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涅槃会(ねはんえ)とは?涅槃図の解説やお寺でやることも紹介

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涅槃会(ねはんえ)とは?涅槃図の解説やお寺でやることも紹介

梅の花が咲く頃、2月15日に行われる涅槃会(ねはんえ)をご存知ですか。
涅槃会は、お釈迦様の命日に行われる法要です。他に、特別な絵の公開やお供え菓子の授与も行われます。
今回は、この涅槃会について紹介します。

涅槃会とは

涅槃会(ねはんえ)は、お釈迦様が入滅した(亡くなった)日に営む法要です。
涅槃会は仏教において特に重要な日です。お釈迦様の誕生日である灌仏会(かんぶつえ、4月8日)、お釈迦様が悟りを開いた日である成道会(じょうどうえ、12月8日)と合わせて三大法会と呼ばれています。

涅槃という言葉の意味

「涅槃」はもともと、「煩悩の火が吹き消された状態」という意味の言葉でした。ここから派生して、涅槃は2つの意味を持つようになります。
1つ目は、「煩悩が消えた悟りの状態」という意味。そして2つ目は、「肉体の死により真の悟りに至った状態」という意味です。
お釈迦様は、35歳のときに悟りを開きました。しかしこの世に生きている以上、食事は必要です。これでは、本当にすべての煩悩が消えたとは言えません。
80歳で入滅した(亡くなった)あとは肉体がなくなり、食欲も消えます。すべての煩悩が消え、お釈迦様は真の悟りに至りました。
涅槃会における「涅槃」は、「お釈迦様が入滅により真の悟りに至った」という意味を持っています。

追悼と報恩のための法要

涅槃会の法要には、追悼と報恩という2つの目的があります。
お釈迦様を偲ぶ「追悼」だけでなく、なぜ「報恩」という目的もあるのでしょうか。
それは、お釈迦様の教えがあるおかげで、現代の私たちも幸せに生きるヒントを得られるからです。
お釈迦様は35歳で悟りを開いてから、45年間、さまざまな教えを説きました。お釈迦様が亡くなったあとも、弟子たちによって、教えは現代まで伝えられています。
もしお釈迦様の教えがなかったら、現代の私たちは尽きない欲にずっと悩まされていたかもしれません。おいしいものを山ほど食べても満足できない、もっとたくさんお金が欲しいなど、欲には限りがありません。
お釈迦様の教えがあるおかげで、私たちは煩悩に向き合い、目先の欲だけでは手に入らない幸せについて考えられます。
涅槃会の法要は、この恩に報いるという意味も持っています。

涅槃会の時期

お釈迦様が亡くなった日は、旧暦2月15日とされています。
しかし涅槃会の法要を行う日はお寺によって異なります。旧暦2月15日に近い3月15日前後、春のお彼岸の頃、新暦の2月15日などさまざまです。現代では、新暦の2月15日の方が一般的となっています。

お釈迦様の最後の説法とは

お釈迦様は80歳で亡くなるまでの間、さまざまな説法を行ってきました。
亡くなる直前にも、弟子たちに下記のように説いています。

  • 師(お釈迦様)が滅んだからといって、今まで説いてきたことが無くなるわけではない。これからも自分自身をよりどころとして、他を頼りにせずに、師の教えを大切に守りなさい。
  • この世に生まれたものは、いつか必ず滅びる。師(お釈迦様)も例外ではない。最後まで精進しなさい。

お釈迦様は自身の死が近づいても、あわてませんでした。自らの生と死を見せることで、最後の教えを弟子に伝えています。
この最後の説法を知ると、涅槃会はお釈迦様を悼むだけでなく、命のつながりについて考える日でもあるのだと感じませんか。

涅槃図とは

涅槃図(ねはんず)とは、お釈迦様の最期の様子を描いた絵です。お釈迦様だけでなく、弟子たちや動物、植物なども描かれています。

涅槃図には何が描かれている?

涅槃図は、昔からさまざまな作者によって描かれてきました。作者によって多少の違いがあるものの、基本的な構成は同じです。

横たわるお釈迦様

まず中心には、穏やかな表情で横たわるお釈迦様の姿があります。北に頭を向け、右脇を下にし、西の方向を向いています。
亡くなった人の頭を北に向けて寝かせる風習は、皆さんご存知でしょう。実は、北枕の風習はこのお釈迦様の様子が元となっているのです。

お釈迦様の弟子たち

周囲では、お釈迦様の弟子たちが悲しみに暮れています。悲しみの余り気を失う人、気を失った人を介抱している人など、それぞれの様子が細かく描かれています。

さまざまな動物

次に動物たちです。牛、象、猿などたくさんの動物たちも悲しんでいます。描かれている動物が、涅槃図によって異なる点に注目してみましょう。一般的に、猫は描かれていないパターンが多いとされています。しかし、猫が描かれている涅槃図も複数存在しています。猫好きの方は、探してみるとおもしろいのではないでしょうか。

沙羅双樹の木

周りには沙羅双樹(さらそうじゅ)という木がありますが、数本あるうちの半分は枯れています。植物もお釈迦様の死を悼んでいるという意味です。
一方、花が咲いている沙羅双樹もあります。こちらは「お釈迦様の教えは色あせない」という意味を表しています。

満月と摩耶夫人

今度は空を見てみましょう。空には満月があり、お釈迦様が満月の日に亡くなったことがわかります。
さらに、月の近くには雲に乗った人々が描かれています。お釈迦様の母である摩耶夫人(まやぶにん)や、付き従う天女たちです。お釈迦様の入滅を知り、薬を持って駆けつける様子だと言われています。

日本各地の特色ある涅槃図

今も全国のお寺には、それぞれ違った特徴を持つ涅槃図があります。ここでは、特に珍しい涅槃図をいくつか紹介します。

和歌山県(高野山)にある金剛峯寺(こんごうぶじ)の涅槃図は、平安時代に描かれたものです。日本で現存する最古の涅槃図と言われており、国宝にも指定されています。

京都府にある泉涌寺(せんにゅうじ)の涅槃図は、日本最大級の大きさです。江戸時代に描かれたもので、長さ16メートル、幅8メートルもあります。16メートルは、5階建てビルに近い高さです。あまりにも大きいため、お堂の天井や床まで覆うような形で公開されます。お堂で目にすると、その大きさと美しさに圧倒されるのではないでしょうか。

同じく京都府の天龍寺(てんりゅうじ)には、刺繍で描かれた涅槃図があります。2023年に修復が終わったばかりのため、金糸など20色以上の糸で表現された美しい涅槃図を見ることが可能です。

涅槃会では何をするの?

涅槃会は、全国各地のお寺で行われます。具体的にどんなことをするのかを紹介します。

法要

お花やお菓子を供え、法要を営みます。一般の人も参加できるよう、ホームページなどで受付時間を公開しているお寺もあります。気になる場合は調べてみるとよいでしょう。
法要ではお釈迦様が最期に説いた「仏遺教経(ぶつゆいきょうぎょう)」の読経が行われ、涅槃図も掲げられます。

団子まき

法要のあと、五色の涅槃団子をまくお寺もあります。
涅槃団子は、お釈迦様の舎利(遺骨)に例えたお菓子です。食べると無病息災でいられると言われています。

お供え菓子の授与

お供え菓子をいただけるお寺もあります。授与方法はお寺によって異なるため、気になるお寺があれば情報を確認しましょう。
お供え菓子は地域によって異なり、「花供曽(はなくそ)」と呼ばれるあられや、米粉を蒸した団子「やしょうま」などいろいろな種類があります。お住まいの地域のお菓子を調べてみると、意外な発見があるかもしれません。

涅槃図の公開

涅槃図の特別公開を行うお寺もあります。
公開時期が限られていることが多いため、事前に情報を集めておくと安心です。

涅槃会を通して命のつながりについて考えてみませんか

今回は、涅槃会について紹介しました。
涅槃会はお釈迦様の追悼・報恩のための法要ですが、命のつながりについて考えるきっかけにもなります。
この世に生まれた命は、いつか終わりを迎えます。私たちのご先祖様もそうでした。しかし亡くなったあとも、ご先祖様が生きていた事実や、生前に成し遂げたことは無くなりません。
ご先祖様から受け継いだ命について考え、改めて感謝の気持ちを込めてお墓参りに行ってみませんか。

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