お役立ちコラム お墓の色々

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- 供養をきわめる -

現世沖縄の先祖供養の行事① あの世のお正月「十六日」

供養・埋葬・風習コラム

現世沖縄の先祖供養の行事① あの世のお正月「十六日」

かつて琉球王国として存在し、日本と中国の影響を受けた沖縄。お墓参りも他府県とは違った習慣があります。沖縄ではお彼岸や命日にお墓参りをする習慣はありませんが、親戚一同で墓参りをする行事があります。
盛大に行われるのは旧暦の3月にある「晴明祭(シーミー)」ですが、もう一つ晴明祭と並ぶ行事があります。それは「あの世のお正月、十六日(ジュールクニチー)」です。

十六日(ジュールクニチー)とは

沖縄では生きている人のための正月のほか、死者のための正月があります。それが旧暦の1月16日に行われる「あの世の正月、十六日」です。後生正月(グソーソーグァチ)とも呼ばれています。後生とは「死後の世界」「あの世」を指します。

各家庭の台所に祭られている家の守り神・火の神(ヒヌカン)に十六日をご報告し、ご先祖様の墓前、位牌(トートーメー)にお茶やお酒、ごちそうをそなえます。

お墓参りは家族で行きます。親戚一同が集うので、十六日の墓前は賑やかです。お墓に着いたら、まずはお墓の土地の神様「ヒジャイガミ」にご挨拶。ご先祖様に手を合わせる前に、ヒジャイガミに手を合わせます。その後、ご先祖様に手を合わせた後にお供え物のおさがりをみんなで食べ、団らんを楽しみます。

十六日にやること

同じ沖縄県内でも、地域によってやることは少し違います。
沖縄本島中南部は位牌へのお供えと墓掃除程度のところもありますが、離島(宮古・八重山地方、久米島)では本島よりも盛大に行われます。重箱にごちそうをつめて一族でお墓参りをし、みんなでお墓の前でごちそうを食べます。宮古、八重山では十六日のお墓参りのため、学校や職場が半ドンになるところもあり、ローカルニュースでもその様子が毎年のように取り上げられます。お正月には帰省しなくても、十六日には必ず帰省するという人もいるほど、大切にされている行事です。
帰省できない人は那覇港の遥拝の地・三重城(ミーグスク)で出身地に向かってお供え物を広げてご先祖様へ祈りをささげます。この様子もニュースなどで報じられる季節の風物詩となっています。

本島内では新十六日

また、沖縄本島では新十六日(ミージュールクニチー)といって1年以内に亡くなった人の法事を行う習慣があります。
1年以内に亡くなった人を新霊(ミーサ)といい、必ずお墓参りをして霊を慰め、法事を行います。新十六日は年忌に準じる大切な法事とされており、家族だけでなく親類縁者、知人や友人たちも線香をあげに故人の家を訪れます。
地域によっては、新十六日の翌年とその次の年まで法事を行うところもあります。

沖縄と他府県のお墓参りには違いがあります。他府県のお正月とお墓参りについて書いた記事もあります。
お正月にお墓参りをしてもいい?年末年始のお墓参りの考え方や注意点をご紹介

十六日にお供えするもの

地域や家庭によっても違いはありますが、十六日に墓前にお供えするのは以下のものです。重箱は用意するのが大変なため、最近ではスーパーなどでも販売されています。

・線香
・お酒
・お茶
・お花
・ウチカビ
・重箱

線香は沖縄独特の黒く平べったい線香「ヒラウコー」です。
ウチカビは、正黄色の薄紙に銭形の模様をつけたもの。ご先祖様があの世でお金に困らないようにお供えします。
もちと料理は方形の重箱に詰めます。詰め方や料理にも決まりがあり、もちは丸い白もちで3×3、3×5など奇数で詰めます。
料理はカステラかまぼこや昆布、豚の三枚肉の煮つけ、ごぼうや大根の煮つけなど。これらを四角く切り、きれいに重箱に詰めます。

十六日の由来

十六日の由来にはいろんな説があり、定かではありません。

ひとつは、以下のような話です。
昔、親孝行の息子が1月16日の月夜にごちそうを持って墓へ行き、泣いていると父親が現れ、一緒にごちそうを食べて酒を酌み交わし、楽しいひと時を過ごしました。昨夜のことは夢だったのだろうかと不思議に思った息子が翌日、墓を見に行くと昨夜食べたはずのごちそうは手つかずで残っていたそうです。息子は1月16日にはあの世の人とも通じ合える日だと思い、それからは毎年、ごちそうを持って墓参りするようになりました。それを見た周りの人たちも1月16日に墓参りするようになったそうです。

また、琉球王府時代に1月16日に那覇で行われていた競馬の見物客が、一心不乱に亡夫の墓参りをする女性の姿を見て、翌年から供物を持って墓参りをしてから競馬を見物するようになったという話もあります。

死者の正月は日本各地でも

最近ではあまり見られなくなったようですが、日本各地にも似たような風習はあるそうです。1月16日に年明けに念仏をはじめてとなえる「念仏の口開け」のほか、正月の三が日を避けて1月16日か18日に仏前に雑煮をお供えしたり、墓参りをしたりする地方もあります。

お墓参りはいつするのがいいのか?について書いた記事もあります。
お墓参りはいつ行ってもいいの?適切な時期とは

まとめ

今回は沖縄の祖先供養の行事「十六日」をご紹介しました。
十六日は先祖供養の伝統が根強く残る沖縄では季節の風物詩としてニュースに取り上げられるほど、盛大に行われる行事です。ご先祖にお供えするごちそうを用意して親戚一同でお墓参りをしたり、位牌に手を合わせて故人の思い出などを語らいながら、なごやかにごちそうを食べたりします。
子孫一同が元気で仲良くごちそうを囲む姿はご先祖様にとっては何よりの供養なのかもしれません。

次回は十六日と同じように沖縄で大切にされている祖先供養の行事「晴明祭(シーミー)」をご紹介します。晴明祭は中国から伝わった習慣ですが、お墓参りに親戚一同が集まる恒例行事で沖縄県民にはおなじみの行事です。沖縄の独特なお墓参りの行事「晴明祭」もお楽しみに。