お役立ちコラム お墓の色々

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【南極物語】タロ・ジロのお墓はどこにある?

墓地・墓石コラム

人と深く関わってきた動物たちの中には、その生涯を終えたあとも、多くの人の記憶に残り、大切に供養されている存在がいます。

1950年代、日本の南極観測に参加した二頭の樺太犬、タロとジロ。現在も東京・西麻布の国立極地研究所にはその像が立ち、南極観測の歴史を静かに伝えています。また、二頭の生まれ故郷である稚内市にも像が設けられ、多くの人が足を運んでいます。

取り残された南極の地で約11か月生き延びたタロとジロ。その生存の知らせは日本中に大きな感動を広げました。さらに1983年には高倉健主演で映画南極物語が公開され、その物語は世代を超えて語り継がれています。

「極寒の南極に取り残されながらも生き抜いた犬」として知られるタロとジロですが、その背景にあった観測隊員たちとの日常や、過酷な自然環境の中での営みにまで思いを巡らせる機会は、意外と少ないのではないでしょうか。

今回は、タロとジロがなぜこれほどまでに愛されたのか、そしてそのお墓がどこにあるのかをご紹介します。

樺太犬タロ・ジロ・サブロ誕生

1956年(昭和31年)1月、北海道・稚内市で、樺太犬のクマとクロの間に3頭の兄弟犬、タロ、ジロ、サブロが生まれました。名付け親は、南極観測隊用の樺太犬を集めていた北海道大学教授の犬飼哲夫(いぬかい てつお)です。ちなみに南極探検隊・白瀬矗(しらせ のぶ)が連れていた犬ぞり用の先導犬として活躍した樺太犬「タロ」と「ジロ」にちなんで付けられたとされています。

樺太犬とは、樺太(からふと:ロシアのサハリン)および千島列島で育成された犬種で、体重はおよそ22~45キログラムに達する中型から大型の犬です。北方の人々のもとで古くからそり犬や猟犬として用いられてきました。耐寒性に優れ、優れた方位感覚を備えていることに加え、従順で融和性があり、忍耐強く勇敢な性質を持つとされています。

タロとジロが生まれたこの年、第一次南極観測隊でも樺太犬による犬ぞりの使用が決定しました。当時の北海道には約1,000頭の樺太犬がいましたが、犬ぞりに適した資質を備えた犬は40〜50頭ほどに限られていたといいます。その中からタロ・ジロ・サブロを含む23頭が選ばれ、稚内に集められました。

稚内に集められた23頭は南極に赴くにあたり、樺太出身の後藤直太郎のもとで訓練を受けます。しかしサブロは、訓練中病気により命を落としてしまったため、タロとジロを含む22頭が南極観測隊に同行することとなりました。

南極に取り残されたタロとジロ

1956年(昭和31年)11月、第1次南極観測隊53名は22頭の樺太犬とともに、南極観測船「宗谷」で東京湾を出発しました。樺太犬は暑さに弱いため、船内には赤道通過に備えた冷房室が特別に設けられていたそうです。昭和基地到着後、航行中に死亡した1頭と具合が悪くすぐに帰されることとなった2頭を除く19頭が越冬隊に参加し、厳しい環境の中で3頭が死亡するも、8頭の新しい命も生まれ、犬ぞり牽引などを含む様々な任務を担いながら観測活動を支えました。

1957年12月、第2次越冬隊を乗せた宗谷が再び南極へ向かいます。しかし、例年にない悪天候と密集した氷に阻まれ、昭和基地への接近は困難を極めました。1958年2月、宗谷はアメリカ海軍の砕氷艦の支援を受けながら再進入を試みますが、天候は回復せず、状況は悪化していきます。

第1次越冬隊11名はヘリコプターで収容され収容され、南極生まれの子犬8頭と母犬シロ子のみ救出されるものの、基地に残された15頭の犬をどうするかが大きな課題となりました。現地に残ろうとする隊員の申し出もありましたが、最終的には犬だけを残し、外洋へ退避する決定が下されます。野犬化して南極の環境を破壊する恐れがあるため、やむなく15頭の犬は基地付近に鎖でつながれたまま残されることになりました。

その後も再突入の可能性を探りましたが、暴風雪や氷況の悪化により断念。2月24日、第二次越冬計画そのものが中止となり、犬たちの救出も見送られました。残された犬たちの生存は絶望視され、この判断に対して観測隊には厳しい批判が寄せられました。

生き延びたタロとジロ

1959年(昭和34年)1月14日、第3次越冬隊のヘリコプターが昭和基地上空を飛行した際、基地付近に2頭の犬がいることが確認されました。着陸後、犬たちは操縦士に近づいてきたものの、すぐには個体の判別ができませんでした。そこで、第1次越冬隊で犬係を務めた北村泰一(きたむら たいいち)が急きょ基地へ向かいます。

警戒する犬たちの様子を見ながら、北村は1頭の前足の先が白いことに気づき、「ジロ」と呼びかけました。すると犬は反応し、しっぽを振ったといいます。もう1頭も「タロ」という呼びかけに応じたことから、兄弟の生存が確認されました。

一方で、基地には7頭が首輪につながれたまま息絶えており、残る6頭の行方は分かりませんでした。残されていた犬用食料には手がつけられていませんでした。そのため放置されていた人間用食料や残された貯蔵庫の食料、あるいはクジラの死骸を食べて飢えをしのいでいたのではないかと考えられています。

この実話をもとに制作されたのが、1983年公開の映画「南極物語」です。主演の高倉健が演じた隊員の苦悩と決断、そして極限状態のなかで命をつないだ犬たちの姿は、多くの観客の胸を打ちました。さらに2006年にはハリウッドでリメイクされ、物語は世代を超えて語り継がれています。

人間の判断によって置き去りにされた命。しかしその命は、想像を絶する環境の中で生き抜いていました。タロとジロの物語は、奇跡の生還譚であると同時に、人と犬との絆をあらためて問いかける物語でもあるのです。

タロは第4次越冬隊とともに帰国し、1961年(昭和36年)5月4日、約4年半ぶりに日本の地を踏みました。その後は札幌市の 北海道大学植物園 で飼育され、犬飼哲夫の弟子である阿部永らのもとで静かに余生を過ごします。

1970年(昭和45年)8月11日、タロは老衰のため14歳7か月で亡くなります。

一方、ジロは第4次越冬中の1960年(昭和35年)7月9日、昭和基地で5歳という若さで病死しました。

2頭はそれぞれ異なる地で生涯を終えますが、その歩みは南極観測の歴史の一頁として記録され、今も語り継がれています。

タロとジロのお墓はどこにある?

タロは現在、余生を過ごした札幌の北海道大学植物園内に埋葬されています。1970年に老衰で亡くなった後、そのまま長年暮らした植物園の敷地内に葬られました。

また、タロの剥製も同じく北海道大学植物園内で公開されています。

【北海道大学植物園(タロ)】北海道札幌市中央区 北3条西8丁目

一方ジロですが、1962年6月9日、深大寺動物霊園において、当時の文部省(現・文部科学省)を中心に、南極観測で活躍したカラフト犬の慰霊祭と納骨が執り行われました。これは第1次観測隊で活動した22頭の功績をたたえるための供養でした。

この際、文部省が保管していたカラフト犬ジロの遺骨の一部が、3か月前に建立された万霊塔に納められています。

万霊塔に納められて以来、現在に至るまで大切に守られ、供養が続けられています。

また、ジロも剥製となり、東京・上野の国立科学博物館にて公開されています。

【深大寺動物霊園(ジロのお墓)】東京都調布市深大寺元町5丁目11−3

【国立科学博物館(ジロの剥製)】東京都台東区上野公園7−20

なお、15頭の樺太犬を供養する慰霊像が北海道に建立されています。この碑は、稚内公園がかつて犬ぞりの訓練地であったことを記念し、樺太犬が果たした多大な功績をたたえるために建立されたものです。南極観測樺太犬記念碑の銅像のモデルはジロであるとされています。

【南極観測樺太犬記念碑・樺太犬供養塔】北海道稚内市ヤムワッカナイ(稚内市恵北)

まとめ

極寒の南極で起きた出来事は、単なる美談ではありません。それは、人間の判断、自然の脅威、そして命の重みが交差した、まぎれもない実話です。タロとジロの話は、映画「南極物語」によって広く知られるようになりました。しかし、その原点にあるのは日々の訓練や観測活動の積み重ね、そして極限の地で人と犬が共に生きた時間です。タロとジロが残した足跡は、南極観測の歴史の一ページであると同時に、人と動物の関わりを問い直すきっかけでもあるのではないでしょうか。

タロとジロの墓前に立てば、極寒の地で必死に生きた二頭の姿が思い起こされます。言葉を持たぬ命が示した粘り強さと生命力は、今もなお、私たちに問いを投げかけているような気持ちになるかもしれません。

お墓は、ただ故人を偲ぶためだけの場所ではありません。そこには、家族との絆や幾重もの出会い、その人が歩んできた年月や胸に抱き続けた想いが静かに息づいています。墓前に立つということは、そうした人生の物語にそっと心を重ね、傍らにいる誰かと語らいながら、記憶を受け取り、また次へとつないでいく時間でもあるのではないでしょうか。

愛するペットの墓前に立てば、かけがえのない家族であったその存在をあらためて実感し、「供養とは何のためにあるのか」を見つめ直す時間が生まれます。

ともに過ごした日々や何気ない仕草、無条件に向けてくれた愛情。そうした記憶が胸によみがえり、手を合わせるひとときは、悲しみだけでなく感謝の気持ちを確かめる場にもなります。

こうしたペットへの供養の想いは、命とどう向き合い、どのように見送り、どのように記憶をつないでいくのかを考える機会となり、家族の在り方そのものを見つめ直すきっかけにもなるのではないでしょうか。

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