お役立ちコラム お墓の色々
お役立ちコラム お墓の色々
- 供養をきわめる -
そもそもご供養の意味とは?
死者の弔いには欠かせない「供養」の気持ち。お葬式やお墓参りでは「ご供養になりますから」や「良い供養ができました」などの言葉を耳にする機会も多いと思います。お墓や仏壇に手を合わせる行為が連想されますが、実はその背景には日本古来の祖先崇拝やアニミズム(生物・無機物を問わず、すべてのものに魂や霊が宿っているという考え方)と仏教が結合した歴史があります。本記事では仏教上の供養の意味やさまざまな供養の意味を紹介し、供養の根底にある考え方を解説します。
供養の意味とは?
供養とは、仏教発祥の地、インドの古典語であるサンスクリット語で、「尊敬」を表す言葉「プージャー」を日本語に意訳した言葉です。私たちが「供養」という言葉を聞くと、お葬式やお墓参りなど、ご先祖や亡くなった方を弔う行為を想像する方が多いと思います。しかし、仏教では原語の意味のとおり、仏様や菩薩への尊敬を込めて読経をしたり、御花や御供物をささげる行為も含まれます。
さまざまな種類がある「供養」。それぞれの意味とは?
では、実際にどのような供養があるのか、代表的な3つの種類をご紹介します。さまざまな供養について知ることで、その意味合いがよりわかりやすくなると思います。
利供養
利供養とは、仏様・菩薩に供物を捧げて、尊敬の気持ちを表すことです。
敬供養
敬供養とは、生きている私たちが故人のために行う供養です。仏壇に手を合わること、お墓参り、法要などの故人を弔う行為は全て敬供養と言えます。
行供養
行供養とは、仏道修行のことです。私たちが現世で善い行いをすることで、故人の徳を積むことができると考えられています。
お墓参りや法要などの供養は、なぜ必要なのか?
ご先祖や故人になぜ供養が必要なのか、それは理屈ではなく心で理解できると思います。どのようなご先祖様であったとしても、今の自分がいるのはご先祖様が命のたすきをつないでくれたからです。
ここでは、ご先祖や故人になぜ供養が必要なのか、仏教上の理由をご説明します。*ただし、浄土真宗の場合は他宗派と少し異なります。あらためて後述します。
仏教では、亡くなった人は生前の行いをもとに、六道と呼ばれる六つの世界のいずれかに生まれ変わるとされています。過酷な世界も楽な世界もありますが、どの世界も苦しみから逃れることはできません。元来の仏教の目的は、悟りを開くことで六道の輪廻転生から抜け出すことにありました。
簡単に六道の世界を説明します。
天道…悩みや苦労がない世界です。しかし、天道でもいつかは死がおとずれ、幸せな世界から立ち去らなければいけない悲しみや恐怖があります。
人間道…人間が住む世界です。煩悩もたくさんありますが、仏教を修めて輪廻を抜けられる可能性のある唯一の世界です。
修羅道…戦いや争いが絶えることがない世界です。
畜生道…牛や馬などの畜生の世界です。
餓鬼道…飢え・渇きにいつも苦しんでいる世界です。
地獄道…六道で最も過酷な世界です。苦痛が常に続くと言われています。
六道のどの世界に生まれ変わるか、その審判は亡くなってから四十九日目に閻魔大王の裁判によって決まることになっています。先述したとおり、生前の善行がもとになりますが、それだけでなく、現世の親戚縁者が善行を積むことでも、故人を良い世界に生まれ変わらせることができるのです。つまり、敬供養や行供養は閻魔大王に便宜を図ってもらうために行われていると言えます。
また、一周忌や三回忌などの、四十九日以降の法要は、過酷な世界に生まれ変わってしまった故人が仏様の導きで救済されることを願って執り行われます。また、これらの節目の法要には気持ちを整理し、悲しみに区切りをつける意味もあります。
浄土真宗の場合、亡くなった人は「往生即成仏」です。つまり、六道に向かうことは無く、すべて阿弥陀如来によって極楽浄土に導かれると考えられています。節目の法要は、仏様やその教えに感謝を捧げる意味で執り行われます。
その他の「供養」の意味
供養の根本的な意味合いはおわかりいただけたかと思います。ここでは供養という言葉がついているものの、一見すると意味を察することができない「供養塔」「永代供養」「粗供養」の3つについてご説明します。
供養塔
供養塔には2種類のものがあります。ひとつは、個々の墓所に墓石の代わりとして、もしくは墓石に追加して建てられているものです。こちらはお墓の一部ですので、墓石とそれほど意味合いは変わりません。もうひとつは、戦争や天災の死者の供養として建てられたものです。身元が分からなかったり、引き取り手がいない場合に建てられることがあります。こちらの供養塔も故人の供養のために建てられたものには違いはありませんが、慰霊碑と似た意味があります。現世の私たちが同じ過ちを繰り返さないように、教訓の意味も込められています。
永代供養
「永代供養」という言葉は、供養の「目的」や「方法」ではなく、「仕組み」を指します。故人に子供がいない方や、遠方でなかなかお墓参りに行けない方など、お墓の管理が難しい方に代わって、寺院や霊園が代わりに供養をしてくれることです。
詳しくはこちらをご覧ください。「永代の意味から「永代供養」のことを知りましょう」
粗供養
粗供養とは、葬儀や法要の参加者にお返しとして粗品を贈ることを意味します。関西を中心に使われている言葉で、関東では「志」という言葉を使います。どちらも返礼品の表書きにも使われています。
私たちのための供養の意味
仏教上の観点から故人にとっての供養の意味を説明してきましたが、ご供養はあなたにとっても大切な意味があります。仏壇やお墓に手を合わせる行為には心を落ち着け、悲しみを癒す力があります。葬儀や法要などの親族が集う場は、家族の歴史を知る機会になったり、家のつながりを深める機会にもなります。また、ご先祖や故人のために徳を積む、誰かが見ていなくとも正しい行いをする、人知れず努力をすることも、あなたの人生を好転させる良い習慣になるはずです。故人のためにも、あなたのためにも、お墓参りを続けていきましょう。