お役立ちコラム お墓の色々
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- 供養をきわめる -
お墓に家紋は必要なの?わからない場合はどうする?
お墓参りをしていると、お墓によって菱形や銀杏形などそれぞれ異なる家紋があったり、家紋が彫られているお墓とそうでないお墓があることに気づかれると思います。家紋といえば、結婚式の羽織袴など、一家の大切な行事で使われるイメージがありますよね。さて、お墓に家紋は必要なのでしょうか?本記事ではお墓に家紋を彫る意味、家紋の由来やわからない時の対処法をご紹介します。
お墓に家紋を入れる意味
家紋は、家系、血統、地位を表すために使われた、一族の象徴となる証です。実に5000種類以上あると言われています。本来、お墓に家紋を彫ることには、家族が繁栄し、無事に代々継承が続くようにとの願いが込められています。竿石の上部や、水鉢に彫られている場合が多いですが、香炉、花立といった付属品に彫ることもあります。花立などの対になったものに家紋を彫刻する場合は、家紋も両方に入れます。
お墓の家紋は宗教上の理由で彫っているわけではありませんので、無ければ故人に失礼、供養に差し障るということはありません。施主の方が自由に決めてよいものです。
家紋の由来
実はお墓に家紋を彫る習慣はそれほど古くありません。
家紋の始まりは平安時代にまで遡ると言われています。始めは装飾や目印のために描かれていた文様が、しだいに貴族の間で権威を誇るものに変わっていったと考えられています。当時の貴族は、家紋を入れた牛車で街を練り歩いていたそうです。
時の権力者が貴族から武家に移ると、家紋はさらに大きな役割を持つようになりました。武家の社会では、戦の際に味方を鼓舞するための幟旗(のぼりばた)に入れたり、敵との区別をつけるため、武具に入れるという実利面で家紋が使われ始めます。こうして、武家社会で定着した家紋ですが、お墓に彫るようになったのは徳川家康による天下統一後、江戸時代のことです。
もともとは武家のものなので、庶民が使える家紋には制限があったのですが、農民や商人などの間でも家紋が流行しました。戦のない平和な時代だったので、旗や武具に使われるのではなく、一族の象徴という面でお墓に彫られたと考えられています。明治以降、名字を持つことが一般的になると、各家の一体感がさらに高まり、家紋を持つ家はさらに増えていきました。
このように家紋は一種のトレンドのような形で、世間に広まっていったものです。ご先祖様が一生懸命選んでくれたと思うと、一層愛着も湧いてきます。
家紋がわからない場合
家紋のあるお墓を建てたいと思っても、残念ながら自分の家の家紋がわからない方も現在は多いでしょう。その場合には以下のような方法で調べることができます。
親族に聞く
親族の中には、家紋を知っている人がいるかもしれません。祖父祖母だけでなく、その兄弟姉妹など年配の方にお伺いしてみると、ご存知の方がいらっしゃるかもしれません。
お墓を調べる
いつもお墓参りしているお墓に家紋が無いかを確認するのはもちろんですが、お参りしたことのない遠縁のお墓がないか調べてみましょう。家紋は本家の形を引き継いでいるのが一般的ですが、分家の際に多少変化させることもあります。家紋を通じて自分のルーツを探ってみるのも面白いかもしれません。
アルバムで探す
祖父の葬儀や結婚式の写真を探せば、紋付の着物で写っているかもしれません。または、すでに墓じまいしたお墓の写真に家紋が写っているかもしれません。
五月人形や雛人形を調べる
これらの人形を始め、代々受け継ぐ物には、家紋が入っている可能性があります。
家紋が見つからない場合
さまざまな手を尽くしても家紋が見つからないこともあります。このような場合は、家系図をもとに、ご先祖の出生地を辿って探すこともできます。専門業者にお願いすることもできますが、最近は自分で探す方も増えています。ご自身のルーツを辿る素敵な旅になるでしょう。
また、家紋はあなたの代から新しく作ることもできます。家紋は法律で管理されているものではないので、作るのも変えるのも実は自由です。ただし、徳川家の「三つ葉葵」や天皇家の「十六葉八重表菊」など、有名な家紋にすることは避けましょう。
お墓の家紋の色選び
お墓に彫る家紋には黒・白・金の色が付けられます。また、色を付けずに彫刻だけにした家紋も、石の風合いが活かされたよいものです。はっきりと目立たせたいなら黒か白、上品で豪華な雰囲気にしたいなら金、落ち着いた雰囲気にしたいなら色を付けない等、建てたいお墓のイメージによって家紋の色を選ぶと良いでしょう。
年月が経つと家紋の色も落ちてきます。ご自分で塗り直すこともできますが、慣れていないと難しい緻密な作業になります。心配な方は石材店へお願いしましょう。
お墓に家紋を彫るかは自由
お墓と家紋の関係は、「自由である」と言えるでしょう。ご供養の面で欠かせないものではありませんし、役割が変化してきた歴史を考えると「彫らない」「新しいものを作る」という選択肢も尊重されるべきだと思われます。いずれにしろ、ご先祖様が大切にしていたものかもしれませんので、実際に彫るかどうかは別としてもぜひ一度はご検討ください。
ご自身のルーツを振り返り、家族のつながりを深める機会にもなることでしょう。