お役立ちコラム お墓の色々

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- 供養をきわめる -

お墓参りのお供え物、宗教や宗派で違う? 正しい供え方と墓石を守るマナー

墓地・墓石コラム

お墓参りに欠かせないお供え物。今は亡き故人やご先祖さまを偲び、感謝や敬意を伝えるためのものであり、果物やお菓子を思い浮かべる方も多いでしょう。一般的には、故人が好きだったものをお供えすると良いとされていますが、宗教によって基本とされるお供え物には違いがあり、また、お供えの仕方にも、お墓だからこそのマナーや気をつけるべきポイントがあります。

今回は宗教ごとのお供え物の違いや避けたほうが良いものを紹介し、さらに、周囲への配慮や墓石の保護の観点から見た、お供え方法のポイントも解説します。せっかくのお供えで、周囲に迷惑をかけたり墓石を傷めたりすることのないよう、正しい知識を持ち、心を込めたお参りをしましょう。

宗教別、基本のお供え物

お墓へのお供え物は、宗教的に意味のあるものや季節の果物、お菓子などを中心に、故人が好きだった食べ物や飲み物をお供えするのが一般的です。お盆やお彼岸には、お団子、ぼた餅やおはぎ、蓮や菊の花をかたどった落雁(らくがん)なども、お供え物の定番となっています。お供えした後に家族で分けたり、一緒に食べたりすることも考えて、お墓参りの後でも食べられるものや日持ちのするものを選ぶと良いでしょう。

宗教によって、基本のお供えに違いがあるので、それぞれご紹介します。

仏教のお供え物の基本は「五供」

仏教では、お供え物は「五供(ごく・ごくう)」と呼ばれる「香」、「花」、「灯燭」「浄水」「飲食(おんじき)」の5種類が基本とされています。このうち「飲食」が、いわゆる「お供え物」にあたり、故人が好きだったものや、季節の果物、お菓子、お茶、ジュースなどをお供えします。

お酒については、慎むべきとする考え方もありますが、日本では古くから、宗教に関わらず供養の場でお酒が振る舞われ、故人を偲ぶ風習が根付いてきました。そのため、故人が好んでいた場合には問題ないとされることが多いようです。ただし、寺院や霊園によってはルールが異なるため、事前に確認しておきましょう。

神道のお供え物の基本は「榊」「神饌」

神道では、お供え物を「神饌(しんせん)」と呼び、神様に召し上がっていただくものという意味があります。神の恵みに感謝を捧げる意味もあり、神前には酒・塩・水・米のほか、季節の野菜や果物、海の幸、山の幸などがお供えされます。

一方で、お墓参りでは、榊(さかき)をお供えし、ローソクを灯した後に、神饌の中から酒・塩・水・米をお供えするのが一般的です。また、故人が好きだったお菓子や果物もよいとされています。

神道には、祭祀の後に、神職をはじめとした参列者一同が集い、お供えしたお神酒(おみき)や神饌をいただく、「直会(なおらい)」という行事があります。この行事の元になっているのが、日本に古くからある、神様と共に食を分かち合うことで感謝を捧げ、神霊とのつながりを深めるという考え方や儀式であり、神道か仏教かに関わらず行われている、お墓参りでお供えした物を「お下がり」として参拝者で分け合い、いただく風習にもつながっています。

神道のお墓参りについてはこちらで詳しく解説しています。

神道のお墓参りとそのマナーを解説します

キリスト教では白い花をお供えする

キリスト教では「供養」という概念がなく、教会で祈ることが故人を偲ぶことにつながると考えられています。そのため、お墓参りでは、白の生花をお供えするのが一般的で、線香をあげたり食べ物をお供えしたりする習慣はありません。

なお、白い花には「純粋」「無垢」「清潔」「神聖さ」といった意味があり、故人が清らかに安らかに眠ることを願って手向けられます。

避けた方が良いお供え物

お墓参りの際は、上記の内容を基本にお供えをしますが、宗教による考え方や衛生的な観点から、お供え物としてふさわしくないとされている物もありますので、紹介します。

五辛(ごしん)・匂いが強いもの

五辛(ごしん)とは、強い匂いや刺激のある5つの野菜のことで、ニラ、ニンニク、ネギ、ラッキョウ、ハジカミ(ショウガやサンショウの古い呼び名)を指します。仏教では、これらは煩悩を刺激し修行の妨げになるとして、食べることが禁じられていました。お供えにもふさわしくないと考えられているため、お墓参りの際は避けるのが望ましいでしょう。

また、仏教に限らず、匂いの強いものは他の参拝者の迷惑になることもあるため、控えるほうがよいでしょう。

肉や魚・傷みやすいもの

肉や魚は、仏教の教えにおいて殺生を連想させるため、お供え物としてはふさわしくないとされています。傷みやすいという点でも、悪臭や害虫の原因となるため、避けたほうが良いでしょう。

神道においても、仏教の「不殺生」の考え方が浸透しており、牛や豚などの四つ足動物の肉が入った食べ物は不適切とされています。神事では、神饌として魚介類をお供えすることもありますが、お墓参りでは、他の参拝者にも配慮する意味でも控えたほうが良いでしょう。

NGなお供え方法〜墓石を守る正しいお供えのマナー〜

お供え方法、お供え物の置き方にも注意が必要です。お供えの仕方によっては、マナー違反というだけでなく、大切な墓石を傷めてしまうこともありますので、正しい方法を確認しておきましょう。

直置きはしない

お供え物は、お墓の中央にある供物台の上に置くのが一般的です。その際、直接台の上にお供えせず、半紙や懐紙(かいし)などの紙を敷くようにしましょう。

「神様やご先祖様に捧げる」という意味を持つお供え物を、直置きするのはマナーとしてふさわしくありません。また、墓石にシミがつく原因にもなるため注意が必要です。 もし紙を忘れてしまった場合は、ハンカチなどを敷いて代用するとよいでしょう。

お酒やジュースなどの飲み物をかけない

ドラマや漫画などで、お酒が好きだった故人のお墓にお酒をかけるシーンが描かれることがあります。しかし、実際にはお墓にお酒やジュースなどの飲み物をかけることは避けましょう。

石材に飲み物をかけると、錆や変色の原因になりますし、お酒やジュースには糖分が含まれており、そのままにしておくと虫を寄せ付ける恐れもあります。また、カビの発生につながることもあるため注意が必要です。お墓の手前にあるくぼみ「水受け」にも、水以外のもの、例えばお酒やお茶などを注ぐことは控えましょう。

お水以外の飲み物をお供えしたい場合は、お猪口や湯呑みを使うようにしましょう。

飲食物は置いたままにせず、持ち帰る

昔は里山にお墓があり、動物や飢えた人への施しという意味でも、お供え物をそのままにしていた時代もあったようです。しかし現代は、食べ物を置いておくことで、カラスなどの動物に荒らされたり虫が寄ってきたりして、周りに迷惑をかけてしまう恐れがあるため、お墓参りが終わったらお供え物を持ち帰るのがマナーとなっています。

また、お酒やジュースなどの瓶や缶を置いたままにしておくと、丸い輪状のシミや錆がついてしまいます。特に錆は、墓石に侵食してしまうと除去が大変難しくなるため、気をつけたいところです。

お墓を守る意味でも、お供え物は残さず持ち帰り、仏壇にお供えしたり、「お下がり」として食べたりすると良いでしょう。お供え物をいただくことは、故人やご先祖さまを偲ぶことにつながる、供養の一環とも考えられています。

まとめ

お供え物の文化は、宗教が確立されるより昔からあった、神々や精霊に食べ物を捧げる儀式が起源になっていると考えられています。食事は人と人との絆を深める大切なもの。神仏や故人、ご先祖様に食べ物をお供えすることは、感謝の気持ちを表すとともに、その存在を身近に感じつながりを深める意味合いを持って、受け継がれてきたのかもしれません。

とはいえ、お供えの仕方を誤ると、墓石を傷めたり、周囲に迷惑をかけたりしてしまうこともあります。マナーを守ってお墓参りをすることは、故人を敬う気持ちを形にすると同時に、墓石や周囲の環境を大切にする心を育んでいくことにもつながります。供養と感謝の気持ちがしっかり伝わるお墓参りを心がけていきましょう。

お墓参りのお供え物のマナーや、お供物を置く供物台のお手入れ方法についても解説していますので、合わせてお読みください。