明け後、初めてのお盆に使う提灯です。初めて家に帰ってくる故人のための特別な目印として飾りますので、なるべく外から見えるように、ベランダや窓際に飾ります。また、他の盆提灯と違い、1対ではなく、1つ用意します。初めてのお盆が終わったら、燃やして処分するのが良いとされています。ご自身で燃やすのが難しい場合は、お寺にお焚き上げをお願いすることもできます。

盆提灯の飾り方・点灯の時期

新盆でも、旧盆でもそれぞれ月の初めから飾って良いとされています。ただし、点灯するのは迎え火・送り火のタイミングが良いでしょう。13日の夕方に点灯し、16日の夕方には再度点灯した後片づけます。その間の14日と15日は特に決まりはありません。夕方から寝る前まで点ける方、一日中点けたままの方、夕方から明るくなるまで点ける方がいらっしゃいます。地域やご家族でやり方が決まっている場合もありますので、確認してみても良いでしょう。

盆提灯を飾る場所

盆提灯は一般的に、精霊棚に飾ります。精霊棚を作っていない場合には、玄関になりますが、外側だとやはり共用部分になってしまうので、玄関の内側に飾るのが良いでしょう。また、ベランダや窓際に飾ることもできます。火を焚くのは禁じられていますが、専有して使うこと自体は禁止されているわけではないからです。洗濯物を干したりするのと同じことです。特に、初盆の白提灯は外から見えるところに飾るのが良いとされているので、ベランダや窓際に飾るようにしましょう。

精霊棚や精霊馬の用意も

盆提灯を用意するのでしたら、ぜひ精霊棚や精霊馬も用意しましょう。特に精霊棚は、盆提灯を飾る場所でもあり、ご先祖や故人の霊が過ごす場所でもあるとても重要なものです。小さなものでも大丈夫ですので、ぜひご用意して差し上げましょう。ただし、浄土真宗では、精霊棚や精霊馬は用意しないのでご注意ください。

精霊棚

精霊棚とは、お盆の間だけ設ける特別に作った棚で、戻ってきた霊が滞在する場所になります。ここでは簡単なものの作り方をご紹介します。小さな机の上に、真菰(まこも)のゴザを引き、位牌の左右に盆提灯を置いてください。さらに菊や百合などの盆花、季節の野菜や果物、故人の好きだった食べ物などのお供え物、精霊馬を飾ります。真菰のゴザや盆花は、時期になるとスーパーやホームセンターで売られています。

精霊馬

キュウリやナスで作った馬のことです。故人があの世とこの世を移動する際の乗り物になると考えられています。簡単に作れるものですので、盆提灯や精霊棚と一緒にぜひ用意しましょう。精霊馬の作り方や意味、飾り方についてはこちらでご覧いただけます。
「故人のためのお盆の過ごし方。精霊馬を作ってみよう」

ご先祖や故人を大切に想う気持ちはぜひ形にしましょう

盆提灯を飾ったり、精霊棚を作ったり、お盆の準備はやや手間のかかることかもしれませんが、手をかけるほど故人への感謝の気持ちは強くなっていくと思います。盆提灯の灯る夜に、お迎えした故人を身近に感じることができたなら、今度は私たちの方から忘れずにお墓参りへ出向きましょうね。