お役立ちコラム お墓の色々

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沖縄の祖先供養の行事② お墓で賑やかに。ご先祖と楽しむ「晴明祭」

供養・埋葬・風習コラム

沖縄の祖先供養の行事②お墓で賑やかに。ご先祖と楽しむ「晴明祭」

かつて琉球王国として存在し、日本や中国、朝鮮、東南アジアの国々と交易して独特の文化を育んだ沖縄。
お墓参りも他府県と違った習慣が存在します。今回は中国から伝わった沖縄の祖先供養の行事「シーミー(晴明祭)」をご紹介します。

シーミー(晴明祭)とは

二十四節気のひとつ「晴明」の頃、新暦の4月頃(旧暦の3月頃)にある沖縄のお墓参りの行事です。御晴明(ウシーミー)と呼ぶ地域もあります。
18世紀の初めに中国から伝わった習慣で、シーミーの習慣があるのは日本では沖縄のみです。現在では5月のゴールデンウィーク頃までの間、週末を中心に家族でお墓参りに行き、墓前には親戚一同が集います。

沖縄特有の大きなお墓の前でレジャーシートを敷き、みんなでごちそうを食べて、賑やかに過ごす姿をニュースなどでご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。その姿は沖縄の季節の風物詩となっています。シーミーの時期はお墓参りに行くために交通量が増え、週末は高速道路の出入口、お墓がある墓地や霊園などの周辺は交通渋滞が起こるほどです。

宮古、八重山地方では死者のための正月「十六日(ジュウルクニチー)」が盛大に行われ、シーミーは行われません。また、本島でも新十六日をした家ではシーミーは行わないことになっています。

他府県のお墓参りの時期について書いた記事もあります。
お墓参りはいつ行ってもいいの?適切な時期とは

2つのシーミー

シーミーは二十四節気「晴明」の期間に行われますが、この期間中に以下で紹介される「カミウシーミー(神御晴明祭)」「シーミー(晴明祭)」の2回行われています。最近ではシーミーだけを行う家庭も多いです。

カミウシーミー

始祖(父母や祖父母より前の祖先)の墓をお参りします。シーミーより先に行うのが習わしです。

シーミー

父母や祖父母など近しい祖先の墓をお参りします。カミウシーミーの後に行われます。

シーミーでやること

台所に祭っている各家庭の守り神「火の神(ヒヌカン)」にシーミーを報告し、重箱にごちそうをつめて、親戚一同で墓参りをします。お墓に着いたら、ご先祖に手を合わせる前にお墓の土地の神「ヒジャイガミ」に手を合わせ、土地を使わせてもらっていることへの感謝を伝えます。

ヒジャイガミへのご挨拶の後、ご先祖にごちそうをお供えし、手を合わせます。ご先祖へのお供えが終わったら、おさがりしたごちそうを墓の前で食べ、親戚一同で団らんを楽しみます。
子供にとっても年の近い親戚同士でお墓を探検したり、お墓の周りを駆けまわったりと楽しいひと時です。

シーミーでお供えするもの

地域や家庭によって違いはありますが、晴明祭で墓前にお供えするものは以下の通りです。

・線香(ヒラウコー)
・お酒
・お茶
・お花
・果物
・お菓子
・ウチカビ
・重箱

ヒラウコーは沖縄独特の黒く平べったい線香です。
ウチカビは黄色の薄紙に銭形の模様をつけたもの。ご先祖様があの世でお金に困らないようにお供えします。
重箱にはお供えする料理ともちを詰めます。
もちはあんこが入ったものやヨモギ・黒糖が入った色付きのもちを3×3、3×5など奇数個詰めるのが決まりです。
料理は揚げ豆腐、魚やイモの天ぷら、かまぼこ、昆布、豚の三枚肉の煮つけ、大根やごぼうの煮つけ、田イモを揚げたものなど。これらを四角く切り、きれいに正方形の重箱に詰めます。

重箱の基本は法事と同じですが、シーミーは「お祭り」で慶事とされていて、かまぼこは赤、お菓子も色どりがきれいなものをお供えします。

近年ではお供えも各家庭の好みに合わせて、巻き寿司やいなり寿司、オードブルやフライドチキンなどをお供えすることもあります。

シーミーの由来

シーミーの起源は中国で沖縄では最初、中国から移住し帰化した人たちが住む久米村で行われていました。1728年に久米村で毎年行うことを決めたという記録が残っているそうです。その後、1768年に王家がはじめて玉陵と浦添ようどれでシーミーを執り行い、それから士族階級、庶民にも広がったようです。

王家の墓「玉陵」、「浦添ようどれ」の記事もあります。
「浦添ようどれ」琉球王国最大の国難を生きた尚寧王の墓
世界遺産「玉陵」名君・尚真王が築いた歴代琉球国王の墓

まとめ

今回は沖縄の祖先供養の行事「シーミー」をご紹介しました。
18世紀に中国から伝わった習慣ですが、今でも大切に受け継がれている行事です。
新暦の4月頃(旧暦では3月頃)からゴールデンウィークの週末に墓前にごちそうを供え、お墓で親戚一同が団らんを楽しむ姿を見た観光客は「何をしているの?」「お墓でピクニック?」などと驚かれるようですが沖縄ではおなじみの年中行事です。
墓前で故人の思い出話などをしながら、子や孫が和やかに過ごしているのを見て、ご先祖も喜んでいるのではないでしょうか。子供にとってもシーミーは「楽しいお墓参りの習慣」となっています。シーミーは楽しい思い出とご先祖への感謝とともにこれからも大切に引き継がれていくはずです。