お役立ちコラム お墓の色々

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- 供養をきわめる -

お墓と仏壇の気になる関係性

葬祭基礎知識

お墓と仏壇の気になる関係性

故人を祀る場所と言えば「お墓」が代表的ですが、「仏壇」もまた故人を供養するものとして、多くのご家庭に昔から設けられています。現在、都市部で仏壇がある家は少なくなってきたものの、地方ではお墓も仏壇もある家は少なくありません。
両者の違いは一体何なのでしょうか?故人を供養するためには、どちらも必要なのでしょうか?それとも片方だけでも大丈夫なものでしょうか?
本記事では、そんな「お墓と仏壇の気になる関係性」についてご紹介します。

お墓と仏壇の違い

まず、両者の違いをごくカンタンに紹介します。

お墓

・墓地や霊園に建てられる石造りの建造物。中には遺骨が収納される。

仏壇

・家に設けられる祭壇。位牌と仏像または仏画が設置される。

「屋外か屋内か」「遺骨か位牌か」と大きな違いがありますが、どちらも故人やご先祖様のために手を合わせて拝む対象ですので、役割の違いはわかりにくいと思われます。そのため、両者の違いを知るには「意味合い」について知る必要があります。
それぞれの意味合いを端的に説明すると、お墓は「故人とご先祖様を祀るもの」、仏壇は「仏様を祀るためのもの」です。
遺骨が納められるお墓が「故人とご先祖様を祀るもの」なのは、感覚的に納得しやすいと思います。では、仏壇の「仏様を祀る」とは一体どういう意味なのでしょうか?

お墓とは異なる仏壇の意味合い

仏壇に欠かせないものは、「仏像や仏画」と「位牌(*)」です。これらはお墓に設けられることは稀です。実際に墓地を訪れてみると、仏像のあるお墓も全くないわけではありませんが、圧倒的に少ないはずです。つまり、「仏像や仏画」「位牌」を置くのは、仏壇特有の習慣であることがわかります。
なぜ仏壇には、こうしたものを置くのでしょうか?それは、仏壇が「小さなお寺」の意味合いを持つからです。お寺には、「御本尊」と呼ばれる、最も重要な仏像、または菩薩像があります。仏壇の仏像や仏画は、これを模して仏壇に飾られています。
仏壇をよく見てみると、仏像や仏画は最も高い段に置かれているはずです。この段は「須弥壇(しゅみだん)」と言い、仏教における聖なる山である「須弥山(しゅみせん)」を象徴したものです。須弥壇に置かれた仏像・仏画は、仏壇の最上位にあるもので、中心的存在でもあります。つまり仏壇とは、故人を祀るものではなく、仏様を祀るためのものなのです。家に仏壇を置くことで、仏様にいつでも手を合わせられ、徳を積むことができるようになります。こうした日々の行いを通して、家内安全などの仏様のご利益にあやかろうというのが本来の仏壇の意味合いです。
一方、位牌は戒名・俗名・没年月日・享年が記されたもので、故人の魂が宿る場所とされています。位牌・仏像または仏画を一緒に仏壇に並べるのは、「故人や先祖が仏様の導きで無事成仏するように」という願いが込められているからです。
ちなみに、位牌は必ず仏像・仏画よりも低い位置に置きます。仏壇の中心は仏様なので、それより高い位置に置くのは失礼にあたるからです。こうした習慣からも仏壇の中心が仏様であることがわかります。

※浄土真宗では位牌を利用しません。代わりに過去帳・法名軸と呼ばれる、先祖代々の名前と戒名、没年月日と死亡年齢などが記入された系譜を用意します。浄土真宗の教義では、亡くなった方の魂は、仏様の手ですぐに極楽浄土へと導かれると考えられています。故人の魂は死後すぐに成仏しますので、「位牌に魂が宿る」という考え方をしないのです。

お墓と仏壇の関係性は変化しています

日本では、江戸時代に成立した檀家制度のもと多くの人々が仏教徒になりました。仏壇はこのような背景により各家庭に設置され、馴染みのあるものとなります。
しかし現代では、その意味合いが少し変わってきています。日本人の宗教観が変化しているからです。都市の人口が増えるにつれ、仏壇を置く家自体も昔より少なくなっています。そのため、仏様を祀る場というよりも、家の中で故人やご先祖様に手を合わせ、感謝するための場と捉えている方が増えています。つまり、お墓の持つ意味合いと似てきているのです。
本記事の冒頭でお訊ねした、「故人を供養するためには、どちらも必要なのでしょうか?それとも片方だけでも大丈夫なものでしょうか?」という問いには、実は答えはありません。仏壇だけを用意して、遺骨を手元で供養する方もいらっしゃいますし、ご自宅のスペースの都合でお墓だけを用意する方もいらっしゃいます。もちろん、両方用意しない方もいらっしゃいますし、両方用意する方もいらっしゃいます。
ただし現実的に考えると、仏壇だけを用意して手元供養となると、遺骨が増えるにしたがって広いスペースが必要になります。その場合は、お墓や納骨堂を利用した方が良いでしょう。また、お墓があっても仏壇も用意したいという方ももちろんいらっしゃいます。確かに、手を合わせる対象として家に仏壇があると、故人をより身近に感じられるかもしれません。
つまりは、それぞれのご供養の形があって良いのです。何よりも大事なのは故人やご先祖様に感謝する気持ちであり、お墓や仏壇はそれを表すためのものです。自分に合ったご供養の形を探してみましょう。

お墓の意味合い・納骨の意味合いはこちらで詳しく解説しています。
そもそも納骨をすることの意義や理由とは