お役立ちコラム お墓の色々

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卒塔婆には立てるタイミングがあります

供養・埋葬・風習コラム

卒塔婆には立てるタイミングがあります

仏壇のそばや、お墓の後ろに立てられる、薄くて細長いこの木の板を卒塔婆(そとば/そとうば)、略して塔婆(とば/とうば)と言います。この卒塔婆には立てるタイミングがありますが、そもそも卒塔婆とはどういったものなのでしょうか。

卒塔婆の由来

卒塔婆は、ヒンズー語の「Stupa(ストゥーパ)」が語源です。
ストゥーパとはお釈迦様の骨である仏舎利を安置し供養する円形の仏塔のことで、お釈迦さまの遺徳をたたえるため、石柱のストゥーパがインド各地に建てられました。
仏教がインドから朝鮮半島を経由して日本に伝わり、日本でもストゥーパを模した五重塔や五輪塔が建てられました。卒塔婆はもともと、この仏塔のことを指します。そして、石で作られていたものは、木製へと変わり、さらに薄い板へと簡略化されていきました。
卒塔婆は単なる木の板ではなく、その形には凹凸があります。この凹凸は、石造の五輪塔を模したものです。五輪塔は5つの部分から構成され、それぞれ上から宝珠型は「空」、半円形が「風」、三角形は「火」、円形は「水」、一番下の四角形は「地」を示しています。「宇宙も人間も、この5つの要素で生かされている」と考える、古代インドの宇宙観が反映されたものです。

卒塔婆に書かれているものは?

表面の一番上に書かれている文字は、「梵字(ぼんじ)」と呼ばれるものです。前述した通り、卒塔婆の凹凸は5つの区切りとなっており、「空・風・火・水・地」に対応する「キャ・カ・ラ・バ・ア」の5つの梵字が書かれています。
梵字以外に書かれていることは、供養する日に縁のある十三仏を梵字で書いた「種子(しゅじ)」や、戒名、年忌、施主名、起塔日などです。

どうして卒塔婆を立てるのか?

卒塔婆は、故人の追善供養を目的として立てられます。
追善供養の「追」は、文字通り「追いかける」という意味を持ち、「善」は、仏教における善い行いを指します。「今を生きている私達が仏様に対して善い行いを積み重ねることは、故人の善行にもなる」という考えに基づき、故人が極楽浄土へ無事辿り着けるようにと願い行うものです。

卒塔婆を立てない宗派

仏教には13の宗派が存在していますが、この中で、浄土真宗では塔婆を立てないことが基本です。これは浄土真宗の教えの中に「往生即成仏(亡くなるとすぐに仏になれる)」というものがあり、卒塔婆を立てて故人の往生を祈願する必要がないためです。
他にも、地域の習わし等で立てない場合や立て方が決まっている場合もあるので、卒塔婆供養を行いたい際には、事前に寺院や石材店に確認したほうが良いでしょう。

卒塔婆の種類

塔婆には全部で5種類あります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

板塔婆(いたとうば)

その名のとおり、細長い木の板に文言を記した卒塔婆で、一般的によく見かけるものです。長さは地域によって差があり60~200cmほどで、厚みは1cm程度。主にお墓の後ろ、もしくは周辺に立てます。

角塔婆(かくとうば)

木を四角柱に加工した柱型の卒塔婆で、長さは120~210cmほどと板塔婆よりも長く、厚さは10cm程度あります。墓石ができあがるまでの間、墓石の代わりにお墓の目印として使われることが一般的です。その他、寺院の新築・再建・修繕・改築時に行うお祝いの儀式・落慶法要(らっけいほうよう)で立てられるケースもあります。

経木塔婆(きょうきとうば)

板塔婆よりも小さいサイズで、長さは27~36cmほど、厚みは1mmほどのものです。経木とは、スギやヒノキを紙のように薄く削って作った板を指します。
供養のために、水に浮かべたり川に流したりすることがあるため、別名・水塔婆と呼ばれることもあります。水塔婆は特に生まれてこなかった胎児の霊を供養する「水子(すいじ)供養」の際に用いられます。

七本塔婆(ななほんとうば)

長さが30cm~40cmの板塔婆を7本まとめて立てるものを指します。形状はいろいろで、1本ずつ立てるよう塔婆立てに入っているものや、扇状になっているもの、連板のようにくっついているものなどがあります。
初七日から四十九日法要まで、7日ごとに営む法要の時に立てられます。地域によっては、7日ごとの法要時に毎回七本塔婆を立てるのではなく、初七日に立て、その後の7日ごとの法要時に1本づつ抜いたり、あるいは裏返したりします。

梢付き塔婆(うれつきとうば)

別名を杉塔婆、生木塔婆とも言い、三十三回忌や五十回忌などの弔い上げの際に、枝葉がついたままの生木を立てる塔婆です。
使う生木は、神聖な木といわれるスギが多いですが、マツやヤナギを使うところもあります。地域によっては、弔い上げの場合でも板塔婆を用いる場合もあるなど、地域や寺院によって生木の品種や枝葉の有無が変わる可能性があります。法要の打ち合わせをするときに合わせて確認しましょう。

卒塔婆を立てるタイミングは?

卒塔婆を立てるタイミングは多くの場合、以下5つの節目に立てられます。

納骨式

火葬後の遺骨をお墓や納骨堂に納める儀式のことを指します。卒塔婆は、仏壇の周りに立てることもありますが、基本的にはお墓に立てるものですので、最初に卒塔婆を立てるのは納骨式となります。
納骨式は単独で行うこともあれば、四十九日や一周忌などに合わせて行うこともあり、参加人数が多くなる傾向にあります。納骨式に卒塔婆を立てる場合は、前もって僧侶に依頼しておき、当日はスムーズに式が執り行えるようにしましょう。

年忌法要

年忌法要とは、百箇日(ひゃっかにち)法要を過ぎ、一周忌から続く年単位の法要を言います。一周忌をはじめとして、三回忌・七回忌・十三回忌・十七回忌となり、弔い上げ(三十三回忌または五十回忌)まで続きます。納骨式を単独で行う場合は、納骨式と年忌法要のそれぞれで卒塔婆を立てます。

お彼岸(春、秋)

お彼岸とは、3月の春分の日と9月の秋分の日を中日として、前後3日間を含めた各7日間を言います。最初の日を「彼岸の入り」、最後の日を「彼岸の明け」と呼びます。ご先祖様の霊を慰め、成仏を祈るために卒塔婆が立てられます。

祥月命日(しょうつきめいにち)

故人が亡くなった月日と同じ月日のことです。故人の亡くなった日から一年以降に行い、遺族だけで供養する場合が多いのが特徴で、年忌法要ほど大がかりなものではありません。仏壇をきれいにしたり、故人が好きだった食べ物や花を供えたり、お墓参りをしたりということが多いです。そのとき、合わせて卒塔婆も立てます。

お盆の施餓鬼法要

お盆には、ご先祖様があの世から現世へ帰って来るとされています。この時期に、餓鬼道に堕ちた霊(餓鬼)に対し、さまざまなお供えをすることで霊を救い出すとされているのが、施餓鬼(せがき)法要です。これは先祖の追善供養とは異なり、飢えや渇きなどの苦しみから抜け出すことができない餓鬼に対して、檀家の人々が食物とともに卒塔婆を立てて亡者を供養します。

供養の気持ちを表す「卒塔婆」

卒塔婆を立てる際にもっとも大切なことは、供養の気持ちを表すことにあります。立てられる際は、親戚・縁者などと「いつ卒塔婆を立てるのか」を相談し、事前にお寺や管理者への連絡をとるなどといった配慮を忘れないようにしましょう。