お役立ちコラム お墓の色々
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- 供養をきわめる -
現代の猫寺だけじゃない!昔から続いてきた猫とお寺の関係

近年、SNSなどで猫寺が話題となっています。お寺で気ままに過ごす猫の写真を見て、癒されている人も多いのではないでしょうか。
お寺に猫がいる理由は、お寺で猫を保護したから、住職がもともと猫好きだったからなど、場所によってさまざまです。
しかし猫とお寺の関係は突然、今に始まったわけではなく、ずっと昔から深いつながりがあったことはご存知でしょうか。
今回は猫と仏教、お寺との意外な関係や、おすすめの猫寺を紹介します。
猫は経典を守る大事な存在だった
猫は昔、仏教の経典を守るという大事な仕事を任されていました。
現代の私たちが日常的に接する猫はイエネコという種類です。
西表島に住むイリオモテヤマネコのようなヤマネコとは違う種類の猫で、もともとはアフリカに住んでいたリビアヤマネコを先祖としています。
諸説あるものの、イエネコは唐の時代までにはシルクロードを通って中国へやってきたとされています。日本には奈良時代、遣唐使の船に乗り、中国からやってきたと伝えられてきました。遣唐使が持ち帰る大事な経典がネズミの害を受けないよう、ネズミ捕りとしての役割を与えられていたそうです。
現代では研究が進み、仏教伝来以前の弥生時代から日本にイエネコがいたのではないかと見られていますが、仏教において、猫が経典を守る大事な存在だったことに変わりはありません。
江戸時代には、日本昔話にも登場した「猫の恩返し」のように猫が自分を大事にしてくれた僧侶に恩返しをする民話が各地で登場し、僧侶たちにとって猫が身近な存在だったことがうかがえます。
招き猫もお寺から生まれた?
商売繁盛や招福を願う縁起物としておなじみの招き猫。その発祥は諸説ありますが、お寺の猫がモデルになったとも言われています。
東京都世田谷区にある豪徳寺(ごうとくじ)は、招き猫のお寺として有名です。
江戸時代初期、当時の豪徳寺は小さなお寺で、和尚と1匹の猫が静かに暮らしていました。和尚は猫を大切に世話し、猫に「もし恩を感じているなら、このお寺に福を運んでくれないか」と頼みます。
それからしばらく経ったある日。彦根藩主である井伊直孝(いいなおたか)の一行が鷹狩りの帰りに豪徳寺の前を通りがかると、猫が手招きしていました。そこで一行はお寺に立ち寄り、休憩することにします。
お寺で休んでいると外は雷雨となり、猫のおかげで雷雨に遭わなくて済んだと井伊直孝は喜びました。
そして猫が結んだ縁で豪徳寺は江戸での井伊家の菩提寺となり、井伊家の支援を受けてお寺を改修し、今では広い敷地を持つお寺となっています。
この話から豪徳寺は招き猫発祥のお寺として有名になり、滋賀県彦根市のキャラクター、ひこにゃんもこの逸話に出てくる猫をモデルにして誕生したと言われています。
仏教において猫は悪者?さまざまな言い伝え
経典を守ったりお寺に福をもたらしたりする一方で、仏教において猫がよくない存在として扱われている逸話も存在します。
有名な話として、涅槃図の逸話があります。
お釈迦様が亡くなるときの様子を描いた涅槃図(ねはんず)では、さまざまな動物がお釈迦様の死を悲しんでいますが、猫の姿は描かれていないことがほとんどです。
一説には、お釈迦様が亡くなる際の猫の行動により、涅槃図には描かないことになったと言われています。
お釈迦様の母である摩耶夫人(まやぶにん)は、お釈迦様の死が迫っていることを知ると、息子を助けるために天からやってきて薬を渡そうとしました。しかし薬の袋を投げても、沙羅双樹の枝に引っかかってしまいお釈迦様に届きません。
そこでネズミが薬を取ろうとしましたが、猫が本能的にネズミを追いかけてしまったことで薬を取ることができず、その間にお釈迦様が亡くなってしまったと言われています。
涅槃図の逸話以外にも、猫は仏教を信じる心がない、猫は魔物で死者を操ってしまうため死者に猫を近づけてはいけないなど、猫を悪い存在とする言い伝えが数多く存在します。しかし現代ではこうした話はあくまで俗説という見方もあり、古い文書などから猫好きな僧侶は昔からいたことも推測されています。
実は東福寺のように、数は少ないながらも猫が描かれた涅槃図は存在します。東福寺では猫が「魔除けの猫」として信仰の対象になっており、この珍しい涅槃図を一目見ようと、涅槃図が公開される涅槃会の時期にはたくさんの人が訪れます。
こうしたことからも、仏教において猫が完全に嫌われていたわけではなかったことがうかがえます。
涅槃図についてはこちらで詳しく解説しています。
◆涅槃会(ねはんえ)とは?涅槃図の解説やお寺でやることも紹介
一度は行きたい有名な猫寺
猫寺は各地に存在しますが、ここでは特に有名な猫寺を3カ所紹介します。
豪徳寺(東京都世田谷区)
「招き猫もお寺から生まれた?」で解説した、招き猫のお寺です。
豪徳寺ではお寺に福をもたらしてくれた猫を招福猫児(まねきねこ)と呼び、招福殿に祀るようになりました。
一般的に招き猫は小判を持っている姿をしていますが、豪徳寺の招福猫児は小判を持たずに右手だけを上げています。これは人を招き、縁をもたらす姿だと言われています。
奉納所には、願いがかなった参拝者から奉納された招き猫が数多く置かれています。1万体に及ぶと言われる大小さまざまな招き猫は、猫好きにとっては見逃せないスポット。
まれに近所に住む本物の猫がお寺に遊びに来ている様子も見られるようです。
また境内には、招き猫誕生のきっかけとなった井伊直孝のお墓もあります。
御誕生寺(福井県越前市)
御誕生寺(ごたんじょうじ)は、数十匹の猫が暮らす猫寺として書籍も発行され話題のお寺です。仏教の歴史の中では比較的新しいお寺で、1948年(昭和23年)にできました。
かつて住職が捨てられた子猫を保護したことをきっかけに、多くの保護猫たちの世話をし、譲渡会を開いて飼い主を探すことで、何百匹もの猫と人の縁をつないできました。
普段猫たちはお寺の中で自由に過ごしていますが、1日2回、午前と午後には猫のごはんタイムがあり、猫たちが一斉に食事をしている様子を見学できます。猫のごはんタイムの時間は御誕生寺のSNSなどで確認してみましょう。
境内には、御誕生寺が初だという猫が一緒に彫られた大仏があり、こちらも名物となっています。
称念寺(京都府上京区)
称念寺(しょうねんじ)は、猫の恩返しの言い伝えで有名なお寺です。
江戸時代初期、称念寺は松平信吉(まつだいらのぶよし)の帰依と支援によって建てられましたが、信吉が亡くなったあとは松平家との縁が薄くなり、お寺での生活は苦しくなっていきます。3代目の住職は、食べ物を喜捨(一般の人からの施し)に頼るほど苦しい生活をしていましたが、飼い猫のことは大事にしており、自分の食べる分を減らしてでも猫と一緒に暮らすことを選んでいました。
そんなある夜、住職が喜捨を受け取り帰ってくると、美しい姫がお寺の中で舞っているのが見えて驚きます。住職はこの姫が自分の飼い猫であることに気がつき、「自分は苦労して食べ物を集めているのに、こんなときに踊っているとは」と怒って猫を追い出してしまいます。
数日後、住職の夢の中に追い出した猫が現れ「明日、このお寺にやってくる武士を大切にもてなせばお寺は再興できる」と言いました。翌日、猫の言う通り松平家の武士がお寺にやってきたことで、松平家との縁が再びつながり、お寺は昔以上に栄えるようになったそうです。
その後住職が猫を偲んで植えた松の木、通称「猫松」が今も境内に残っています。
現在は動物供養のお寺としても知られ、春と秋に動物合同供養祭が行われています。猫の絵が入った動物の健康祈願のお守りもおすすめです。
猫寺で命とご縁の大切さを感じてみては
猫はもともと仏教の経典を守る役目を担っており、縁を招くなど不思議な伝承も存在しました。
現代でも各地の猫寺には多くの参拝客が訪れ、人、猫、お寺とさまざまな存在の縁がつながれています。猫寺を訪れることで、あなたも誰かと縁がつながることのありがたさを感じられるでしょう。
また御誕生寺のように保護猫がいるお寺では、人も猫も、すべての命が尊いのだと改めて意識できるはずです。
猫寺に興味が湧いたら、ぜひ近くの猫寺を探して行ってみましょう。きっとよい縁に恵まれますよ。 お寺と言えば、梅雨時に話題となるアジサイ寺を思い出す人も多いでしょう。実はアジサイもまた、昔からお寺との深い関わりがありました。以下の記事で詳しく解説しています。
◆お寺に紫陽花、アジサイが多いのはなぜ?おすすめのアジサイ寺も紹介
仏教とヨガにも歴史的なつながりがあり、現代ではヨガ教室を開いているお寺もたくさんあります。猫寺とあわせて、ヨガ教室をチェックしてみるのもおすすめです。
また、お墓きわめびとの会では、石材を扱ってきた経験を生かし、石でできた縁起物の雑貨を各種扱っています。 石でできた招き猫もおすすめです。そのほか、猫をモチーフにした雑貨も随時入荷予定ですので、チェックしてみてください。